表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミ想ウ花束  作者: 桜美 咲蘭
夏、恋
82/107

13

空に、最後の花火が咲いた。


ぱん、という音が胸に響く。

夜空いっぱいに広がる金色の光が、黒瀬くんの横顔を照らしていた。


その一瞬だけ、世界が止まったような気がして――

私は言葉も忘れて、ただその横顔を見つめていた。


「……終わっちゃったね」


ぽつりと呟いた私の声に、黒瀬くんがゆっくり顔を向ける。


「うん。思ったより、あっという間だったな」

「楽しい時間ってすぐ終わっちゃうね」



ほんの少しだけ指が触れたままの手。

握ってもいないのに、離そうともしない。

その曖昧な距離が、逆に心地よかった。


「来年もさ、また来ようか。花火」


不意に言われたその言葉に、思わず彼の顔を見つめてしまった。



「来年も……?」



少し驚いたように問い返すと、黒瀬くんは照れ隠しのように視線を逸らしながら、ぽつりと呟いた。


「うん。次は……2人で」


その言葉が、夏の夜風よりずっとやさしく胸に触れた。


「2人で、か……」


繰り返す私の声は、小さく震えていた。

嬉しくて、苦しくて、信じたくて、怖くて。

全部が入り混じって、上手く言葉にできない。





祭りの喧騒も、通り過ぎる人たちの笑い声も、

すべてが遠く、ゆっくりと日常に戻っていく。


でも、私の心だけは、まだこの夜に置いていかれているようだった。




黒瀬くんが私の手をそっと握った。

そのぬくもりは、夏の夜の空気よりずっと確かで、

胸の奥に、しっかりと焼きついた。



――この夜が、永遠に終わらなければいいのに。




そんな願いを、心の奥にそっと閉じ込めながら。

私は、ふたり分の想いを抱きしめたまま、ゆっくりと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ