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第11話 さあポーション作りの時間です、ワクワク

 〖ぽ、ポーション? よくわからないです??〗

「リタちゃん、クレイさんのポーションは凄いんですよ~」

 〖そ、そうなのです?〗

「クレイさんはイケメンだし王子だしちょっとアレなところはあるけど、優しいんですよ~」


 〖お、王子なのです!?〗

「そう、え~~っと。第6王子?第8?いや17だったかな? とにかく王子ですよ~~」


 あんだけガクブルしてたのに、もうリタと友達みたいになってるな。これがラーナの特技なのかもしれん。


 ちなみに俺は17人も兄弟いないからな。


 まあそれはどうでもいい。今はポーション作りの時間だ。


 さて、俺の手持ちにゴーストが物質化するポーションは無い。


「ってことで、まずは素材だな」


 俺は女神からもらったポーチを探りながら、中身を物色する。


 取り出したのは、

 ・俺の自家製ポーション水

 ・体力回復草


 これらはベースだな。

 ちなみに今回はラーナの聖水は使用しない。さすがにゴーストに聖水飲ませるのはマズいだろう。


 あとは最も重要な素材。リタを物質化するための素材が必要だ。


 なんとなくあたりはつけている。


 最も適しているのはコテイダケだ。

 キノコの一種で液体凝固を促進する効能がある。

 この世界の医療では、大量出血時に止血の補助材料として使われていたりもするんだが。


 ―――手元にないんだよな。


 俺のポーチには大量の素材が入っているが、コテイダケはけっこうレアアイテムであまり出回らない素材なのだ。


 ってなると手持ちで別のものを探すか……ゴソゴソ


 俺がポーチをあさっていると、急にかわいい小顔が俺を覗き込んできた。


「あれ? クレイさん今回は結構悩んでるみたいですけど?」


 ラーナか。


「そうだな……」

「クレイさんでも悩むんだぁ」


 いやいや、俺は常に悩んでいるぞ。特にポーション作りなんて仮説と検証の繰り返しだからな。

 まあ、それが未知のポーションを作りだす魅力のひとつなんだが。


 んん?


 ラーナの手にしているものって……


「おい! ラーナ、それどうしたんだ!」

「やん、そんな積極的に迫らないでくださいよぉ~~ちょっとドキドキしちゃうじゃないですか」


「いや、だからラーナの手に持っているものを見せてくれ」


「ふぇ? ただのキノコですよ? ほら、あそこにいっぱい生えてますよ。もしここに住むなら、お掃除しなきゃな~~って。プチプチって取ってたんです」


 生えていただと!?


 これはコテイダケだぞ!


 俺はラーナの指さす脱衣所にダッシュで行く。


「うおっ……マジで生えてる……」


 んんん! ちょっと待てよ!


「これは、イタケダケじゃないか!?」


 さらにゲンエンマッシュに、コピーキノコ……なんだこれは、レア素材のオンパレードじゃないか!


 この館は魔物大量発生(スタンピード)で魔物たちに蹂躙されたんだよな。

 ってことは、そのときに魔物にキノコ類の胞子が付着していたのかもしれん。


 と、とにかく……


「――――――これは宝の山だぞ!!」



 マジかマジかマジかマジかよぉおおお!!



「クレイさん」

「ま、まずはここにあるレア素材を全部採取して……」


「クレイさん!」

「い、いや。待てよ、このまま培養した方がさらに増やせるか……おぉ、おおお!」



「――――――クレイさぁああん! リタちゃんのことほったらかしがすぎますよ!」



 おっと、そうだった。


 思わぬ収穫にちょっと興奮してしまった。


「そ、そうだな。とにかくこれで素材は揃ったな」

「まったくもう……すぐに夢中になっちゃうんだから」


 ラーナが頬を膨らましつつ、やれやれとため息をつく。


 だって、ワクワクが止まらない時はどうしようもないんだもん。



「よし、さっき出した素材にコテイダケを加えてと……


 ―――【ポーション生成】!

 ――――――【ポーション(物質強化)《マテリアルアップグレード》】!」



 完成したポーションをリタの前に置く。


「ごくり……ちょっと美味しそうなにおいがしてますね、クレイさん」


 横から顔出すラーナさんや、ちょっとよだれが出てますよ。

 あとで君のポーションはあげるから、今は我慢しなさい。


「よし。リタ、そのポーションを飲んでみてくれ」


 だが、リタは置かれたポーションを前にジッとしている。


 なぜだ?


 〖飲めないです……〗


 だからなぜだ? 味はかなりのものになっているはずだぞ?


「苦くないぞ、リタ」


 俺にそう言われたリタはポーションを取ろうとするが、その手が透けてポーションを通過した。


「そうか……よく考えればそうだよな」


 そう、リタはポーションの瓶をさわれないのだ。

 さきほど持っていたハンマーは、おそらくリタ(ゴースト)の思念から生み出されたものなんだろう。一般的なゴーストでも鎌を武器として所持しているやつもいるしな。


 だが、瓶は触れないにしても中身の液体は物質強化の効能があるから、飲むことはできるはず。


 ならば……


「リタ、ちょっと口を開けてくれ」


 俺自身がポーションを持ってリタに飲ませる。

 とりあえず半分ほど。これで、どうだ?


「どうだリタ?」


 〖なんか、体が軽くなったみたいです……〗


「クレイさん、リタちゃんがちょっと薄くなったような気がします」


 う~~ん。これはどういうことだ。

 物質化の効果が出てないぞ。


 〖……やっぱりダメなのです。こんなゴーストの願いなんて誰も叶えられないのです〗


「リタちゃん! 諦めないで~~ゴクゴク」


「おい、ラーナなに飲んでるんだ!」


「だってぇえ~~クレイさんのポーションは凄いんですぅう! リタちゃんにもわかってもらうんですぅう! ぷはぁ~~美味しかった~」


 気持ちは嬉しいが、おまえが飲んでどうするんだよ。

 ていうか単に飲みたかっただけじゃないだろうな。


「あ、あれ? クレイさん……これ!?」


 ラーナの体がそして修道服が……



「―――キャァアアア! なんですかこれぇええ!!」



 透けてるじゃないか。


「そ、そうか!」


 物質に作用する効果は出ていたんだ。

 ただし、逆の効果だ。固定が弱まっている。


「なるほど、良くやったラーナ!」


 間違ってはいない。おそらくは素材配分の問題だ。


「なるほどじゃないですぅう! 乙女の悲鳴を放置とかあり得ないですよ~~」


「んん? ああ、それはポーション効果が切れたら元に戻るから大丈夫だぞ」


「そうじゃなくて! いまぁ!」


 あ、すまん。そうだよな。

 俺は頬を膨らましたラーナから目をそらした。


「できるだけ見ないようにするから。というかそんなことより配分の再計算を……」


「そんなことって、わぁ~~ん。この人ぉ~美少女になんの興味もないよぉ~~」


 ラーナがなんかわめいているが、それどころではない。

 素材の配分によって効果のほどが激変する。この匙加減もまたポーション作りの奥深さのひとつだ。

 やべぇ……脳内にワクワクが溢れてるじゃねぇか。


 これだからポーション作りはやめられないぜ。



「計算はこれでよし! ―――素材配分をかえるぞ!」



 〖な、なんで……〗


「どうした? ちょっと待ってろ。

 ―――体力回復草の効果が強すぎたんだ。今度こそはいけるぞ」


 〖だから、なんであたしのために〗


「好きだからに決まってんだろ。

 ―――さらにコテイダケの分量を少し増やしてと」


 〖良く分からない人なのです……〗


「わかるだろ。おまえだってハンマー片手に物作っている時はどうなんだ?」



 〖それは……夢中になるです……あっ!〗



「俺にとって今は最高の時間なんだよ。俺は残りの人生好きな事やって暮らすんだ」



 〖く、クレイさん……〗



「だからウダウダ言わずに待ってればいいんだよ。リタのための最高のポーションを作ってやる!」


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