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第40話 女騎士視点、エトラシアの一撃

 クレイ殿が「黒服1人いけるか?」と問いかけてきた。


 当然ながらワタシの答えは「イエス」だ。


 なんか呼ばれる順番が、ペット(フェル)より後だとか、ワタシだけ語尾が疑問形だったとかは関係ない!


 相手はラーナ殿を狙う痴れ者たち。

 黒い服に身を包み、悪人のごとき言動と立ち振る舞い。


 またその醸し出す雰囲気にたがわぬ実力。


 間違いなく強敵だ。


 クレイ殿はこいつらの作戦に苦戦している。

 だからこそ、ワタシに直々に指名が入ったんだ。


 くっ……


 とにかく剣を抜かないと……


 だがワタシの相棒は鞘の中でガチャガチャと音を立てる一方で、一向にその刀身を現してくれない。


「エトラシアさん」


 くっ……また心臓の鼓動が大きなっていく。なぜだ!

 は、はやく参戦せねば……


「エトラシアさん!」


「う、うわ! 急に大声出さないでくれラーナ殿。それに護衛対象がこんな前に出てきてはいけない」

「いや、前って言うか。私たちの位置は一向にかわってないですけどね。じゃなくて、はいこれ」


「ん……ポーションではないか?」


「クレイさんに頼まれてたんです。エトラシアさんがアワアワしてたら、この2本目を渡してくれって」

「そ、そうなのか。クレイ殿が……」


「いつものより濃いめだそうですよ」


「―――わかった」


 ワタシは速攻でポーションを喉に流し込む。


 すぅ~~と息を吸う。



「――――――ふぅ」



 優しい気分になるな。このポーションは。

 バクバク跳ねていた私の心音が、ゆったりとした音に戻っていく。


「もう大丈夫だ。ラーナ殿」


「エトラシアさん……ごめんなさい。私のせいでみんなを危険な目に合わせて……」


 ボソッと呟いたラーナ殿。

 さっきまではいつもの口調だったが……そうか。


 ワタシはなにをやっているんだ。


 いま一番怖くて怯えているのは、ラーナ殿ではないか。

 なのにワタシは自分のことで頭がいっぱいだ。


「ラーナ殿。謝る必要はない。今度はワタシが助けになる番だ」


 鞘をつかむ手に力が入る。


 相棒の剣を抜き放ち、一番近くにいた黒服の1人に言い放つ。



「――――――貴様の相手はワタシだ!!」



 ワタシの言葉にわずかに視線をずらした黒服。

 まるで値踏みしているのかのような視線。


 抜いた剣の刃先が震えている。


 だ、大丈夫だ。

 クレイ殿のポーションを飲んだのだから。


「はぁ~~!」


 ワタシは気合の一声とともに、前に飛びだした。

 クレイ殿に無駄に跳ぶなと言われていたのを思い出し、地に足をつけて駆ける。


 あ、なんかいい感じに走れているかも。


 心の焦りも普段よりは少ない気がする。


 このまま走り抜けざまに剣を振りぬいて―――!?


 って、いない!


 ワタシが走りぬことうとした先には黒服はいなかった。


 かわりに、横からすごい風切り音が迫ってくる。


「うわっ―――っ!」


 いつの間にか敵が横から斬撃を放っていた。

 ワタシは無我夢中で斬撃を受け止める。


 剣を握る柄に、強烈な振動が走った。


 何だ……全然見なかった……


「むっ、いまのを片手で止めるか……ただのザコではなさそうだ」


 何が起こったのかまったくわからいが、敵の注意をこちらにひけたようだ。


「そ、そうだ! 貴様の相手はワタシだと言っただろう!」


 ワタシがそう言い終わる前に、黒服から次の斬撃が放たれる。


「勘違いするなよ。ザコではないが、おまえごとき片手間でじゅうぶんだ。

 ――――――身体能力減少フィジカルアビリティダウン!」


 なっ! ワタシに攻撃しつつ、クレイ殿にデバフ魔法を……!!


 クソ!


 さらに追加の斬撃がくる!


 ダメだ! なんとか攻撃を防ぐので手がいっぱいだ。


 やっぱりダメなのか……


 抜け出せない病気から奇跡の回復をして、毎日筋トレと剣の素振りばかりして。


 たしかに以前クレイ殿から頑丈さを褒めてもらったことはある。


 だが、今求められるのは騎士としての強さ。この危機を脱する強さ。


 やっぱり無意味だったのか……


 実力差が歴然ではないか。

 クレイ殿は凄いな。こんなすご腕5人を相手にするなんて。


 だが……

 もう一度自身の心を問いただす。本当に無意味だったのか?


 ワタシの役目は1人でいいから、黒服の注意を逸らすことだ。

 そうすればクレイ殿の負担が減るし、それがラーナ殿を助けることに繋がる。


 せめてクレイ殿への攻撃をやめさせないと!


 ワタシも成長しているはずなんだ。


「うぉおおおお!!」

「くっ……なんだこいつ!」


 ワタシは敵の斬撃を受け止めたと同時に、渾身の力を振り絞って相手の体にしがみつく。


「な、なんだこの馬鹿力は……!?」


「―――クレイ殿! こつはワタシが身を挺して足止めしてみせるぞ!」


 ワタシは空気が震えるほど大きな声で、戦場全体に自分の意思を叫んだ。



「エトラシアぁあああ!」



「く、クレイ殿?」


 クレイ殿がこたえた。黒服たちと激しい戦闘中だというのに。


「足止めだとぉ! 剣を正眼にかまえろ! 深呼吸しろ! 何も考えるな!

 ―――――――――思いっきり振ってみろぉ!!」


 クレイ殿の言葉を聞いて、黒服を掴んでいた手を離す。


「クソ、この馬鹿力女騎士が。魔力はすべてやつに使う予定だったが、仕方ない」


 敵が詠唱を開始する。


 ワタシはこの間に深く息を吸い込み、剣を敵の真正面に構えた。


「――――――身体能力上昇フィジカルアビリティアップ!」


 黒服は自身に強化魔法をかけたようだ。


「ククっ……まずは女騎士、おまえから始末してやる」


 その言葉に先程までの怖さや迫力がいまいち感じられなかった。

 クレイ殿の言う通りに、頭を空っぽにしたからかもしれない。


 剣先も震えていない。


 剣を上段に振り上げる。


「ど素人がぁ! 隙だらけだぞ!」


 黒服が何やら言いながら迫ってくるようだが、関係ない。


 今までで一番いい気分だ。


 ―――いくぞぉおおお!



「はぁあああ~~~~!!」



 ワタシは無心で剣を振りおろした。


 ブオン!!という今まで聞いたことのない風切り音が鳴る。


 そして、剣と剣が交差する音が後から聞こえてきた。


「…………!?」


 どうなった? 


 すくなくとも、ワタシは斬られていないようだぞ……?


 というか黒服はどこにいる!? またワタシの横に高速移動したのか? それとも別の攻撃を仕掛けてくるのか?


 違った……



「ばかなぁ……強化されたおれの攻撃もろとも一撃で……ありえん……」



 少し離れた場所に剣を持つ右手を抑えながら、苦悶の表情を浮かべる黒服。


 なんであんなところにいるんだ??


「よし、良くやった! それがおまえの斬撃だ、エトラシア!」



 え? え? ワタシの一撃??



 ワタシの攻撃で、黒服が吹っ飛んだのか。


「ほらな、鍛錬は無駄じゃなかったろ! 

 足止めなんてせこい事言うな。騎士の力を見せてやれ!」


 そ、そうか。ワタシのやってきたことは無駄ではなかったんだな。

 クレイ殿はまらワタシを認めてくれたんだ。



「ああクレイ殿! こいつはワタシに任せておけ!」



 ワタシは剣を正眼に構えた。



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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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