第19話 転生王子、絡んだきたチンピラにポーションずぼっ!する
ガラの悪い4人の男たちに絡まれる俺とラーナ。
「ば、バッドさん。その、まだお金の用意ができてなくて。ら、来週には必ず返しますんで~」
先程口を挟んできた男が、ビクつきながら逃げて行った。
このバッドという男に金をかりているのか?
「ボスっ! あいつまた逃げやがった。追いますか?」
「いや、来週かえっすつってんだから待ってやれ。まずはこの新顔たちの教育からだな」
待つのかよ……
バッドと呼ばれた男がズイっとこちらに寄ってきた。
「おい、誰に断ってこんなところで商売してんだ?」
ふむ……
「歳は20代前半ってとこか。背丈は175。体格はそこそこ良しと」
いいぞぉ~モニターとして文句なしだ。
「ああ? おまえ何ブツブツ言ってんだ? ちゃんとバッドさんの質問に答えろや」
「おまえ、バッドさんを舐めてんのかぁ? 俺たちは10年前からこのしまを牛耳ってるんだよぉ」
「そうだ、バッドさんはなぁ。孤児だった俺らを集めてしっかり食わせてくれてんだよ!」
「へぇ~あなたけっこういい事してるんですね? 私、見た目で判断しちゃうとこでしたぁ」
ラーナが怯えた顔から一転、興味深そうにバッドと呼ばれた男をマジマジと見る。
「バッドさん、こいつら完全に舐めてますぜ。そうだ、バッドさん例のやつ見せてくださいよ!」
「おお、そりゃいい。確実にビビりますぜ!」
取り巻きたちに持ち上げられて、渋々と言った感じで懐からナイフを取り出したバッド。
バッドは、そのナイフをチロチロと舐めだした。
が、舌を切るのが怖いのか、かなりビビりながらのチロチロだ。
「ふぇ? おなかすいてるんですかぁ?」
「ちげぇ~よ! ナイフ舐めるぐらい好きってことだよ!」
「あ、だからお腹空いてるんですね?」
「バカ野郎! ナイフが好きってことはヤバい奴ってことで普通ビビるだろ! 空気読めよオンナ!」
小首を傾げて、ぱちぱちと瞬きをするラーナ。
残念ながら聖女様には効果がなかったようだ。
「ちっ、調子狂うな。まあいい、最初の質問に戻るぞ。おまえらここで何やってんだ?」
「ポーションの販売ですよ~瘴気に効くポーションです」
ルーナは両手を腰に当てて得意そうにその豊満な胸を揺らす。
「「「ギャハハハ~~」」」
「な、なにがおかしいんですか!」
「ははぁ、オンナ。ウソつくならもっとましなウソをつけよ」
「ウソってなんですか!」
「ああ? 瘴気に効くポーションなんてないんだよぉお!」
「このけだるい感じはなぁ。フロンドに住むなら誰も逃げられねぇんだよ!」
「そんなポーションがあればバッドさんの妹さんだって……」
「で、でも。クレイさんのポーションは違うんです!」
「はあ? なにが違うってんだ……」
「「「「―――そんなもんがあるなら飲ませてみろってんだ!」」」」
男たちの見下すような笑い声がその場に鳴り響いた。
たしかに、市販のポーションには無いな。
だが―――
俺はラーナの肩をつかんで下がらせた。
「ラーナ、あとは俺に任せろ」
「クレイさん? まさかとは思いますけど、ワクワクしてます?」
「大丈夫だ」
「えっと、その顔……凄く嫌な予感がしますよ!?」
ラーナの言葉には構わず、俺はズイっと男たちの前に出る。
「なんだこいつ? やる気か?」
バッドがナイフを俺に向けてきた。
「素人がナイフなんか持つな」
俺はスッとバッドの間合いに入る。
バッドは間合いに入られたことにすら気付いていない。やはりクソ素人か。
パンっとバッドの手を払う。
簡単にナイフが地面に落ちた。
そもそもさしたる殺気も感じられない。そんな覚悟でナイフなんか向けてくるんじゃない。
「わっ! こ、このやろう!」
俺が想定外の動きをしたことに驚きを隠せない男たち。
「くそっ、いかがわしいポーションを俺の町で売るんじゃねぇ……ムグっ!?」
「それは飲んでみないとわからんだろ?
―――――――――ほれ!」
俺はポーションをバッドの口にすぼっと入れた。
「てめっ、なにしやが……ムグッ! ゴクゴクっ!!」
「とにかく飲め! だまって飲め!」
「うわぁあ、ボスがぁああ! なんなんだよこいつ!」
「おい、おまえたちもだぞ?」
「ひぃいい、目が座ってやがる!」
俺はポーションを次のターゲットの口に突っ込む。
「よし飲め。効けば料金はもらうからな。っていうか効果はあるんだよ! さあ飲め!」
「「「ガボっ……ゴクゴクぅ!!」」」
よし、これでチンピラたちは全員ポーションを飲んだな。
「うわぁクレイさん、容赦なく瓶をズボズボ突っ込みますね……」
「だって、飲ませてみろと言ったのはこいつらだろ? ワクっ」
「まあそうですけど……もぅ語尾にワクついちゃってますよ」
そりゃそうだ。
俺のポーションを飲んだからには―――
「結果を確認せねばならんからなぁあああ~~グフフフ!!」




