第57話 先住組美少女たちと押しかけ組美少女たちの戦い(ミーティング)
ポーション屋敷のリビングでは、女子たちがあーだこーだと話し合いを重ねていた。
大きなダイニングテーブルを挟んで、一方はラーナ、リタ、ユリカに気絶から回復したエトラシアが横に並ぶ。
つまりポーション屋敷の先住人たちだ。
そして反対側に、アイリア、ティナとライムの3王女。そして同行してきた侍女のリアナ。
俺がよく分からないままに始まった話し合い。
「これは初めにハッキリさせる必要があります」と、ラーナが鋭い眼光を放っていたが。
なんだろうか? 部屋割り決めでもするのか? 屋敷の部屋は余りまくってるが、角部屋が良いとかこだわりがあるのかもな。もしくはゴミ捨て当番の順番を決めるのかもしれん。
ちなみに俺はなにをしているのかというと……
リビングの中央に、ポツンと座らされていた。
良く分からんが、女子同士の話し合いを邪魔してはいけないらしい。
そして女子たちの話し合いは佳境を迎えていた。
……たぶん。
「では、わたくしがお兄様の正妻としての甘々スタートでよろしいですわね」
「ん……同棲生活かいし」
「スゥスゥスゥ……」
アイリアをはじめとした王女たちが、これで会議は終りねといった顔をする。
ライムにいたっては、すでに寝息を立てていた。
ふぅ、ようやく終わったか。俺が立ち上がろうとしたところ……
「ちょっと待ったぁあああ!」
対面に座っていた聖女ラーナが、椅子をガタンと鳴らして立ち上がる。
「一緒に住むと言うのはわかりました。王女さまたちの事情も聞きましたし、ここいるみんなもなにかしらの事情があります」
ふむ。同居は確定事項らしい。
まあ、彼女たちには認識阻害のイヤリングもあるし、フロンドの住人もそこまで混乱はしないだろう。
俺としても妹たちが住みたいのなら、それでいいんだが。
ラーナは別の点に懸念事項があるようだ。
「ですがぁ……
――――――正妻という言葉、王女さまといえど黙認はできません!」
「あら、ごめんなさいまし。わたくしもそちらの事情は把握できてませんの」
たしかにそうだな。そもそも俺は誰とも結婚しとらんし。この屋敷は各々が自由気ままに過ごす場所であって、なにかに縛られる場所じゃない。
ここはガツンとポーション屋敷がどういう場所か教えてやれ、ラーナ。
「いえ、来たばかりですからしょうがないことです。クレイさんの正妻は、私ラーナなのです。なのでアイリアさまがどうしてもと言う場合は、側室ということになります」
はい?
ことになりますじゃないだろ! なに言ってんのこの聖女?
「まあそうでしたのね……お兄様ったら」
いやいやいや、違うからな!
「さらに加えて言うなら、側室枠もリタちゃん、ユリカちゃんとすでに2人が埋まっています」
うんうんと頷く、リタとユリカ。
それも初耳なんだが……
正妻、側室という問題ではなく、俺は誰とも結婚してないんだけど。
「ちょっと待ってくれラーナ殿! ワタシが入っていないんだが!?」
そこへ意味不明なテンションで割り込んでくるエトラシア。
「あ、エトラシアさんもですね。うっかりでした」
「い、いや……ワタシは別に希望しているわけではなく、そのなんだ……なんか仲間外れ感が気になっただけというか……決してクレイ殿とどうこうなりたいとかでなくて……モジモジ」
「ちょっとめんどくさいです。エトラシアさんは、いったん側室枠から外します」
「ひどいっ! いつものラーナ殿じゃない!!」
バッサリと切り捨てられた女騎士。
にしてもさすがにこれは良く分からんぞ。
俺の正妻とか側室とかはそもそも存在しない。ここだけはハッキリしとかんとな。
間違いは正さねばならん。
俺は、静かに右手をあげた。
「なんですかクレイさん? お口チャックですよ」
「お兄様は本件での発言は、許可されていませんわ」
ええぇ……無茶苦茶やん、この聖女と王女。
「ラーナさん、あなたのいう正妻と言うのは、お兄様とすでに事を成しえた後。という認識でよろしいのかしら」
「いえアイリアさま。残念ながら事は成されていません。アイリアさまもご存じの通り、クレイさんですから」
「ふふ、そうですわね。お兄様ですわね」
むぅ……俺だった男なんだぞ。自重しているんだからな。
「なので正妻・側室の設定は女子側でつけてるんです。クレイさん抜きで」
そこ抜いたらダメだろ……
にしてもそんな設定があったのか?
ち~っとも知らんかったけど。
「ら、ラーナ殿! ワタシはその設定とやら、知らないんだが!?」
あ、知らん奴もう一人いた。
「ということは、正妻はなったもの勝ちということにもなりますわね?」
「そ、それはダメです! アイリアさまはそもそも、クレイさんと家族じゃないですか!」
「ふふ、母親も違いますし。もとよりそんなこと、愛にとっては些細なことでしてよ」
「そうかもしれないけど……王女さまの美貌とそのスタイルは反則ですぅ……あと私と同等の2つもぉ」
「まあまあ、ラーナさんは鏡を見たことがありませんの?」
アイリアの問いかけに首を傾げるラーナ。
「あなた、とんでもない美少女でしてよ。ライバルとして敵に不足なしですわ」
「ふぇえ!? 私が……? 王女さまと……!!?」
急にアワアワし始めるラーナの様子を見たアイリアが、俺の方にため息交じりの視線を向けてくる。
「まったくお兄様は……変わりませんわね」
まあ、追放されても変わらずポーション作りまくってるけどな。
「ちゃんとラーナさんを褒めてあげてますの?」
「もちろんだ。ラーナの聖水にはとても助けられている。あれは最高の素材だ。半永久的にレア素材がでるとか、足むけて寝られないぞ」
おっと、思わず発言してしまった。まあいいか、事実だし。
だが、アイリアとラーナは同じように落胆のため息を「ふぅ……」とつく。
初対面なのに息が合ってるな、この2人。
「ふむふむ、なんとなく事情は察しましたわ、ラーナさん。正妻の件は現状結論はでないですわね」
「ううぅ……そうですね。アイリアさま」
「ぽっと出のわたくしたちに押しかけられて、戸惑う気持ちもわかりますわ」
「そうですよぉ~~押しかけ女房はズルいですぅ」
「うふふ、そこは生活しながら最善策を探しましょう。もう全員でなってしまってもいいかもしれませんし」
なるってなんだ?
相変わらず女子たちの会話は難解だな。
「よし、そろそろ話はまとまったようだな?」
もう1時間以上も話たし。
ライムは完全に寝息を立てている。
お開きにしようと、俺は立ち上がった。
「あら? それはお兄様のカードでして?」
アイリアが、テーブルの隅に積まれていたカードの一枚を指さした。
そういえばカードバトル中に、妹たちが押しかけて来たんだっけな。
「はい! そうですよ~~私のクレイさんカードです」
ラーナがにこやかにカードをアイリアに手渡した。
まてよ……あのカードって。
――――――しまった!!
「ラーナ! アイリアからカードを奪うんだ!」
「ふぇ? 奪うって……? なんで??」
「ん……クレイおにい、もう手遅れ」
ティナがボソッと声を漏らした。
「ああっ? なんだァアこれはァア? 数値ゼロ、デバフ効果? 最低ランクカードだとぉ!」
アイリアの身体から黄金色の光りが漏れ始める。
目視できるほどの強力な魔力だ。
「あんだこのカードはぁあああ! お兄様を舐めてんのかぁ、ごらァアアアア!!」
「え……く、クレイさんこれなに? アイリアさま、なんか口調がへんですよぉ~」
そりゃそうだ、アイリアは完全にブチ切れてるんだから。
俺はポーチから戦闘ポーションを取り出した。
【読者のみなさまへ】
第57話まで読んで頂きありがとうございます!
少しでも続きを読んでみたいなと思って頂けましたら、
☆評価やブックマークをもらえると非常にうれしいです。
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップするだけです(簡単です!)
お好きな★を入れてください!
すでに評価やブックマーク、感想コメントで応援して頂いている皆様へ
めちゃくちゃ嬉しいです! ありがとうございます!
みなさまの評価やブックマークが作者の大きな励みになります!
これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、
引き続き応援よろしくお願いします!
※本作はカクヨムにて先行公開中です。




