第42話 転生王子、さあ戦闘ポーション合成の時間だ
ぐるりと戦場全体に視線をまわした俺。
「はぁあああ~~~~!!」
「ぐぬっ……」
ブオンと唸る、女騎士の強烈な振りに攻めあぐねる黒服1人。
「―――ギュルゥウウウウ!!」
「ぐはっ……」
「この化け物め……」
子供とはいえフェンリルの猛攻に、防戦一方の黒服2人。
よし、みんな良くやってくれた。
頼りになる仲間だ。
「―――さて、これで俺の相手は、あんたら2人だけとなったわけだが」
俺は隊長とタイナーと呼ばれる女黒服に視線を戻して、そう告げた。
「くそ……女騎士にフェンリルか」
僅かに唇を歪める隊長。
「想定外なことがおこりすぎたか? おっさん?」
「ちっ王国め、やっかいな王子を追放しやがって」
俺の情報も集めていたか。
さすがは裏組織ぽいだけのことはあるな。
「さて、降参するか? 落としたエロ本はあきらめるか?」
「ふん、貴様はすでに大量のデバフ魔法を受けている」
「そうだな。欲しくもないもんたらふく食わせやがって」
「タイナー! 作戦の第二段階!」
「はい、隊長! 魔道具:重複付与の対象に隊長を追加!――――――身体能力上昇!」
ギュアっと隊長が地を蹴り、鋭い斬撃を放ってきた。
俺も剣で応戦する。
同じバフ魔法の重ね掛けか……!
俺に身体能力ダウンのデバフ魔法を連続使用可能にしている魔道具。
どうやら対象者を追加できるらしい。
一進一退の攻防を繰り広げる俺と隊長。
「末恐ろしい奴だ。あれだけの能力ダウンデバフを受けながらその動き。そのポーション、わしにくれんか?」
「やだね! これは俺しか使わない決まりなんで―――なっ!」
舌戦と激しい剣の応酬。
俺と隊長の剣が何度も交差して、火花が散る。
「タイナー! そのまま強化魔法を連続使用だ!」
「はい、隊長! ――――――身体能力上昇!」
まだ重ねるのか……
さらに身体強化された隊長が、迫りくる。
「ハハハッ! 3本目は飲まなくていいのかぁあ!」
隊長の言う通り、俺は徐々に押され始めている。
バフ魔法は同じ魔法の効果は一回までで、本来重ねがけに効果を発しない。
だが俺の戦闘ポーションは違う。
飲めば飲むほどその効果はアップする。
だが、その分の身体への負担は段違いに上がる。そりゃそうだ。本来出ない力を無理やり引き出しているのだから。
だが、それはバフ魔法とて同じことである。
本来重ね掛けできない身体強化を連続で使用しているのだ。
「おっさんも随分と無理してるようだな」
「ふん、小僧とは鍛え方が違うわ!」
そう言いながら、手持ちのアイテムであろうハイポーションをグッと飲む隊長。
間違いなく隊長は疲弊している。
というかしないわけがない。
今飲んだハイポーションも、動きを見る限りほとんど回復していない。極度の消耗で効果が追いついていないんだ。
ズキっ……
「……っ」
それは俺もだがな……。
「さあて、お互い時間がないようだな。おっさん」
俺はポーチに手を突っ込み、戦闘ポーションを取り出した。
「フハハ! ついに3本目か! いいのかぁ、おまえの身体はもつのかぁあ!」
そう煽んなよ。
「たしかにキッツいよな……だがこの3本目……同じものじゃないぞ」
「なにを強がっている? さっさと飲め! 貴様とて、そうなん本も飲めないはずだ。それが最後の一本だろう。 タイナー! さらに追加だぁ!」
「で、でも隊長……これ以上は隊長の体が……」
「速やかに命令を実行せよ! ここで勝たねば全てを失うだけだ!」
「はい、隊長! ――――――身体能力上昇!」
このおっさんも只もんじゃないな。
これだけの重ね掛けに耐えられる人間は、世界広しと言えど一握りしかいないだろう。
「グフっうう……ぬぅ! どうしたぁ! 早く飲まないと終わってしまうぞ、小僧ぉ!」
「あせんなよ、おっさん」
俺はポーチに手を突っ込んで、もう一本ポーションを取り出す。
【ポーション(電気鎮静)《エレキヒール》】
「これはな、俺のオリジナルのポーションだ」
「なんの話だ?」
「痛みの神経伝達を微弱な雷魔法でブロックするんだ。そうすることで痛みを感じるのを和らげたり筋肉の緊張をほぐして、痛みやコリを軽減するポーションだ。まあ前世でいうところの低周波治療みたいな効果がある」
「さっきからなにを言っている貴様! 気でもふれたか?」
「結論を焦るなと言ってるだろう、おっさん。そんなんじゃモテないぜ」
「貴様ぁああ。くだらん時間稼ぎをしおって……」
時間稼ぎだと……?
そいつは違うな。
俺は2本のポーションを左右に持ち、スキルを発動する。
「―――【ポーション合成】!
【戦闘ポーション(瞬間身体能力アップ)《インスタントパワーブースト》】×【ポーション(電気鎮静)《エレキヒール》】!」
2つの小瓶が光の中で融合する。
「合成完了―――【戦闘ポーション(戦闘雷属性付与)《バトルサンダーブースター》】!!」
瓶の中では青白い光が絶え間なく揺らめき、時折小さな稲妻が走る。
俺は出来上がったポーションを一気に飲み干した。
「さてと、おっさん――――――決着をつけようぜ」
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