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キミ想ウ花束  作者: 桜美 咲蘭
初恋
9/110

9(A)

目の前で一点を見つめて固まってる人がいる。

目はギンギン、口元はアワアワ。

西園寺先輩、完全に処理落ちしてる。


怯えた子犬みたいで、ちょっと可愛い。……先輩だけど。


「白川の誕生日の日さ、黒瀬は“直帰”って言ってたのに。

でも18時くらいに“飲みに行きませんか?”って連絡が来てさ」

「20時くらいに“まだ飲んでる?”って聞いてきましたよね」

「うん。合流して店行こうと思ってた。……けど、その途中で花屋があってさ。

“ちょっといいですか?”って、黒瀬、花買ったんだよ」


あの日のこと、私もちゃんと覚えてる。

あのとき、この人が花を持ってた理由。

正直、私も少し疑問だった。

でも澪がすごく喜んでたから、それ以上深く詮索しなかった。


「俺さ、アイツに“白川と紗夜ちゃんのとこに合流する”って言ってなかったんだよね」

「……え?」

「黒瀬って……白川の誕生日、知ってた?」


沈黙が落ちる。

その沈黙が意味することを、私も、先輩も、もう分かってる。


「……花買った時、“何用?”って俺聞いたんだよ。そりゃ聞くだろ?

男ふたりで飲みに行く途中に、花なんて普通買わねえし。

……俺、口説かれるのかなって思ったもん」

「……」

「……くど…」

「一旦、進みましょう」

「そしたら、“家に飾る用?”って疑問形で返されたんだよな」


――黒瀬湊って、本当にすごい。

全部“偶然”のふりして、ちゃんと“意図”がある。

無自覚なふりして、手は抜かない。



「黒瀬が白川に花渡すとき、俺思わず“え?”って声出たわ」

「……ああ、謎のカットインはそういうことだったんですね」


急に、西園寺先輩が立ち上がる。

嫌な予感しかしない。


「よし、黒瀬に事情聴取だ!」

「その前に、まず澪に聞いて黒瀬くんとの関係をちゃんと整理しましょう」

「そっか!! やっとパズル完成したあああああ!!

紗夜ちゃん!ありがとう!!」


――勢いよく叫んで、次の瞬間、へな〜っと椅子に沈む。


……やっぱりこの人、子犬みたいで可愛い。

でも、澪のこととなるとちょっと厄介な犬。


私の仕事は、澪の気持ちがちゃんと報われるように

遠くから見守って、時々リードを引くこと。

そして、暴走気味なこの子犬のリードも、時々引いてあげること。



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