第36話 女騎士、ポーションに目覚める
「あ、クレイさん戻って来た~」
「ご主人様、素材はあったですか?」
「ああ、けっこう色々あったぞ」
集めて来た素材をドカッと地面に降ろす。
俺たちは魔の森でもう一泊することになった。フェンリルたちの事後経過を見る必要があるからだ。まあ大丈夫そうだけど。
その日の午前中にフェンリルたちの治療は終わったから、午後は多少時間ができた。なので俺は素材探しに行ったのだ。
ラーナやリタにユリカは、フェンリルたちと留守番だった。まあ伝説級の魔物たちに囲まれているので、これ以上にないほど安全だろう。
素材探しに行ったのは俺と……
「お~~い。クレイ殿、ま、待ってくれ」
女騎士のエトラシアだ。
「く、クレイ殿。移動が速すぎるぞ……はぁ、はぁ」
俺は素材探しの際はかなり早く移動する。今回は時間も限られているし、魔物ひしめく森だから素早い行動が求められる。
エトラシアはどうしてもついて行くというので、連れて行った。
「しかし、ギリギリではあるが良く俺についてこられたな。さすが騎士さまだ」
「ほ、本当か! やった、クレイ殿が褒めるなんて珍しい!」
いや、俺そこそこ褒めるぞ? この女騎士、なにか勘違いしてないか。
が、今はそれよりも……
「エトラシア、足を見せてくれ」
「ふはぁっ! く、く、クレイ殿。な、な、なにを言い出すんだ! 脱がしてワタシをどうする気だ?」
「変な勘違いをするな。足をかばって歩いていただろ」
「えっ……そんなこと見てるのか?」
見てるも何も、物凄く分かりやすかったけど。
歩き方が不自然だったよ。
エトラシアが甲冑の足当てを外すと、彼女の素足が露わになった。
太ももにケガをしている感じではないな。
「クレイ殿、そんなにマジマジと見ないでくれ……」
女騎士は頬を赤らめ、視線をそらしながらボソッと呟いた。
「恥ずかしがるな、綺麗な足だぞ」
「くはっ……そ、そんなこと……」
なにモジモジしてやがる。俺は本当のことしか言わん。
というかどこが悪いんだ? あそこまで変な歩き方はクセではないはずなんだが……
俺は、ひょいとエトラシアの足をもちあげた。
「やっ! なにを……!」
ビクッとする女騎士。
「あ、これか」
やっと原因がわかったぞ。
「足の裏に魚の目がある。これだな」
「わかった! わかったから足を降ろしてくれ、クレイ殿!」
赤面して涙目で訴えるエトラシアの足を降ろすと、俺は今朝集めたばかりの素材を物色し始める。
「も~~クレイさんは相変わらずですね~」
ラーナがむうぅとした視線を送ってきた。
リタとユリカも同じくだ。
どうしたんだ? 3人とも怖い顔して。
「ポーションにしか興味がないんだから~まったくもう~」
いや、原因が分からなかったら、ポーションの作りようがないだろ。
「さあ~~魚の目を治すポーション作りだな。うむ、既存のはないからと……」
「クレイ殿、うおのめとはこの足の裏に出来たマメのことなのだろうか?」
「そうだぞ。それ、歩くたんびに痛いだろ」
「あ、ああ。たしかに力を入れるとピキっと痛みが走っていたんだ。だが騎士がこんなことで弱音を吐くわけにはいかないからな」
「その根性は認めるが、なんでも我慢すりゃいいってもんでもないぞ」
そう、俺のポーションはこういう時の為にあるんだから。
「お姉さまは、わたしが疲れた時はいつもおぶってくれるんです」
どうやらユリカが疲れた時には、エトラシアがおんぶして移動していたようだ。
妹想いのいい姉じゃないか。
俺もポーション作りに力が入るってもんだ。
「―――お、あった。これがいいだろう」
素材
・フェンリルから採取したスキンマッシュルーム微量
・さっきの素材探しで見つけた、乳木から取れた樹液
・俺の自家製ポーション水
「よし、この素材で―――
【ポーション生成】!
――――――【ポーション(足裏角質軟化)《スキンステップ》】!」
一本のポーションが出来上がった。
「エトラシア、飲んでみてくれ」
クイっと一気に飲み干す女騎士。
「ふあっ……美味い、これ……」
そりゃそうだ、俺の作ったポーションに不味いものはない。
「で、どうなんだ?」
効果のほどを教えてくれ。
「ポーションって苦いものとばかり思っていたが……これは凄いなクレイ殿」
「それはいいから、どうなんだ? 足を見てやろうか?」
おれがウキウキしてエトラシアに近づくと、彼女は顔を真っ赤にして自ら足裏を確認した。
「ああ、マメが無くなっている!」
その場でバンバン跳ねて、足を地面に叩きつけるエトラシア。
「痛くない! 痛くないぞ、クレイ殿!」
よしよし、成功のようだな。
魚の目ポーション。これは需要がありそうだ。
エトラシアの笑顔に満たされるこの感覚。
一時の満足感が駆け抜けたあと、俺にはある感情が渦巻いてきた。
ダメだ一本作ったから止まらなくなってきた。
こうなったら……
まだまだ作るぞ~~
素材は先ほど山ほど取って来た、新しいポーションも試したいし。色々組み合わせも楽しめそうだ。
どうせ魔の森には一泊するんだ。ここで作りまくってやる。
「というわけで、俺は今から作りまくる! 以上!」
ラーナが若干呆れた顔をしていたようだが、空き時間なんだから好きな事すればいいのだ。
こうして俺は作りまくった。
出来上がったポーションの瓶が、次々と並べられていく。
「く、クレイ殿。そんなに作って大丈夫なのか? 誰が飲むんだ?」
「エトラシアだけど」
「ワタシ一択なのか!?」
「だって、魔の森に入る前に言っただろ?」
「え? なにを……?」
「俺のモノをなんでも飲むって」
「クレイ殿のモノって、ポーションのことだったのか!」
いや、前にも言った気がするが、それ以外になにがあるんだよ。
「ってことで、とりあえずこれ頼むわ」
ズラーっと並ぶポーションに、少し引き気味な女騎士。
「くっ……ポーション責めとは。だがこの程度の恥辱では屈しないからな!
――――――ゴクゴクゴク~~~~~
おお、いい飲みっぷりだ。
両手にポーション握って、左右左右と交互にがぶ飲みしていく。
「――――――ぐふっ!?」
一気に飲みすぎたのか、急にピクピクと痙攣する女騎士。
いかん、さすがにやりすぎたか。
「エトラシア、少しずつでいいぞ。今日はこのへんにしとくか?」
「うまぁああい! なんだこれ! クレイ殿なんだか止まらなくなってきた!」
あ、ヤバイ。
ラーナたちがポーション飲む時と似たような顔になってる……。
それは、女騎士がポーションに目覚めた瞬間であった。




