第66話 転生王子、回復ポーションをアホほど作りまくる
大司教のクスリによって、強化人間に変えられた聖騎士たち。
攻撃力が大幅にアップしているうえに、痛みを感じないのか恐怖心がほとんどない。
そんな狂戦士たちに対して、アイリアは一切ひるまずに突っ込んでいく。
彼女のスピアから繰り出される強烈な突きが、強化人間騎士を捉えて後方に吹っ飛ばす。
エトラシアも後に続き、いつもの正面振り降ろしの強烈な斬撃を打ち放つ。
フロンド戦闘班たちも複数人で1人の強化騎士と当たるようになんとか立ち回っている。ティナが後方から援護射撃の魔法を連発して、戦闘班が包囲されるのを防ぐ。
全体に目を配りながらも、俺も正面の敵に集中する。
すぅーと呼吸を整え―――
「―――ぬぅうう!」
俺の斬撃で、強化騎士の方腕が宙に舞った。
「グア?」
落ちた片腕に握られていた剣をもう一方の片手で拾おうとする強化騎士。
俺はその脳天に強烈なケリを見舞う。戦闘ポーション2本飲みの力で。
「ギャガッッッ……」
蹴りを喰らって吹っ飛ばされた強化騎士は、ピクピクとこちらを向いているが流石に動けないようだ。
にしても、これで意識を刈り取れないのか。
「ふぅ……地道に一体一体対応していくしかないな」
そこへ後方から炎の固まりが大量に飛んでくる。
「「「「「ぎゃいあ~~ぼ~~るぅう~~」」」」」
魔術師隊か……あいつらも強化人間化されてやがる。
雷雲の生成で魔力をほとんど使い果たしたはずだが。許容範囲を超えて、無理矢理生命力を削って魔力を絞り出しているのか……無茶苦茶なクスリだな。
「――――――ギャウワァァアア!!」
俺たちに迫りくる炎が、強烈な緑の閃光にかき消されていった。
フェンリル化したフェルが放った疾風の閃光だな。
「ギャウウウウ!」
白いモフモフをなびかせながら、本来の子供フェンリルサイズになったフェルが吠える。
「フェル、後方の強化魔術師たちを任せられるか!」
「ガウっ!」
俺の問いかけに応えたフェルは、強化騎士たちの頭を飛び越えて、門外の魔術師たちへ突っ込んでいった。
戦場全体を見渡すかぎり、ポーション屋敷のメンツは各所で奮戦。フロンド戦闘班もなんとか持ちこたえている。
「ああぁ、いいです。いいですよぉ~クフフぅ。あの聖騎士、両腕が無いのに口で剣を振るってますよぉ~」
ダムロス大司教の狂気じみた声が、戦場に漏れ聞こえる。
「チッ……サイコ司教が。クソみたいなクスリを作りやがって」
「何言ってんですかぁ。最高ではないですかぁ~やはり出張ってきて正解でした。こんな素晴らしいショーを報告だけですませらえません。生で見ないとねぇ」
「言ってろ、すぐにおまえをぶん殴ってやる」
「クフフ~~それは無理でしょう。その前にあなたたちは消耗しきって敗北ですよぉ~ほ~ら、また何人か離脱していきますよぉ」
数人の護衛強化騎士に囲まれた大司教が、クフフと笑いを漏らす。
「そうだな。だがおまえの思い通りにはならん」
「クフフ、何を言ってるんですか。離脱者続出ですよぉ~住民たちはもう限界でしょう~ねぇ……んん?」
「気付いたか? クソ司教」
「なぜだ? なぜ住民どもの数が減らない……?」
大司教の声が聞こえたのか、フロンド戦闘班から声が上がる。
「けっ、クレイの兄貴の回復ポーションなめんなよ!」
「そうですぞ! いくらでも不死鳥のごとく蘇りますぞ~~マットイ5回目の復活~~!!」
消耗した戦闘班たちは、俺のポーションですぐさま復活して戦線復帰を果たしている。
強化人間かなんか知らんが、
俺の回復ポーションを舐めるなよ。
「むぅうう……うっとおしいポーションですねぇ。わたしのクスリの邪魔をしてぇ」
「クレイさ~~ん」
そこへラーナが走って来た。護衛のリタと共に。
ポーションの入った箱を両手に抱えている。
「クレイさ~ん、回復ポーションこれで在庫切れですよぉ~」
そうか……まあこれだけみんな飲んでいるんだ。流石にポーション屋敷の在庫も切れるか。
その言葉を聞いた、大司教がグフフと下卑た笑いを漏らす。
「グフフ~残念でした。これで決着はつきますねぇ~さあ聖女ラーナ。あなたはこちらに来なさい」
「べぇ~~だ。あなたのところになんか行かない!」
「はあぁ? おつむは大丈夫ですか? そんな追放された王子を頼る意味がわかりませんねぇ」
「クレイさんが、絶対守ってくれるもん!」
「いくら優れたポーションを作れたとしても、ストックが無くなれば終わりですよ。そんな算術もできないのですかぁ? さあもう回復はできませんよ~~ねぇ」
「え? できるけど?」
「はあ? 何を負け惜しみを言ってるんです? 揃いも揃ってあなたたちはアホなんですかぁ?」
負け惜しみ?
「アイリア、エトラシア、ティナ! ちょっと抜けるぞ、いいな!」
「ええ、もちろんですわお兄様!」
「ああ、クレイ殿! 存分に作ってくれ!」
「ん……作業中のクレイおにいの援護は任されたし」
「作る? 作業? 施設も無いこの場で……? さっきから何を言ってるんです……ねぇ」
ティナが俺とラーナに近づく強化人間に攻撃魔法を放つ。
さらに、リタがハンマーを振るう。
よしこれで集中できるぜ。
「ラーナ、この場で作るぞ! ガンガン聖水だしてくれ!」
「は~い、クレイさん。それ~~~」
ラーナがドバドバ聖水を出してくれる。
俺はその他の素材をポーチから大量に出す。
よっしゃ! いくぜ―――
「【ポーション生成】!
――――――【ポーション(体力回復)《スタミナチャージ》】!」
俺の最もオーソドックスなポーション。
はじめてスキルを使用した際に作ったポーションだ。まあラーナの聖水ってベースは改良事項だがな。
「ぽ、ポーションをその場で作るだとぉ……な、なんですかそのデタラメな……」
「これは俺が初めて作ったポーションだ。
――――――【ポーション生成】!【ポーション生成】!」
「ぬぐぅう……だ、だが、1本や2本増えたところで大局は変わらな……」
「そして最も多く作ったポーションでもある。
――――――【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!」
「ま、魔力がそこまで持つはずがない……!?」
「黒服から報告は受けなかったのか? 俺は魔力ゼロだぜ!
――――――【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!【ポーション生成】!」
「な、なんだとぉおお! ばかなぁああああ!!」
「残念だったな。俺はポーションに関して誰にも負けん」
【読者のみなさまへ】
第66話まで読んで頂きありがとうございます!
少しでも続きを読んでみたいなと思って頂けましたら、
☆評価やブックマークをもらえると非常にうれしいです。
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップするだけです(簡単です!)
お好きな★を入れてください!
すでに評価やブックマーク、感想コメントで応援して頂いている皆様へ
めちゃくちゃ嬉しいです! ありがとうございます!
みなさまの評価やブックマークが作者の大きな励みになります!
これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、
引き続き応援よろしくお願いします!
※本作はカクヨムにて先行公開中です。




