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キミ想ウ花束  作者: 桜美 咲蘭
初恋
8/107

8(S)

「あれ? 黒瀬は?」

「黒瀬は今、席外してますね」

「先週の金曜、飲みに行こうって誘ったのに“用事がある”って断られたんだよなー」


――ん?

用事?


「だから今日また誘おうと思ってさ」

「え、ちょっと待ってください。黒瀬が“用事がある”って言ったんですか?」

「うん、言ってたけど」

「……え?」


その瞬間、何かが引っかかった。

あいつから「飲みに行きませんか?」って連絡が来たの、確か18時すぎ。

先輩の誘いを断るなんて、あいつには珍しい。


「ちょ、パニックパニック」

「え? なんで??」


いや、待て。

……これ、何かある。

ガタッとパズルが崩れた音がした。



「そういえば、西園寺ってさ、広報部のあの黒髪ロングの子のこと、お気に入りでしょ?」

「あー、そんな感じです!!!!」

「声でか」

「すみません、でも今それどころじゃないっす!」


うわーーー!!!

って勢いで、目の前の仕事を終わらせて、

うわーーー!!!

ってある子を探しに社内を全力疾走。




「黒髪ロングーーーー!!」




廊下の先で、ちょっと足を止めた子がいる。

……止まったのに、また歩き出した。


「いやいやいやいや! 今、一回止まったよね!?」

「…お疲れ様です」

面倒くさそうな顔。

白川がそばにいないと、ツンが強めになるの、もう慣れてるけど。


「俺もう無理! 頭、爆発する!!」

「なんですか」

「……飲みに行こう」

「……澪も一緒にいいですか?」

「だめ!!!!!」

「うるさい…」


……そう。

今、俺の頭の中のパズル、ぐっちゃぐちゃ。

白川の気持ちは一方的な片思いだと思ってた。

でも――あの日の黒瀬の動き。

あれは、どう見ても“偶然”じゃなかった。


「とりあえず、一旦落ち着いてください」


彼女が冷静に言ってくれる。

その冷たさが、むしろありがたかった。


ビールを流し込んで、喉を潤す。

少しずつ、崩れたピースを拾い直していく。

あの日のあいつの言動、白川の反応、

ぜんぶをもう一度照らし合わせて――


このパズルの“正解”、俺がまだ知らないだけかもしれない。


でも、今夜は

少し困った顔で俺を見てくる、

お気に入りの黒髪ロングと一緒に。


少しずつでいい。

答えを見つけていこう。


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