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キミ想ウ花束  作者: 桜美 咲蘭
初恋
3/107

3

中学一年の春。


新しい生活に弾む気持ちと

不安な気持ちが混じっていた。


友達できるかな?隣の席はどんな子だろう。

人見知りな私にとって初日という言葉と

馴染むという行動は地獄みたいなことだった。


1番後ろの席に座って机に教科書を置く。

ああ、多分私クラスに1人はいる

いたかどうか分からない人間になるだろうなって

子供ながらに思った。


隣の席の子が座る動きが視界に入った。

チラっと隣を見ればタイミング悪く視線が絡む。


「…よろしく」


たったそれだけ。

たった四文字のあいさつ。


でもそのときの私は、人見知りと、

そして目の前の男子があまりにもイケメンだったことに

パニックになって、返事ができなかった。


心臓がばくばくして、喉が詰まって、言葉が出なかった。


(……やばい。無視した……)


後から襲ってきた罪悪感は、何年経っても消えない。

せめて、ちゃんと話せるタイミングが来たら、謝ろう。

もうずっと隣の席の男の子で頭がいっぱいだった。





そんなある日の放課後。

日直の当番で隣の席の男の子と2人きり。

パチンパチンってホチキスの音が響く。


会話が何一つ生まれない。

そんな地獄の時間に目頭が熱くなった時


彼がぽつりと言った。



「白川の字、綺麗だよな」

「……え?」


まさか話しかけられると思っていなくて、反射的に聞き返す。


「字、綺麗」


彼が見ていたのは、私が黒板に書いた連絡事項。


「……ありがとう」


ようやく、ようやく、会話が成立した瞬間だった。


もっと他に話すことがあった気がする。

名前とか、天気とか、好きな教科とか。


でも彼は、こんなことを言った。




「俺の名前、書いてよ」

「…名前?」

黒瀬湊(くろせ みなと)

黒に、瀬戸内海の瀬、さんずいに奏でる。これ書いて」



一瞬、手が震えた。

それを見て彼が、ふっと笑う。




「……なんで震えてんの」




その笑顔に──私は恋に落ちた。




あぁ、この人だ。

私の初恋は、この人だった。



「白川澪。名前も綺麗だよな」



心の中でご両親に叫んだ。

こんな素敵な男の子に出会わせてくれて、

ありがとうございます。






「白川に嫌われてると思ってた」

「えっ、そんな!私の方こそ……」

「なんで?何もしてないのに、嫌わないよ」

「最初のあいさつ、無視しちゃって……」

「あ〜……確かに、ちょっと傷ついた」

「ご、ごめん……」

「嘘だよ」

「……よ、よかった〜!」





「あ、やっと笑ってくれた」




そう笑う彼に、その笑顔に確信的にスコーンと恋に落ちた。

話せたことも、名前を覚えてくれていたことも

全部、全部が嬉しくて



初恋のボタンをポチっと押したと同時に

地獄の初恋がスタートした。

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