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第15話 転生王子、ふたたび女神によばれる

 辺境の町フロンドについた俺たち。

 マットイさんというクセのある領主代理と出会い、さらにはドワーフゴーストのリタが仲間になった。


 そしてこのデカい屋敷が俺たちの家となる。

 いったい1日のうちにどんだけイベントが起こるんだよ、と思ったりもしたが。


 まあ着いた日に家が決まったから良しとしよう。


 本格的な屋敷の掃除や修繕は明日以降にやるとして、まずは寝室だけ片付けて寝られるようにした。

 俺の部屋とラーナの部屋、リタの部屋だ。


 バフンと飛び乗ったベッドが俺の重みで少し揺れる。


 久しぶりのベッドだ……良いな。


 俺がベッドの上で大の字になっていると、キィイイという音と共にドアが開く。



「ふぇえ~~クレイさん~やっぱり一人じゃ怖いですぅう~~」



 聖女が半泣きで入ってきた。


「待て待てラーナ、おまえはもう16だろ?」

「そんなこと言ったって~~教会でも6人で寝てたしぃ~~1人とかむりぃいい~~」


 はぁ……


「だがな、俺は床では寝ないぞ。男と同じベッドだぞ? そっちのほうが怖いんじゃないのか?」

「ええ? クレイさんが怖い? イケメンだけど女子には奥手な感じがプンプンしてるから大丈夫ですぅう~~」


 こいつめ……警戒心無さすぎだぞ。今後の為にも襲ってやろうか。


「だからお願いですぅう~~今日だけ~~今日だけだからぁ~~」


 まったく……


「しょうがない。ここに入れ」

「やったぁ~~」


 パーッと花が咲いたかのように笑顔になるラーナ。

 俺が持ち上げた毛布の中にモゾモゾ入っていく。


 まあこの子は賊に襲われて死ぬほど怖い目に合ってるからな。一人は心細いか。


 さあ、もう寝るぞ。



 ――――――キィイイ



 おい、またドアが開いたんだが。


「ご、ご主人様ぁああ~~」


 今度はリタか?


「こ、怖いです。あたしお化け苦手です!」


 いや、おまえはそもそもゴーストなんだけど……


「うぅうう……ダメ……ですか? ラーナはいいけどリタはダメです?」


 両指をツンツンさせて、頬をすこしばかり膨らませるリタ。

 ぬぅうう……意外とあざといではないか、こやつ。


「わかった……今日だけだぞ」

「やたです! はいです!」


 ラーナの反対側にモゾモゾ入ってくるロリっ子メイド。

 布団から小さな顔をぴょこっと出して、目を細めて安心しきった表情になった。


 リタはずっと一人でこの屋敷にいて、不安だったろうからな。


 布団の中で俺の手を握ってくる2人の少女。



 俺は2人の手をそっと握り返してやった。




 ◇◇◇




 ん? 朝か……??


 俺が目を開けると知らない天井だった。


 いや、この屋敷にきた初日だからそりゃそうか。

 にしてもこんなだったかなぁ?



 ――――――ズザァアアアア



 なんかきた!?



「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃい!!」


 うむ、凄まじく見覚えのある土下座だな。


「もしかして女神さまか?」

「はい、クレイさん! ご無沙汰しております!」


「てことはここは天界か」

「はいぃいい! そうなんです! 失礼は承知のうえでお呼びしました!」


 スライディング土下座状態から、顔だけあげる女神さま。

 綺麗なお顔に赤い斜線がたくさん入っている。どんだけガチスライディングしてんだ。


「魔力つけ忘れてました~~すいませんでした~~!」


 え? そのために俺を呼んだのか?


「今度こそしっかりつけさせて頂きます! チート魔力!」


 なぜいまさら? 俺は転生して19年も経ってるんだ。


「女神さま、本当にそのために俺を呼んだんですか?」

「ギクっ……も、モチロンデスヨ」


 おい、ギクって言っちゃってるぞ。


「まあそこは後で聞くとして、まずはこれを飲みましょうか」


 俺はポーチからポーションを出して女神さまに渡した。


「ゴクゴクゴク~~ぷはぁ~~美味しい! これ一回飲んでみたかったんだぁ~~」

「そりゃよかった。顔も元通りですね」


「ふぁ!? す、凄い! やはりクレイさんのポーションですね!!」


 うむ、これはあなたが与えてくれたスキルで作ったんだけどな……まあいいか。素材や配合は俺がやってるしな。


「で、本当の目的はなんです? さっきから俺のポーションのことも随分と詳しいようだし」


「はい、クレイさんのことはしょっちゅう見てますよ! 朝起きてから夜寝るまでとか!」


 おい、それはもはやストーカー行為だぞ……


「あ、寝たあとも見ることあります! 寝顔がけっこう好きで!」


 やめてくれ、そんな追加情報はいらん。


「さすがに入浴とかトイレは見てませんよね?」

「ギクっ……も、モチロンデスヨ~~」


 うわぁ……見てるなこいつ。


「と、ところで……あの、そのぅ……」


 とたんに歯切れが悪くなる女神さま。


「そうでした、俺を呼んだ本当の目的ですよね」

「は、はい……実はクレイさんにはポーションを作って頂きたくて」


「ポーション?」

「はい、私の直属の上司である上位神さまがいらしゃって。お仕事のやり取りをよくするのですが……そのお耳が遠くてですね、意思疎通を図るのがちょっと難しくて……そんな時にいつものクレイさんウオッチしてたら、耳の良くなるポーションを作っていて」


 クレイさんウオッチだと……なんだその寒気のするゲームは。


「えっと、神って耳とか悪くなるんですかね?」

「いえ、加齢とかは関係ないと思うんですけど、なんか1000年前に音の邪神と戦かったらしくて、たぶんそれが原因かなぁと」


 音の邪神かぁ。良く分からんけど、聞くからに音攻撃しまくりそうなやつだな。


「でも神同士なら念話とか、心に入るとかできないですかねぇ」


「えええぇ! やですよ! あんなじじいと精神通わせるとか!!」


 激しく拒否る女神さま。じじいって……


「あのアバウトじじい! なに言っても、ホホホしか言わないんですぅ! たまにくる指示もホホホなんです! 意味不明ですよね~~もう嫌なんです! 私、ストレス溜まりまくりなんです!!」


 半泣きの女神さま。まあよほど辛いんだろうな。


「うわぁ~ん、あのセクハラじじいカタカナしかしゃべんないよぉ~ホしか言わないよぉ~~~あと、どさくさに紛れてお尻さわってくるしぃい」


 上位神様の名称がどんどん変わっていくじゃないか。

 とにかく、上司とうまくいっていないようだ。



「クレイさん、お願いです! あの耳が良くなるポーション私にも作ってくださいぃいい!」



「ちょっと待ってください。元はといえばあのスキルは、女神さまが俺に与えてくれたものでしょう?」

「グスっ……あい、そうでしゅ」


「だったら、女神さまもスキル使えるでしょ?」

「そ、そうでしゅけど……」


 仮にも女神だぞ。下界を管理する人物が、安易に下界の人間を頼るのはどうかと思う。

 それにスキルは使えるのだ。やれることをやらんのはダメだ。


「じゃあ、やってみましょうか」


「はい……」


 女神さまはポーション生成スキルでポーションを作り出した。


「ほら、やればできるじゃないですか」

「ほ、本当だ……」


 ちょっと飲んでみる。


「うわぁ……くっそマズ……」


「ウブっ……ですよねぇ~~~」


「あとこれ、なんの効力もないですね……」


「ええぇ! そうなんですか、クレイさん!」


 この女神、スキルは使えてもポーション作成センスがゼロやん。


「やっぱりクレイさんが作ってください~~グスン」


 ふぅ……まあ俺が作ってもいいけど。


 それだとこの女神がまったく成長しない。


 事情はわかるがこんな理由でポンポン呼び出されたら、たまったもんじゃないぞ。

 仮にも女神という人を超越した存在なんだから。


 ってことで。



「―――よし! まずは素材さがしにいくぞ!」



「へぇ? クレイさん、言ってる意味が分からないですけど?」


「グダグダ口答えしない! 返事は!!」


「は、はぃいいい!!」



 こうして女神とのポーション作りが始まった。


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