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誉血啜りの瞳  作者: ミチバケ
新異暦795年:支流の章
20/22

第20話:漲る力

「もう魔力を送ってるよー」


 抱かれ姿のルルナウルルは、自分の胸を貫くような恰好ながら苦し気な様子もない。

 転移魔術の行使、それにより引き起こされる状態へ慣れているからだ。

 初体験の僕としては、少し気を抜くだけで目が回り、全身から力が抜けそうになっている。

 後ろから巨大な敵が押し迫っている凄まじい危機感が意識を奮い立たすだけで、状況が違えば嘔吐を繰り返しているだろう。

 拭えない嫌悪と不快感が何より勝り、魔力の変化へ対する実感はまだない。


「脂汗がすごいよー。顔も真っ青だよー」

「だろうね――うっぷ」

「ドベーって出しちゃってもいいよー。転移で飛ばしちゃうよー」

「それは、どうも」

「ほいっと、これぐらいでイイと思うんだよー」


 僕の状況を然して気にする風もなく、ルルナウルルは胸の穴から手を引き抜いた。

 それと同時に転移の穴が塞がり消滅する。

 体内の異物感も消え、ようやく息が整えられる。少しだけ気が晴れて、足運びも軽くなった。

 後ろからの威圧感は更に増し、触れる全てを巻き込み砕く激音が近付いている。到底安堵はしていられない。


「上手くいったんだよー?」


 ルルナウルルが興味深そうに僕の顔を見上げてきた。

 一瞥しただけで、青い瞳の奥に期待の色が灯って透ける。

 確かに、腹の奥深くで魔力の脈動が強くなるのを覚えた。鼓動とは違うエネルギーの奔流が、じわじわと湧き上がってくる。

 魔女と『瞳』、他者同士の魔力は融和しない。外から体内に魔力が齎された時、細胞や血管などあらゆる体組織がこれを受けて感応し、生成器官が体内魔力との違いを認識して弾いてしまうからだ。これは僕達の意思とは関係なく、魔女や『瞳』の生体反応として起こること。自力では制御できない。

 だからルルナウルルは転移魔術を使い、僕が持つ生成器官の中枢へと入り込み、直接魔力を注ぎ込む手段に出た。生成器官の中心は本来外部からの干渉が及ばない隔絶区。周囲の体組織が外魔力に感応しなければ、入り込んだ魔力を別物とは認識しない。流れきた魔力を巻き入れて循環経路に乗せ、固有魔力として体内へと巡らせる。生成器官の中枢から送られることで肉体は自己魔力であると理解し、僕はこれを自分の物として使うことができる。


「魔女殿の試みは成功したようだね。魔力の昂ぶりを感じる」


 速く雄々しい魔力の回転が、全身を駆け巡っていく感覚。それは一呼吸ごとに強まってきた。

 平時とは異なる凶暴な動力源を積み込んだような、馴染みのない万能感が神経を刺激する。

 血流の勢いが増し、疲労感が薄れ、視野と聴覚が広く鮮明になっていく。

 今まで得たことのない大量の魔力が、煮え滾る溶岩の如く猛り躍り、身体を内側から焼き焦がす錯覚が脳裏に過ぎった。

 いや、これはイメージじゃないのだろう。僕の肉体は、普段自分が内包する適量分の魔力にしか対応していない。いきなり多量の魔力を獲得したことで、許容量を超過した負荷が出始めているんだ。

 このままでは器としての体が耐えられなくなり、すぐにあちこち壊れて魔力が噴き出しかねない。


「悠長にしている時間はなさそうだ」

「私の与えた魔力なんだよー。傍に居れば少しだけ指向性干渉できると思うよー」

「お願い。右手への誘導を」

「りょーかいだよー」

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