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第17話 今日はなにしよう、ポーションを作るの一択だな

「おはようございますクレイさん」

「おはようございますご主人様」


「ああ、おはようラーナ、リタ」


 フロンドにきて、初めての朝だ。

 昨日、というか起きる直前まで色々イベント盛りだくさんだったから、すがすがしい朝とは言い難いが。


「う~~ん、なんか微妙にモヤが出てますね。体も少しけだるい感じです」


 窓を開けたラーナが、少し眉をしかめる。ラーナの言うモヤとは瘴気だ。

 たいした量ではないが、ずっとここに暮らすとなるとなにか対策をしないといけないな。


 俺が出来る対策といえば、ひとつしかないんだが。


「さて、まずは腹ごしらえだな」

「はいです。ご主人様!」


 朝食はリタが俺の持っていた携帯食を多少アレンジして出してくれた。

 焼き目がついて、香辛料が入っている。


「むっ……これがあのクソ不味い携帯食か……」


 超絶美味いというわけでもないが、全然食べられるな。

 元々メイド業もしてたのだろうが、そもそもリタには料理の才能もあるらしい。


「凄いぞ、リタ」

「えへへへ~~です」


 少し照れ気味に微笑むリタ。俺のポーションを飲んで1日たったが実体化の効果が続いている。

 永久には無理だろうが、定期的に飲めばより実体化は進むだろう。


「でも、キッチンの修繕が一部しかできてないのでこれぐらいしかできなかったです」

「全然すごいよ~~リタちゃんって凄いんだね~~」


 うむ、これで料理の心配はしなくても良さそうだな。

 食べ終わった俺が皿をキッチンに持っていこうと立ち上がると、なにかに引っ張られた。


 ラーナとリタだ。


 まるでご褒美をねだるかのような顔でこちらをジッと見てくる。


「クレイさん~今日の分~~」

「欲しいです、ご主人様」


 魔力ポーションと物質化ポーションを2人に渡す。


「ぷはぁ~~朝一で頭すっきりぃ最高ぅ! もうこれないと生きていけないですぅ~~」

「はいです! ご主人様を感じるです!」


 そうか、まあ喜んでくれてるならなによりだ。



「さて、今日の予定だが―――」


「お買い物ですよね!!」

「キッチンの修繕です!!」


 ラーナとリタの元気な声が重なった。


「なに言ってるんだ2人とも? まずはポーション研究部屋の修繕からだろ?」


「「ええぇえ……」」


「あ、まてよ素材を栽培するなら、さきに庭をいじったほうがいいのか……」


「「えええぇええ……」」


「いや、ここは心機一転綺麗な机も買いたいな。ポーションは清潔第一だし……むぅ、悩むな」



「全部まだですぅうう!」



「え? なに言ってるんだラーナ?」


「食材や日用品の買い出しと、キッチンの修繕が先です!」


 どういうこと? そんなものあとで良くないか?


「それは優先順位が低すぎると思うぞ? さすがに」


「なにをもってして、さすがにって言うんですか……まったくもう~~」


 う~む、そうなのか。まあ、しょうがない。


「じゃあ、ラーナは買い出し。んでリタはキッチンの修繕だな。では解散!」


 そう言うと、リタはウキウキしながらハンマー片手にキッチンの方に向かっていった。


 うんうん、満面の笑みでよし。やはり好きな事が出来るってのはいいことだ。



 さ~~て、俺もやるかぁ!



 とりあえず作業はどこでもできるっちゃできる。リビングでやるか。

 まずはあの瘴気に効くポーションだな。


 ムフフ~~お楽しみ時間開始だぜ。


 瘴気に有効となると、解毒効果系の薬草がメインだな。それから浄化効果のある聖水は必須だろう。

 取り敢えずは手持ちの素材を組み合わせてっと。聖水は以前ラーナがダダ洩れさせた分を取ってあるからこれを使おう。


 俺はポーション生成スキルで、どんどん試作品を作っていく。


 いや、やっぱ気兼ねなしにポーション作りまくれるのはいいよな。

 王城でもけっこう好き勝手はしたが、食事の時間やら入浴時間に訓練やらと意外に拘束されることが多かった。


 んん?


「どうしたラーナ? そんなところに突っ立って?」


「だって、はじめての町ですよぉ! まだ慣れないっていうか……ちょっと怖いっていうか……それにクレイさんと一緒にお買い物できると思ってたのに……」


 なるほど、そういうことか。

 ラーナは最近襲われたし不安もあるのだろう。


「――――――わかった。じゃあ、一緒に行くか」


「キャッ、クレイさんってやっぱり優しいですぅ!」


「このポーション作ってからな」


「やっぱり、ポーション狂いの変な人ですぅう……」


 感情の起伏が激しいやつだな。


「まあ、時間はあるんだ。のんびりいこうぜ」


 そう、もう自由に好きな事ができるんだ。時間も自由に使えばいい。

 キッチンからはリタのハンマーをふるう音が聞こえてくる。


 少し手持無沙汰なかんじで。俺の方を見ているラーナ。


「あ、そうだ。ラーナにも仕事があるぞ」

「え、本当ですか! やった、聖水だしますか?」


「いや―――これさっき作ったポーションだ。ちょっと飲んでくれ」


 俺はポーションを30本ほどラーナの前に並べた。


「クレイさん、ちょっとの意味わかってますか!?」


「え? 足りないのか?」

「いえ……一瞬喜んだ私がバカでした。でも……なんだかじゅるり……」


 良く分からんが、よだれが垂れてるぞ。

 体が小瓶を見ただけで、条件反射のごとくじゅるりしはじめたのかもしれん。


「ラーナ、今朝けだるい感が若干するって言ってただろ?」


「ああ、たしかにしてました。今は大分ましですけど」


 それは恐らく瘴気の影響だ。

 人は瘴気を浴びると身体機能が低下して、様々な病気を発症しやすくなる。


 もちろん、今朝のような薄い瘴気だと一時的なちょっとした変化ぐらいしかないだろうが。

 だが、何年も住んでいるとそのちょっとした変化が蓄積してくるのだ。


 けだるさも増すだろうし、体調も崩しがちになる。



「ってことで瘴気用のポーションをつくってみた。

 ――――――【ポーション(瘴気浄化)《ダークミストクレンジング》】」



「す、凄いです。クレイさんに作れないものはないんですか?」


「いや、俺だって神じゃないからな。失敗はしょっちゅうするよ。だからこそホイホイ俺の言う事聞いてくれる実験体……じゃない優しい協力者であるラーナがいてくれて助かるよ」


「聞き捨てならない言葉が漏れかけてましたけど……と、とにかく飲んでみますね。ゴクゴク~~あ、美味しいっ!」


 ラーナは快くポーションを飲んでくれた。ええ子や。

 しかも立て続けに30本。


「ぷはっ……美味しかったぁ~~わぁ~なんだかけだるさが消えました!」


 よし効果はあるな。


 あとでリタにも飲ませておくかな。

 実体化していることで、内臓機能も動き出したようだし。より人間に近づいているのかもしれん。


「ところでクレイさん。今後の生活費についてですが、私リタちゃんにお願いして治療スペースを作ってもらって治療院を開こうかなと」



 え……マジで。



 あのクソ遅い回復魔法でってことか……。


 いや、はなから否定は良くないな。

 おじいちゃんおばあちゃんの年配層なんかには、長話ができて意外にうけるのかもしれんし。


 ぶちゃけラーナは聖水出せるから、それを売ればいいかもしれんのだが。

 高品質すぎる聖水が出回ると例の黒服たちが再び来るかもしれんし、あまり聖水で目立たない方がいいだろう。


「そうか、まあそれはおいおい考えるか」


「ですね。まずはキッチンやリビングなどの修繕が先ですから! でも当面のお金をなんとかしないと」

「それなら俺の手持ちがまだ多少あるぞ」

「ありがたいですが、それはいざという時にとっておいた方がいいかもですよ。ちなみにクレイさんはなにかお仕事する予定はあるんですか?」


「仕事はしないぞ」


「即答でニート宣言したぁ!?」


 だって好きな事だけして生きると決めたからな。


「いや、稼がないというわけじゃない。ポーションでも売ろうかなと」


「あ、それいいかもです! クレイさんのポーションは凄いですから!」


 ラーナの言う通り生活費は必要だ。俺はもう王族でもないし、金が湯水のように湧き出るわけでもない。



「なら買物がてら、クレイさんのポーションを売りにいきませんか? ちょうど瘴気用のポーションもできたことですし」



 聖女はニッコリと微笑むのであった。



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