表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/81

第39話 黒服たちのデバフ魔法作戦

 俺たちを取り囲む5人の黒服たち。


「ま~~たおまえたちか? 隠してたエロ本でも落としたのかよ」


「ようやく見つけたぞ」


「エロ本見つけたんなら帰れ」


「聖女は我々がいただく」


 俺の挑発には一切乗らずにたんたんと話を進める黒服の一人。

 この声は、たしか隊長と呼ばれていた奴だな。


「クレイ殿、こいつらはいったい?」

「エトラシア、こいつらは以前ラーナを襲ったやつらだ」

「ら、ラーナ殿を! それで聖女をどうのと言ってるんだな」

「おそらくはラーナの聖水が目的だ」


「くっ……この痴れ者どもめ! ラーナ殿の聖水は、人を助けるためにあるものだ!」


「ふん、知った事か。さあ、一度だけチャンスをやろう。おとなしく聖女をわたせば見逃してやる」


 チャンスだと。殺気を抑えるのに必死なやつらが、なにほざいてやがる。

 こいつら、余程ラーナが欲しいらしい。


「ああぁ……なんで……」


 彼女の顔が青ざめる。唇が震え、足がすくんでいた。

 目の前には、あの時彼女を襲った黒服たちが、嘲笑うように立っている。


 ラーナの怯えた声。


 たく、こいつから取柄の笑顔を奪うなよな。


 俺は彼女の手をギュッと握り、はっきりとした口調で言葉を伝える。


「大丈夫だラーナ、俺がいる。だから安心しろ」


「う、うん。クレイさん」


 無理矢理笑顔を作るラーナ。

 俺は再び黒服達に、鋭い視線を向けた。


「―――おい、おっさん! しつこい美少女ストーカーは嫌われるぜ」


「ふむ、交渉は決裂のようだな」


 5人の殺気が高まる。


 というか抑えていた殺気が解放されたかんじだ。



「―――身体能力上昇フィジカルアビリティアップ

 ―――物理防御力上昇フィジカルディフェンスアップ

 ―――魔法攻撃力上昇マジックアビリティアップ!」



 他の黒服たちが、隊長に多種のバフ魔法をかける。

 バフ魔法の使用は前と同じくだが、今回は隊長オンリーに全振りか。


「リタ! 防御に徹しろ! ラーナとユリカを守れ!」

「はいです! ご主人様!」

「エトラシア! 剣を抜け! 死ぬほど気合入れろ!」

「あ、ああ! クレイ殿!」


 俺はポーチから戦闘ポーションを取り出し、一気に飲み干した。


 抜刀して地を蹴り、敵のボスである隊長との距離を一気に縮める。


 ――――――速攻で隊長格を潰して、やつらの統制を崩す!



 よし、あと少しで間合いに―――!?



 くっ…………


 身体の動きがおかしい!


 俺の体が重い……さらに力が抜けていく感覚。五感全体が弱まっていくような。


 素早く周辺を確認すると他の4人が連続で詠唱を続けている。



「―――身体能力減少フィジカルアビリティダウン!」

「―――物理攻撃力減少アンチアタックアビリティ!」

「―――物理防御力減少アンチフィジカルディフェンス!」

「―――物理速度力減少アンチフィジカルスピード!」



 デバフ魔法か……


「その通りだ! ぬぅっ!」


 俺の眼前に鋼の刃が迫る。

 隊長に斬り込んだ俺だったが、想定外の急激なパワーダウンで意表を突かれ初手を取られた。


 ギンッと剣と剣が交差した。


「ぬぅ……あれだけのデバフ魔法を喰らってまだその力か」


 意表を突かれて後手を取ったが、まだ俺の身体能力の方が上だ。


「なるほど、無策でくるとは思わなかったが。こんなプレゼントを用意してくれてたとはな」


「当然だ、我らに失敗は許されない。聖女は必ず頂く」


「かってに持っていこうとするな、極悪サンタが!」


 剣のつばせりあいから、いったん離れる俺と隊長。


「―――総員、作戦を続行せよ! タイナーは魔道具発動!」


「はっ! 隊長!」


 タイナーってたしか風魔法でっ撤退した時のやつか。この声……女か。


「ふん、なんだおまえ。わたしが女だからって舐めない方がいいぞ。それに隊長の作戦は完璧だ。どうあがいてもおまえに勝ち目なんかない」


「タイナー、余計な会話はするな!」

「は、はいっ! 隊長!」


「―――身体能力減少フィジカルアビリティダウン!」

「―――物理攻撃力減少アンチアタックアビリティ!」

「―――物理防御力減少アンチフィジカルディフェンス!」

「―――物理速度力減少アンチフィジカルスピード!」


 再び隊長以外の4人からデバフ魔法が放たれる。


 連続使用かよ……


 デバフ魔法自体が高度な魔法であり、ごく一部の人間しか使えない。

 それを当然のように使用するこいつらは、やはり相当な手練れたちだ。


 身体からさらに力が抜けていくのを感じる……が。


 おかしいぞ。


 デバフ魔法の効力は一回のみのはず。その身体に与える影響力は一度与えると一定期間発動し続ける。

 重ね掛けしても、同じ魔法では効果は同じだ。


 だが……あきらかに追加の効果が発動している。


「おまえさんの持つ魔道具か……」


 俺はタイナーと呼ばれた女に視線を向けた。


「ふっふ~ん。そのとおりだ、この腐れポーション野郎が! 隊長が重複付与効果を発揮する貴重な精密魔道具である、【魔道具:重複付与(オーバーエンチャント)】を準備してくれたんだ! どうだ、すごいだろう!」


 めっちゃ丁寧に説明してくれた。


「タイナーぁあああ!!」


「ははぃ!」


 めっちゃ隊長に怒られた。


 にしても、デバフ効果を重ね掛け有効にする魔道具か。

 厄介だな。



「―――ぬぅうううん!」


 再び隊長の剣撃が俺を襲う。


 くっ……


 衝撃で後ろに足がさがる。


「ふっ、どうやら私の力が上回ってきたようだな」


 隊長の口角がつり上がり、さらに斬撃を放ってきた。


 くそっ……防御で手いっぱいだ。


「―――つあっ!!」


 俺は後方に飛び、いったんその場から距離を取ってポーチに手を突っ込む。

 取り出したのは戦闘ポーション。


「ほぅ……二本目か」


「そうだ」


 俺は2本目の戦闘ポーションをグッと飲み干した。


 再び俺の体内に力が湧き上がってくる。


 隊長との距離を詰めて、圧倒し始めるが―――


「―――総員、作戦続行! 奴のポーション効果をおとすんだ!」


「―――身体能力減少フィジカルアビリティダウン!」

「―――物理攻撃力減少アンチアタックアビリティ!」

「―――物理防御力減少アンチフィジカルディフェンス!」

「―――物理速度力減少アンチフィジカルスピード!」


 ちっ……これじゃいたちごっこだ。

 それに戦闘ポーションの連続使用で……くっ……


 頭にズキッと痛みが走る。


「貴様のポーション。とんでもない威力を秘めているが、身体への負担も相当なものだろう?」


「俺の体の心配か? まさかまさかの男専門おっさんかよ」


「フハっ、強がるな小僧。おまえのポーションは使えば使う程、体を酷使する」


「変態プレイもOKおっさんってか。怖いねぇ」


「フッハハハ、減らず口を吐いている場合か? さあ~~何本までもつかなぁ!」


 そうだな。正直なところ、あいつの言う通り何本も飲めば俺の体がいかれちまう。



 でもな……俺は1人じゃないんだよ。



「フェル! 大好きなラーナの為に力を解放しろ! 黒服2人程度ならいけるよな!」

「キャンキャン!」


「リタ! 引き続きラーナとユリカを守れ! 守備の要だぞ!」

「ハイです! ご主人様!」


「最後にエトラシアぁ! 例のポーション飲んでおいて良かったな! さあ、騎士の力をみせろ! 黒服1人いけるか?」

「ああ、クレイ殿。言われるまでもない!」


 そうだ、俺には頼れる仲間がいる。


 ぼっちじゃないんだ。


 無限にデバフ魔法を重ねがけ出来るってんなら、かける暇を与えなければいい。

 そう、魔法を使う余裕を無くしてやる。



「さあ、俺の仲間は手強いぜ。覚悟しろよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ