第35話 転生王子、フェンリルたちのおできを治す
さて、次にフェンリルのおできを治すポーションだ。
ポーションの効果としては、患部治療と痒み鎮静の2つの効果が必要だろう。
俺は女神から貰ったポーチに手を突っ込み、一本のポーションを取り出した。
【ポーション(痒み鎮静)《カイカイストッパー》】
水虫に効くポーションだ。
王族時代に作成して、兵士たちに大好評だった。王子だった頃に大量に作ったからストックはじゅうぶんにある。
フェンリルに効果があるかは飲ませないとわからんが、俺の手持ちでは一番可能性のあるポーションだ。
こいつに、患部治療のポーションを合成して完成させたいのだが……
肝心の患部治療ポーションをどうするかだな。
メイン素材である肌に治療効果のある薬草で、いいものがない。
今から素材探しに行くのは時間的にも難しいな。
こうなったら、色々手持ちポーションを組み合わせて片っ端から試すしかないか。
「あれぇ~~? クレイさ~~ん」
俺が脳内でいろいろ掛け合わせ計算をしていると、フェルの体毛に埋もれたラーナが声を上げた。
もうそこにいることが当たり前のようになっているが、一応伝説級の魔物だからな。
「どうしたラーナ?」
「フェルちゃんに、なにか付いてます」
聖女様は、またなにかを見付けたらしい。
「おできじゃないのか?」
「違いますよ~これキノコかなぁ~?」
俺も近くに行って確認すると……
「うぉ……これ素材じゃねぇかよ……」
ポーション素材であるキノコが、フェルの体に生えていた。
しかも、スキンマッシュルームじゃないのか! これ!!
興奮した俺は、フェルに生えていたキノコをブチっと抜いてマジマジと見てみる。
なんか悲鳴に近い泣き声が上がった気もするが、それどころではない。
スキンマッシュルームは、皮膚組織を再生する成分が含まれているレア素材だ。
マジか……
俺が欲しかった素材だ。
よし!
これでポーション作成のめどがついた。
ただしかなりの量をつくるので、もう少しスキンマッシュルームが欲しいのだが……
うおっ!
よく見たら何本か生えてるじゃねぇか!
「でかしたラーナ!」
「でかしたじゃないですよぉ~ブチぃて取っちゃダメです! もっと優しくですよ!」
「え? そ、そうか、すまなかった。つい興奮してしまってな」
ああ、さっきの泣き声はフェルの声だったのか。
つい夢中で引っこ抜いてしまったようだ。
「よしラーナ。フェルに生えているキノコを全て取ってくれ」
「は~~い。フェルちゃん、痛くしないから取らせてね~」
だが、フェルのを全て取ってもまだ足らないな……って! 他のフェンリルにも生えているぽいぞ!?
―――なんだこれは?
フェンリルがキノコを生やすなんて習性は、聞いたことがないぞ。
もしかして痒みを止めたいがゆえに、スキンマッシュルームを大量に食べたのか?
フェンリルは知能が高い魔物だからな。
あり得るかもしれん。
だが、スキンマッシュルームを直接摂取してもそこまで効果はない。
この素材は加工してこそ、その真価を発揮するんだ。
そして俺はその加工する術を持っている。
うぉおお……
ワクワクしてきやがった。
「よし、みんな! フェンリルに生えているキノコを取ってくれ。ラーナ、フェルに仲間に取っていいよう伝えてもらってくれ」
「は~い。クレイさん」
そして、フェンリルキノコ狩りが始まった。
どんどん集まって来るレア素材。
凄いぞ……素材集め専門の冒険者でも、これほどの光景を見た奴はほとんどいないだろう。
宝の山じゃないか。
「ラーナ、キノコ狩りは他のみんなに任せて、聖水をバンバン出してくれ」
「は~~い。フェルちゃんちょっと待っててね。クレイさんが必ず助けてくれるよ~」
ドバドバと聖水を出し始めるラーナ。
素材も聖水も潤沢にある。
これで準備は完全に整った。
さて、作るぞぉおおお!
まずは、治療回復のポーションからだ。
・スキンマッシュルーム
・ラーナの聖水
・体力回復草
素材を揃えて―――
「【ポーション生成】!
――――――【ポーション(皮膚膿瘍治療)《オデキキュア》】!」
よし、これで患部治療のポーション完成だ。
さらに、水虫痒み止めのポーションを取り出して―――
「―――【ポーション合成】!
【ポーション(痒み鎮静)《カイカイストッパー》】×【ポーション(皮膚膿瘍治療)《オデキキュア》】!」
2つのポーションが光輝き融合する。
「合成完了―――【ポーション(皮膚鎮静浄化治療)《オデキスキンクリアリフレッシュ》】!!」
「ふぅ……完成だ」
「ふわぁ~クレイさん。なんかこのポーション青くて綺麗ですね」
「ああ、ラーナの聖水を大量に使用しているからな」
さて、効果のほどを試さねば。ワクワク!
「ラーナ、フェルにこのポーションを飲ませてやってくれ」
こくりと頷き、フェルの口に瓶をあてて飲ませるラーナ。
このフェンリル、ラーナの言う事ならなんでも聞きそうなほど従順だな……。
「グルゥウウ?」
どうだ?
「グルグルゥウ」
子フェンリルであるフェルは、ラーナに身体を摺り寄せている。
なんだ? ダメなのか? まだ痒いってことか?
「グルゥ?」
なんだ、急に声質が変わったぞ!
と思ったら、ラーナの声だった。フェンリル語かよ。ややこしい。
「グルルルゥ!」
「クレイさ~ん、フェルちゃんのおでき無くなってますよ~あと痒みもないって~やった~」
おおぉ……
……効果ありだ。
「さすがご主人様です~~ボウル2個目もできましたです!」
リタが満面の笑みで巨大なボウルを担いできた。
「よし、今からポーションを作りまくる。出来たものからボウルに入れてくれ」
それから鬼のようにポーションを作りまくり、ボウルに入れてフェンリルたちに飲ませた。
およそ一時間後……
「ふぅ~~これで全てにいきわたったか」
「はい! クレイさん、みんなおできも無くなって、痒みもないっていってますよ。やりましたね!」
「瘴気も身体から出ていないです!」
当然だ。ラーナの聖水をふんだんに使用しているので、浄化効果も抜群だからな。
2つの大きなボウルに頭を突っ込んでいたフェンリルたちが、顔を上げこちらに向かってくる。
「く、クレイ殿……」
「心配するな、エトラシア。彼らに殺意はこれっぽっちもない」
俺たちを取り囲んだフェンリルたちが、一斉に仰向けになる。
すべてのフェンリルが俺に向けて腹を見せてきたのだ。
凄い光景だな……。
「クレイ殿。こ、これは、どういうことだろうか?」
「おそらくは俺たちへの敵意はないという意思表示だろうさ」
「一部の魔物がお腹を見せるのは服従のあかしだって、おじいちゃんに教えてもらったことあるです」
「そうかもしれないなリタ。まあ俺は大将になるのはごめん被るがな」
「す、凄いな……クレイ殿は本当に凄いな……」
「はい、クレイ様がいればなんでも治すことができる気がします」
エトラシアとユリカが大層な事を言い出した。
そんなことは無い。
俺は出来ない事の方が多いんだがな。
まあ敢えてここで言う必要はないか。
「さて、これでフロンドの瘴気問題も解決しそうだぞ」
魔の森から流れ出ているという瘴気の元は、このフェンリルたちだった。
もちろんその他にも発生の原因が無いとは言い切れないが、強力な魔力を秘めた魔獣たちが一斉に瘴気を出していたんだ。これが無くなれば、間違いなく変化が起こるだろう。
「フェンリルたちを救えたのは良かったが、クレイ殿は瘴気に効くポーションを販売していたのだろう?」
「そうだなエトラシア」
「だとしたら、そのポーションは売れなくなってしまいますね。クレイ様」
「そうだなユリカ」
「なんだかクレイ殿は嬉しそうな顔をしているな」
売れなくて構わないんだよ。
必要とされなくなったポーションはその役目を果たしたんだ。
存分に活躍したのだからそれでいい。
「つまり俺から言わせれば、それは最高のポーションなんだよ」
「そ、そういうものなのか……」
エトラシアがぽつりと呟いた。
それにな……
ポーションに終わりはない。
「また新しいポーションを作れるじゃないか」
「ハハッ、クレイ殿らしいな」
そうだ。俺のポーション作りは、終わりのない趣味だ。
最高だよ。




