第64話 転生王子たち&フロンド住民、聖騎士隊と交戦開始
◇ダムロス大司教視点◇
「だ、大司教様! なんでしょうか先程の大声は」
「拡声魔法でしょうか……? なんだか子供が叫んでいるようですねぇ」
『てんきにな~~れ』
また幼い声が、空に響く。
なにをやっているのでしょうか。邪教徒どもは気でも狂ったんですかねぇ。
「天気になれ? 晴れる魔法でもあるのでしょうか?」
「あるわけないでしょう。上空の雷雲は50人の魔術師隊が作ったもの、彼らが解除しない限りは消えませんよ」
まったく、本当に聖騎士ですか? よくそんな非論理的なことが言えますねぇ。
『は~やくてんきにな~~れ』
ええい、鬱陶しい声ですねぇ。
「だ、大司教様、ら、雷雲が……!?」
「なんですか騒々しい」
「雷雲が消失していきます……」
何をくだらない報告してるんですか。このボンクラ騎士は。
が……空を見上げたわたしは、口があいてしまう。
「ば、馬鹿なぁあ……」
噓でしょう……なんですかこれ。ばかな声が響いているだけでしょ?
『おてんきおてんきやってこい~』
声と共に分厚い雷雲が裂けるように消えていく。その隙間から太陽が顔を見せ始める。
なんだこの強い魔力は……。なにかこうため込んでいたいたものを解放したような。
仮に反射魔法や解除魔法があったとしても……上空にできている雲は雷撃魔法を使用する際に出来る雲を結集させたもの。しかも50人の魔導士が全魔力を使い果たしてですよ。魔法陣の配置は細かく指示を出して、最良の効果がでるようにしました。それを……こんな。
『おそらがピカピカ~~』
やめなさい! その能天気な声!
ぬぅ……なんですかこのデタラメな魔法は……
「報告! 雷雲、か、完全に消失しました!」
「だ、大司教さま……」
『お~し~まい』
空には澄んだ青が広がり、太陽がさんさんと大地を照らしている。
ぐっ……くそぉおおお、ふざけやがってぇ。
完全に想定外です。
しょうがないですねぇ、予定よりも早く実験をはじめることになりそうですよ。
「聖騎士団! いつまで狼狽えているのですか! 突撃準備ですよぉ!」
◇クレイ視点◇
「よしよし、良くやったぞライム」
「ふぁ~~ライムちゃん凄いよ!」
「ん……ライムは天を操る」
みんなに褒めれて、にっこり笑顔の小天使ライム。
その小さな顔が、うとうとと揺れ始めている。
「ラーナ、ライムを屋敷に連れて行ってくれ」
「は~い。クレイさん」
「あと回復ポーションの在庫を倉庫から出しておいてくれ」
「クレイさん……はい!」
頷いたラーナは、ライムを抱きかかえてその場を離れた。
さて……
「みんなよく聞け! いよいよやつらが来るぞ」
フロンドの戦闘班に緊張が走る。みんな顔が硬い。
そりゃそうだろう。荒くれ者が多い辺境の町だが、今から攻め込んでくるのは精強と名高い聖騎士たちだ。
「先程も言ったが、1人で対応しようとするな。数人で迎え撃て。あと負傷したら後列の者と交代、負傷者は俺の回復ポーションを飲むんだ」
「クレイ兄貴のポーションで回復したら、すぐに前列に復帰ってことだな」
「そうだ、バッド。くれぐれも無茶はするなよ」
「ん……クレイおにいのポーションは優秀」
そこへマットイさんが鍋をガンガン叩く。
「クレイ殿下!――――――来ましたぞ!」
マットイさんの言葉と同時に、町の正門が一部破られる。
想定通りだ。あのボロ門ではどうにもならんしな。
だが、通常に開門したのではなく攻撃魔法で破ってきた。
なので大軍が一気に通り抜けれるようなものではない。
「よし! アイリア行くぞ! フェルとエトラシアはフロンド戦闘班と協力して俺たちの打ち漏らしを対応してくれ! ティナとリアナは戦場全体のフォローだ!」
「お任せあそばせ!」
身体に黄金色の魔力を纏い、グッと力強く地を蹴るアイリア(元第8王女)。
愛用のスピアを片手に、敵との間合いをぐんっと詰める。
「一番槍はわたくしが頂戴いたしますわ~~」
自身の魔力により自動身体強化された体から繰り出される強烈な突き。
聖騎士の頑丈な鎧を貫き、その勢いで後ろに吹っ飛ばされた。
「フフ、久しぶりに暴れますわぁ!
――――――色々溜まってましたから容赦なしですわよ~~!」
アイリアの華麗なる迎撃に、フロンド戦闘班たちの士気が上がる。
さすがだな。やはりアイリアはこの戦いの要だ。
さて……妹にばかり働かせるわけにもいかんからな。
俺も戦闘ポーションをグッと飲み干して、剣を抜いた。
俺は町の正門前に出てきた聖騎士の1人に、斬りかかる。
ギンッっと剣が交差する音が響き、力負けした聖騎士が後にのけ反った。首にかけている十字のロザリオが宙を舞う。
「―――フンっ!」
そこへ間髪入れず、腹を蹴り飛ばした。
重装備の鎧ごと後方に飛ばされる仲間をみて、周辺の聖騎士の視線が俺に集まる。
よし、俺の戦闘ポーションもじゅうぶん聖騎士たちに通用するぞ。
「「「うわあぁあああ!」」」
フロンド戦闘班の叫び声だ。数人が孤立して聖騎士数名に迫られている。
が―――
「――――――三連追尾式火炎弾魔法!」
3つの炎の弾丸が味方の合間をぬって、聖騎士たちに命中する。
「ん……ぶい!」
後方でピースサインをかます。小柄なマイペース美少女。
ティナ(元第9王女)の誘導魔法だ。相変わらずとんでもない精度なうえに3連発かよ……
魔力ゼロの俺でも、これがいかに難しいかってことがわかる。
そんな彼女に俺もサムズアップで答えた。
さらに……
俺の近くに聖騎士1名がズザーっと吹っ飛ばされてきた。
後方を見ると、エトラシアが剣を振りおろしていた。
俺たちで対応できなかった、うち漏らしの聖騎士にしっかり対処したようだ。
「いいぞ、エトラシア!」
「あ、ああ! クレイ殿、うしろは任せてもらおう!」
周りに視線を巡らすと、フロンド正門戦闘班たちもなんとか戦っている。
よし! この状態を維持して、少しでも敵戦力を削っていかないとな。
戦闘開始から10分ほどが経過したころ……
「クレイの兄貴ぃ! 西の塀からも数人きたぜぇ!」
バッドの声だ。
フロンドをぐるりと囲む塀からも、侵入を始めたか。
が、正門ほど大きな穴を開ける戦力(魔導士)は割けていない様子で、こちらも一気に侵入とはいかない。
しかも先頭の数人が、ビクッとしては膝をついていく。
リアナのナイフだな。彼女らしき黒い影が、周辺を飛び回っている。足を狙って行動不能にしているようだ。
先頭が詰まったことにより、出入口がさらに狭くなったので聖騎士も少しづつしか入ってこれない。
西側担当のバッドたちが、わずかに入って来た聖騎士と交戦を開始した。
「おらぁ~~バッド様の一撃をうけてみろぉ~~」
そのバッド様の一撃は聖騎士に簡単に防がれてしまい、さらに反撃を喰らって吹っ飛ぶバッド。
が、左右からの別攻撃は避けられらかった。集中攻撃にひるむ聖騎士。
よし、少数の騎士であれば、フロンド戦闘班でも取り囲めばなんとか対応できそうだな。
バッドは俺の言いつけを守り、身体を引きづりながらもいったん後方へ下がり回復ポーションを飲んでいる。
そして……
「うらうらぁ~~再びバッド様の一撃だぁ~~」
回復してすぐに戦線復帰するバッド。元気だけは聖騎士以上かもな。
「フフ、お兄様の回復ポーションは、下手な回復魔法よりずっと効き目がありますわ」
アイリアがスピアをふるいながら、満足げな笑みを漏らす。
「な、なんだこやつら!」
「倒してもすぐに回復して戻ってくるぞ!」
聖騎士たちが、口々に苛立った声を漏らす。
簡単に終わらせられると、高を括っていたのがこの事態に面食らってるんだろう。
「クソっ! 邪教徒の黒魔法でも使っているのか! 想定外だ!」
想定外だと?
当然だ。俺の回復ポーションを飲んでいるんだからな。
市販の安物と一緒にしてもらっちゃ困るぜ。




