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6 歪み

「昨日は酷い目にあった………」


下着購入で彩芽にもみくちゃにされてしまったその翌日。オレは今、その下着を履いて学校に登校してきている。一応スカート捲られても問題ないように下は体操ズボン履いてるんだけどな。それでも、女物の下着をオレが着けるってなると結構恥ずかしいものだ。


「おはよう蓮。昨日は大変だったな」


来たな裏切り者。

昨日彩芽に捕まったオレのこと見捨てやがって……。これは正義の鉄槌が必要だなぁ………?


「咲、何か言うことは?」


「ん? あーいや。あ、昨日お前が試着してた服、似合ってたぞ」


あれ? こいつ昨日途中で帰ってなかったか? なんでオレが服試着してた時のこと知ってんだ?

まさかこいつ……。


「おーおーそうかそうか。つまりお前は、昨日オレが彩芽の着せ替え人形にさせられてるのを隠れて見てたってことかな? ううん?」


「ま、待て待て!! 落ち着こう! 一旦、な? そりゃ、お前からしたら彩芽に女の子らしいところを見せつけんのはやだろうけどさ、でも考えてみろ? 彩芽以外に頼れる女がいるか? いないだろ。だからあれは仕方なかったんだ。悪いのは俺じゃない。全部性転換病のせいなんだ!!」


「クッソー!! その通りだよチクショー!! 全部性転換病のせいだ!! もうなんでこう何もかも上手くいかないんだよー!!」


「痛い痛い!! 蓮! お前ちょっと本気で殴りすぎだって。ばっ、やめろ!」


オレはポコスカと咲のことを殴り付ける。こうでもしないと昨日のことを思い出してしまって恥ずか死してしまう。


「三乃上君、ちょっと手伝ってくれないかな」


と、オレと咲が戯れていると、学級委員長である真風女 愛女(まじめ めめ)君が咲のことを呼んでいるではないか。ちなみにめちゃくちゃ乙女チックな名前をしているが、彼は一応男性である。


「ん、あー分かった。悪いな蓮、俺ちょっと用事あるから」


「帰ってきたら殴らせろ」


「いやさっきので満足しておいてくれ………」


そう言って咲はささっと教室から委員長と共に立ち去っていってしまった。何だ、つまらない奴。

オレは再び自席に戻り、机に突っ伏す。


…………暇だ。

思えばオレ、女になってからは基本咲とずっと行動を共にしてた気がする。もちろん、帰りには彩芽と翔太も加わるわけだが。


基本的にオレは女子のグループに混ざることはないし、男友達とも、咲がいない状態で話すことはない。

だから、咲がいないとオレは基本ぼっちで学校生活を送ることになる。


いつもは一瞬で終わるはずの休み時間が、今日はやけに長く感じられる。

昼休みっていうのもあるのかもしれないが、それを踏まえた上でも、何だか時間の経過が、一気に遅くなってしまったかのような、そんな感覚に陥ってしまう。


いやぁ、オレ、結構咲に助けられていたのかもしれないな。


うん。どうしよ。マジで暇だし寂しい。


「そうだ、2組に行こう」


2組なら、彩芽と翔太がいる。普段2組にわざわざ行くことはなかったが、彩芽と翔太とは滅茶苦茶仲がいい。突然オレが押しかけても、快く受け入れてくれるはずだ。


「よっしゃ、行くかー!」






♂♀♂♀♂♀♂♀






「なるほど、そんなに僕のことが好きだったのか。蓮は」


「おいやめろ、なんか言い方が気持ち悪いぞ」


2組に立ち寄ったオレは、女の子の集団に囲まれていてけしからん様子だった翔太を無理矢理引っこ抜いて、オレの暇潰し相手になってもらうことにした。ちなみに彩芽は翔太のことを囲んでいた女子グループとは別の女子のグループで楽しそうにしていたので、そっとしておいた。


「でも珍しいね。蓮が2組に来るなんて。まあ別に僕は蓮と咲がいつ来てくれても構わないけど。いやむしろ来てほしいかもしれないね。いっつも女子達に囲まれててさ、身動きが取れないんだ」


「それ嫌味か?」


「いんや。本心。好きでもない子に囲まれるって、あまりいいもんじゃないよ。ほんと」


翔太はやれやれといった手つきで、呆れた表情を作る。本当に疲れてそうだ。モテるやつならではの苦労っていうのがあるんだろうな。オレにはわからんが。


「あ、そういえば彩芽から聞いたよ。結局下着、見てもらったんだって?」


「うっ……まあ、偶然彩芽に見つかってさ。仕方なくっていうか…‥」


「別にいいじゃん。彩芽だよ? そんなに恥ずかしいことかな」


「いや、だって……さ………」


「だって?」


翔太は明らか、オレに圧力をかけるように、次の言葉を迫るように促してくる。オレはその威圧感に負け、ついつい口が滑ってしまう。


「オレ……彩芽のこと、好きだから」


オレの発言に、翔太は一瞬面食らったかのような顔をするが、すぐにいつも通りの意地汚い翔太に戻る。


「ふーん? いいこと聞いちゃったなぁー?」


ってしまった!? こいつそういや腹黒なんだった。やべぇ………。意図せずオレの弱みを握らせちまった……。いや、流石の翔太もオレが本気で嫌がるようなことはしてこないだろうけど、でもこいつに弱み握られるってそれだけで怖いんだよな‥。


「わ、悪いかよ……」


「ううん。全然。僕だって彩芽のこと好きだしね」


「あー友達として?」


「ううん。異性として」


今度はオレが面食らってしまう。こいつ今なんて言った? 彩芽のこと好き? 異性として? え、てことは………。


「ライバルじゃん……」


「そうなるね」


ウッソだろ。よりによって、こいつかぁ……。咲が彩芽に対して何とも思ってないのは知ってたけど、そういえば翔太が彩芽のことどう思ってるのかなんてちゃんと聞いたことがなかったな。


翔太に彩芽を取られるのも嫌だし、これから翔太とギスギスの関係になるのも嫌だ。けど、どうすればいいってんだ。


「蓮、悪いことは言わないからさ。彩芽のことは諦めた方がいいんじゃないかな。女の子の君じゃ、彩芽のこと幸せにはできないよ」


「翔太、彩芽のことは諦められない。でも別に、オレは、お前と決別したいわけでもないんだ」


「彩芽のことを諦めれば、僕とは決別しなくて済むよ」


「そうじゃない。そうじゃないんだ。翔太……」


「じゃあ君は、この貴重な1年間、彩芽を縛るつもりかな? 女の体だけど、恋人になってください。男として満足させられるのは1年後になりますって。そう言うつもりなの?」


「そ、れは………」


「話にならないね。君はさっさと彩芽のことを諦めて、新しい恋をするべきだと思うよ。せっかく女の子になったんだし、男でいい人を探すのもいいかもしれないね」


「待ってくれ! 翔太!」


翔太はまるで話すことはないと言わんばかりに、オレから離れていく。

なんで、こんなことに……。


オレは別に、翔太と喧嘩したかったわけじゃないのに。







♂♀♂♀♂♀♂♀







中々に、僕好みの展開になってきた。

彩芽のことが好きなのは、本当だ。実際、結婚するとしたら彩芽以外に考えられないって、そう思ってた。けど、蓮が彩芽のことが好きなのには気付いていたから、僕は手を引こうって、そう思ってたはずだった。


けど、蓮が女の子になった。

僕はね、蓮。確かに彩芽のことが好きだよ。ちょっと前までは、結婚するなら彩芽以外には考えられないって思ってたくらいには。


でも、蓮。君が女の子になってからは、少し違う。

僕の関心は、彩芽だけじゃなく、君にも向くようになった。


女の子になった、君にも、ね。


僕は、彩芽のことが好きだ。けれど同時に、蓮、君のこともどうしようもなく、彩芽と同じくらい好きになってしまったんだ。

今、僕の中で結婚してもいいかなって思える子は、彩芽と蓮だよ。


だからね、蓮。

まずは、君に失恋してもらおうと思う。君には、彩芽のことは諦めてもらう。

その上で、僕のことを好きになってほしい。


「ふぅ。蓮ってほんと、わかりやすいよね。からかいがいがある」


蓮は、彩芽のことが好きだ。でも、だからと言って、恋敵である僕のことが嫌いなわけじゃない。


『オレは、お前と決別したいわけでもないんだ』


あの言葉を聞いた時、僕の胸は高鳴ったよ。僕のこと、少なからず大切に思ってくれている節はあるんだって、そう思えたから。


今までは、4人で固まっている、あの時間、あの心地のいい関係性が好きだった。


けど、蓮が女の子になって、僕は、それじゃ満足できなくなってしまった。

手に入れたい。僕の欲望の赴くままに。全部。


だからごめんね、蓮。

君のことは大好きだけど、少しの間、君のことを苦しめてしまうかもしれない。

だけど最後は、絶対幸せにしてあげるから。


僕のこと好きになってよかったって、そう思えるように、ちゃんとやるから。


僕はバッドエンドは嫌いなんだ。

だから、安心して。

僕の手のひらの上で踊ってくれ。

とりあえず書きたいとこまで書いたんで、ちょっと更新緩めます。

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