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誉血啜りの瞳  作者: ミチバケ
新異暦795年:支流の章
16/22

第16話:魔女のタイプ

「貴女が此処に来たのは、これが現れることを予見して?」

「そうだよー。時期的にそろそろかと思って、様子だけ見に来たよー。たけど予想よりちょっと早く出てきちゃったよー」


 僕の問い掛けに対すルルナウルルは、出会った時から変わらず緊張感がない。

 彼女のなんとものんびりした雰囲気が、ことの重大さを薄めている気がする。

 僕に『穢土えどの支流』を探させたプリムラ様も、はりという物体が出現することを見越し、探索を命じていたのだろうか。

 ルルナウルルが現れたタイミングや、彼女の語った魔女は穢土を気にしているという言葉から考えて、その可能性は高い。

 支流が梁と化すことを僕に言わず、ただ支流だけを探させたのは何故だろう。支流が梁になるより早く探し出せと言えば、僕が焦り何処かで失敗したと思ったから?

 それともルルナウルルが言ったのと同じで、こうなるにはまだ猶予があると考えたから?

 僕が支流を見付け出し、そのことをプリムラ様へ報せに戻るぐらいまでは時間があると。

 そうだとしても不思議じゃない。不老のため寿命の制約を知らない魔女は、時間経過という概念自体からして人間よりだいぶ大雑把だ。彼女達の言う「少し」や「そろそろ」は、人間からすると40~50年ぐらいの間隔でズレ込んだりする。

 半世紀近くを読み違えることがあっても、正直なところ驚きはしない。

 魔女の血を受けて『瞳』になった僕自身、その時点から肉体の成長と老化は止まった。魔女と同様に寿命の枠組みから逸脱している。でも元々が有限の時を生きる人間だったから、魔女の時間的尺度だけでなく、人間の時間感覚も持っている。


「この梁について教えてもらえるかな?」

「いいよー。支流として噴き出してからしばらく時間が経つと、穢土は結晶化して梁を作るよー」

「この大きさは、支流が根こそぎ集まって変質した姿なのか」

「梁ができると今度はドドド~と飛び出して、空の彼方で分割されるよー」

「飛ぶだって?」

「幾つにも割れた梁の断片は別々の場所へ飛んで行って、まだ穢れていない大地へと落ちていくよー」

「まさか、そうして落ちた梁の一部が新しい『穢土の支流』に変わっていく?」

「そうだよー。こうやって穢土はあっちこっちに増えていっちゃうんだよー」

「だから梁が生まれる前に、魔女は対処をしようとするのか」

「うーん私はそうだけどー、実際に動く魔女はあんまりいないよー」

「穢土は厄介事の種だから、関わりたくない」

「だよー。穢土が増えても、自分には関係ないって考えてる魔女は、無視しちゃうよー」


 魔女の多くは世俗を離れ、他者と関わることなく暮らしているという。

 逆に人間となんらかの交流を持つ魔女は、人里と繋がる境界点に居を構えている。

 プリムラ様のように、趣味で人間の血液を欲しがる魔女などだ。

 完全に隠遁している魔女は、世の異変も知らぬ存ぜぬで通すのだろう。元より関わり合いがないのだから、どれだけ乱れようが知ったことではないと。

 対してプリムラ様タイプは、人々に大きな悪影響が広まると少なからず不利益を被る。だからこれに手を打って、被害に対策したいのか。


「梁のことを気にしているということは、貴女は人間の味方をしてくれる魔女なんだね」

「無視はしたくないよー」


 ルルナウルルは両腕を組み、うんうんと頷いている。

 彼女が人間とどういう関わり方をしているかはまだ分からない。けれど今まで見てきた性格的に、それなりの友好関係を築いているだろうと予想できた。

 言動には軽快に過ぎるきらいがあるものの、けして悪い魔女じゃない。僕の視点に限って言えば善良と呼んで差し支えない。

 彼女のような魔女と出会えたことは、今回の旅に於ける貴重且つ大きな実りだと思う。

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