第53話 ラッキーポーションでレアカードをゲットですよ~~!
「きましたよ! 決戦の地へ!」
「あら、ラーナちゃん。今日は気合入ってるねぇ」
「はい、今日は4つくださいな!」
決戦の地(雑貨屋)のおばちゃんからお菓子を受け取ったラーナ。
鼻息を荒くして、かなりの興奮状態である。
4個か……普段は1個(ユリカの分も合わせれば2個)しか買わないようだから、彼女の決戦?への意気込みが伺える。
「ラーナ殿が言ってたのは、このお菓子のことか。これ妹のユリカもよく食べてるな」
「ああ、2人ともおまけのカードにはまっているようだ」
「さあ~~引きますよ~~SSS級カード!」
フンスと袋を破って手を突っ込む聖女。
中から紙の包で隠されたカードを取り出した。
緊張した面持ちで包をあけるラーナ。いや、俺もちょっとドキドキする。
「わぁ~~王女さまですよぉ!!」
ラーナが引いたのは、第8王女のアイリア(S級)だった。
前回ひいた、第10王女のライムに引き続き、俺の妹だ。
「へぇ、こういうカードが入っているのか。にしてもさすが王女さま。気品あふれる美しさだな」
まあそうだな。王女だし、姫だし。でもアイリアの性格は……まあここではいいか。
さらに次のカードも王女だった。
第9王女のティナ(S級)。またしても俺の妹だ。
「クレイさん、王女様2人ですよぉ~~前にゲットした王女様と合わせて~トリプルプリンセスアタックができますぅ」
なんだそのロボットアニメからパクったような技名は。
ラーナが言うには、カードバトルで使える強力な技らしい。
にしてもいきなりS級カード2連続か。これは幸先がいいのではないか。
「これはラッキーポーションの効果が、発動している可能性はかなりあるぞ」
ラーナの細く綺麗な手が3つ目の菓子袋に入っていく。
「さあ、いよいよ本番です! ラッキーポーションの力~~見せてあげますよ~~~!」
慎重に包紙を少しずつ破いていくラーナの手が、ピタリと止まった。
「クレイさん……」
ラーナの顔が少しずつ俺の方に向く。
「やたぁ~~SSS級カードですぅ!!」
なにぃいいい!
マジかよ……
ラーナの持つカード右上からのぞくSSSのマーク。
「おお、凄いじゃないかラーナ殿。やはりこれはクレイ殿のラッキーポーション効果なのか」
「ふふふふふ~~そうですよぉお~~やた~やたぁ~~」
「まあ、凄いわねラーナちゃん。S級だって滅多に出ないのに、SSS級なんてこの店で出たことがないわよ」
だとすれば、ラーナの運は間違いなく爆上がりしていることになる。
夢のラッキーポーション完成の瞬間だ。
「クレイさんっ♪~クレイさんっ♪」
包をすべて剥がす前から、キャッキャウフフする聖女。
しきりに俺の名を連呼する。
いや、そのSSS級カードは俺じゃないと思うぞ……というかたぶん俺のカードは存在しないだろう。
と言いたいところだが、ラーナがあまりにも上機嫌すぎて水を差すのがためらわれた。
興奮冷めやらぬラーナが、ルンルンで残りの包紙を剥がしていく。
が、途中でその手はピタッと止まる。
「ど、どうした?」
見事なほどに完全停止した聖女ラーナ。綺麗な瞳からハイライトが消えた。
デッサンのモチーフかよ……てぐらい止まっている。
「へぇ~~これがすごいカードなのか。キラキラしているな」
そこへあまり空気が読めていないエトラシアが、ラーナのカードを手に取りマジマジと見た。
カードの全容が、俺の視界にもしっかりと入ってくる。
お、おいこれ……
「うわぁああんん~~~キモ王子ですぅううう!!」
その場に膝をつき、泣き崩れる聖女。
ラーナの言う通りで、カードは兄の第2王子カルビン。しかも金ぴかのゴールドカルビンだ。
うわぁ……趣味わる……。
これ間違いなくあの兄自らが指示して作らせたぽいぞ。
「うぅうう~~この金クソ王子めぇえ! ぬか喜びさせないでよぉ!」
金クソ王子って言われちゃってる。
一応SSS級カードで、記載されているパラメーターはもはや上限突破の勢いだけどな。
SSS級カードが金兄と分かって落胆するのかと思いきや、フンスと最後の袋をあけるラーナ。
「諦めませんよ~~~不屈の聖女魂を見せてやりますから!」
ふむ、ぶっちゃけラーナがSSS級カードを引いた時点で、ラッキーポーションの効果は間違いなく確定だ。
だから、その後のことはもういいような気がするんだけど。
彼女の熱意に、なんか俺も思わず頑張れよと言ってしまった。
「うぅうう……最低カードでました……これ滅多に出ないらしいのに……」
ラーナの手にあるのは、今までとは違う黒い包紙。
それは、最弱の最低カードを示す色らしい。
「あら、それもはじめて見たわねぇ。公式では発表されていないから、デマかと思ってたわ」
雑貨屋のおばちゃんがそんなことを口にした。
なんにせよ最低カードか。
ラーナのラッキーポーション効果は、SSS級カードを引くことで使いはたしたのだろう。
「まあそう落ち込むなよ、ラーナ。今日はいいカードも引けただろ」
「そうですけどぉ……」
「カード集めってのはそう簡単にコンプリートできるもんじゃない。ちょっとづつ揃っていくからこそ楽しみがあるんだ」
ううぅ……と落胆しながらも、黒い包をあけるラーナ。
その綺麗な小顔は、しおれた花のようにどんより曇っている。
「……あれ?」
ラーナの声質が変わった。
「も、もしかしてこれ!?」
なんかラーナの顔が、ぱぁ~ッと花咲くように色づいていく。
「やたぁ~~~~! クレイさん当たったたぁあああ!!!」
おい、あるのかよ……俺のカード。
俺のカード、どうやら王族監修を受けずに制作会社がコソっと作成したっぽい。
パラメーターはすべて最低数値で、文字通りの最低カードなんだが。
にしてもこれは運が良かったのか? ラッキーポーションの効果なのか?
「やた~~やりましたよぉクレイさん!」
大喜びで飛びついてくるラーナ。
まあおそらくだが……
運が上がってたんだろうな。
ラーナが当てたのは黒い最低カードだが、ラーナにとっては最高のカードだったのだから。




