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第61話 転生王子、フロンド防衛の指揮官になる

 ◇ダムロス大司教視点◇


「はあ、ここがフロンドですか。見事に辺境です。聖騎士の配置は完了しましたか?」

「は、大司教様。すでに町の包囲は完了しております。さらに魔導士隊も所定の位置に移動中です」

「ふむふむ、さすが聖騎士団ですね。視察巡礼から急な予定変更にも素早い対応、見事です」

「は、邪教徒の情報が入ったのならば、我らのなすことはただ一つ。それが神の御心かと」


「そうですか。それは頼もしいかぎりです」


 まあ、元から辺境地視察巡礼なんて、する気はなかったですけどねぇ。


「しかし、追放されたはずの聖女が、辺境の地で邪教徒の扇動をしているとは」

「ええ、そうなんですよ。大罪人ラーナは確実に捕えないといけません」

「邪教徒とまとめてせん滅しないのですか?」

「ダメですね。ここで死んでしまうと、他に潜伏する邪教徒たちの英雄になっていまう恐れがありあますから」

「なるほど、さすが大司教様」


 ラーナは大事な聖水の元ですからねぇ。

 まあ聖騎士たちには、ケラル大司教を殺したうえに邪教徒を扇動した大罪人ラーナ。という濡れ衣をかぶって頂きましょうねぇ。


「ところで、忘れられた辺境の地とはいえ、フロンドは一応王国の領土ですが。大丈夫なのでしょうか?」

「ああ、それは問題ありませんよ。ここの邪教徒たちは根絶やしにしますので証拠は残りません。そもそもここは、王国からも忘れられた流刑地のようなもの。わが神聖国とも領土の境などあってないような場所です。それにこの地を占領するわけでもないですし、町が死滅しても気付きもしないでしょう」


 それに……最終的に今回の目撃者は、誰もいなくなりますからねぇ。


 わたしと聖女ラーナ以外は。


 クフフ……。


 んん?


 わたしの傍にスッと現れた騎士。

 ああ、隊長ですか。

 ガザンの山岳ダンジョンから、戻ってきたようですね。


「例のものは手に入りましたかねぇ」

「……はい」

「それは良かった。この件が終わりましたら詳しく報告を聞きますねぇ」

「はい」

「さて、聖戦がはじまります。わたしの護衛をお願いしますよ」


 再び音も無く消える隊長。

 おそらくほかの4人もいるのでしょう。


 どうやら伝説のバトルエリクサーは存在したようですねぇ。

 今回は間に合わないですが……聖女ラーナの聖水にバトルエリクサー。


 ああぁ……最高のものが手に入るじゃないですかぁ。


 クフフ……クフフフ


 そこへ再び聖騎士が、こちらへやって来た。


「大司教様、魔導士隊の展開も完了しました」

「はい、わかりました。では……はじめましょう」


「はっ! 魔導士隊! 魔法陣展開はじめ!」


 フロンド周辺に次々と展開される魔法陣。

 いいですねぇ。


「大司教様、上空に雷雲の形成を確認。現在急速に拡大中です!」


 ではひとつ、彼らを奮い立たせますか。



「さあみなさん! 大罪人ラーナ率いる邪教徒との聖戦がはじまります。敵を侮ってはなりません。ありとあらゆる卑劣な手を使ってくるでしょう。ですが勝利は我々に輝きます――――――


 なぜなら―――みなさんは恐怖に屈せず、信念を貫く者たちなのだから!!」


「おおお! 正義は我らにあり!!」

「勝利をこの手にぃ!」

「邪教徒たちに引導を!」


 拳をあげ、奮い立つ聖騎士たち。


 はぁ~い。これでよしと。単純ですねぇ、まったく。




 ◇クレイ視点◇


「うわぁ~~本当に聖教国の連中だなぁ……」

「く、クレイ殿下ぁ……こ、こ、これはぁ」


 フロンドの正門についている櫓から、周辺に視線を向ける。


「聖騎士が500~600人。魔導士が50人ほどか」

「ひっぃいいクレイ殿下ぁ~。フロンドなど攻めてどうする気なんでしょう。よくわかりませんぞ」


 たしかにな。マットイさんの言う通りで、フロンド自体を占領する意味はほとんどない。

 こんな流刑の辺境地に戦略的な価値もない。資源もクソもないしな。そもそも国境線もあやふやな場所だ。


 が、こんな場所でも一応は王国領土である。


「いかに辺境とはいえ、これは王国との外交問題になりますぞ」

「そうだな……この事実を知ればな」

「これだけの目撃者がいるのですぞ。間違いなく王国にも報告がいきますぞ」


 それをさせない準備が、やつらにはあるんだ。


「目的を達成したら、町ごと消す気なんだろう」

「ふはぁ!? じゅ、住民全員を? 正気の沙汰ではないですぞ!」


 それだけラーナに固執しているってわけだ。

 しかしこれは異常がすぎるぞ。いくら金の成る聖女だったとしても、リスクが高すぎる。それにこれだけの部隊を動かしたんだ。莫大な費用がかかってしまうじゃないか。


 ラーナ確保には、なにか別な理由があるのかもしれん。


「いずれにせよ、ここまで来た奴らに退く気はないだろう。マットイさん、いったん下に降りてみんなと話すしかない」

「そ、そうですな」


 俺とマットイさんは、下に降りて集まって来た住民たちに状況を説明した。


 すでに包囲されているから、逃げの手は打てない。

 やつらも逃がす気はさらさらないだろうしな。


 とにかく、戦えるやつを集めて守り切るしかないか。


「よし、マットイさん。部隊の指揮経験はあるか?」

「ないですぞ! 門番しかやってこなかったものですから」

「他に経験のあるやつはいないのか?」


 し~んと静まり返るフロンド住民の面々。


「クレイ殿下以外に、適任者はおりませんぞ」


 ふぅ……まあそうなるか。かくいう俺もほとんどないんだけどな。訓練で部隊を率いたぐらいだ。

 が、ウダウダ文句垂れている時間もあまりない。


「非戦闘員は俺の屋敷に隠れろ。一か所の方が守りやすい」


 一応町は壁で囲われているとはいえ、木製のボロだ。こんなん聖騎士たちに速攻で突破されてしまうだろう。

 俺の話を聞いて動き出す住民たち。素直に俺の屋敷に向かう者が多いが、一部は自宅に引き籠る奴もいる。まあ全員が納得して動いているわけでもないし、強制している時間などない。

 冷たいようだが、自身の選択に対しては自己責任だ。


 俺の眼前には戦闘員のみが残った。


 さて、どうしたもんか。


 打って出るのは無謀すぎる。

 俺とアイリア・フェルで攪乱させるのもありかと思ったが、とどめの一撃を繰り出せる戦力がない。


 やはりベタに防戦戦しかなさそうだ。


「町の壁に期待するのは無理がある。もう障害物として割り切ろう」


 壁を壊すなり、正門を破壊するなり。ボロとは言え多少の時間はかかるし、障害にはなるだろう。

 つまり、一気に押し寄せるのは容易ではない。


「侵入してきた敵に複数人で当たれ。一対一になるな」


 戦闘員は、自前の剣や槍に盾などの武具を持っている。すがは辺境、ゴロツキどもの町だ。

 ただし、攻撃魔法が使える奴はあまりいない。


 町の壁を第一防御ラインとして、形勢が不利になったら俺の屋敷で最終籠城。

 この二段構えでいくことにした。


 あと前線の戦闘員には、全員に回復ポーションを配っておく。


「一撃で仕留めるとか思うな。とにかくねちこくいけ。多少のケガは回復ポーションで治る」


 あまり良い戦い方ではないが、なりふり構っていられないからな。


 色々と配置が完了した矢先に、正門を守るマットイさんの声が飛んできた。


「クレイ殿下! なにやら光だしましたぞ!」


 前方から大きな魔法陣の光りが、フロンドを照らしはじめた。

 お、さっそく何かやってきたな。



「さて、こちらも座して死ぬつもりはないぞ。きやがれ聖騎士ども」



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