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キミ想ウ花束  作者: 桜美 咲蘭
初恋
4/107

4

あの頃、鉛筆を持って震えてた手は

今はお酒を持って震えている。


年を取るごとに、

初恋はどんどん、迷宮入りしている。


気持ちを伝えるという選択肢だって、もちろんある。

でも──伝えて、玉砕してしまったら、

すべてが終わってしまう気がして。


関係が途切れてしまうくらいなら、

黒瀬くんへの想いは、迷宮に閉じ込めたままでいい。




だって──




『黒瀬くん、好きな人いるし』




そうやって泣いていた女の子たちを、私は何人も見てきた。



──伝える勇気よりも、失う怖さの方が、ずっと大きかった。





「でもさ、黒瀬くんって、彼女いた感じないんでしょ?」


紗夜がビール片手に言ってくる。


「……たぶん、ないと思う」

「え、じゃあさ、黒瀬くんって……童──」

「それは絶対ない!!!」

「え?え?そこ否定していいとこ?」

「あんなカッコいいんだから、女の子が放っておくわけないって……」


知らないところで、

誰かと付き合ってる可能性なんて、いくらでもある。

だって、黒瀬くんだよ?


彼の選んだ人なら、きっと素敵な人だ。


私なんかがどうこう言ったところで、何も変わらない。

……分かってる、けど。


あれれ、なんでだろう。

胸の奥が、ちくりと痛い。


「……会いたかったなー」


ふっと浮かんだ、あの笑顔。

ただ、それを思い出しただけで、

どうしようもなく、会いたくなった。


別に、私に笑ってくれなくていい。

目が合わなくても、話さなくてもいい。


ただ、姿を見れたらそれだけで、少しだけ救われる気がする。



「黒瀬くんじゃないけど、もう1人、祝ってくれる人来てくれるって」

「西園寺先輩以外でお願いしまーす」


2時間ほど、わちゃわちゃして。

笑って、飲んで、ちょっと泣きそうになって。



──そのときだった。




「白川〜〜!」

「……でた!」

「でたってなんだ!先輩だぞー!」

「すっごくいい誕生日プレゼントしか受け取りませんからね」

「ぐふ。今日から俺のこと“超絶イケメン陽様”って呼べよ」


くだらないことを言いながら、西園寺先輩がふと振り返る。


その視線の先を──私も、追う。




──そして。





「……おつかれ」





黒瀬湊が、そこにいた。




幻覚?

幻聴?

夢?



……え、私、明日死ぬの?



ちょっと困ったような笑み。

その顔を見た瞬間──




また、落ちていく。





13年目の、初恋に。


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