3 学校登校with女子制服
オレは女子制服を身に纏い、自身の教室、2年1組へと向かう。ちなみにこの女子制服は学校側から貸し出されたもので、もしオレが男に戻った際には回収される仕組みとなっている。
まあ、もし万が一、オレの性別が女に固定されるような事態が起こった場合は、その限りではないらしい。まあ、一応金は払ってあるので、無償でもらえるってわけではないのだが。
ぶっちゃけ、緊張はしてる。クラスに馴染めるか馴染めないかで言われると、ちょっとな……。1組には咲がいるけど、当然オレには他の男友達だっているわけで。
正直、惚れられるかもとか、そんな心配はしてない。多分女子になってもオレの面影は残ってるだろうし、鏡見た限り、オレは自分のことを美少女だなどとは全く思わなかった。そう、だからそこに関しては心配する必要はない。
1番心配してるのは、やっぱり性別が変わったことでオレと関わることをやめたり、気を遣われるようになったりすることだ。
「はぁ……。なんか足元スースーするし、はぁ………。何でオレが性転換病にかかるんだよ。別にそういう趣味はねぇぞ……」
少し憂鬱な気分になりながらも、オレは1組の扉を開ける。
クラスメイトが、一斉にオレの方に注目する。うわ、何だこれきっつ………。
「あーと………。加羽留 蓮………です。性転換病にかかって女になっちゃいました。はい、えーと…あんま注目されるのも恥ずかしいんで…………えと、うん」
しどろもどろ気味になりながらも、オレは自分の席に着席する。
うわぁ………注目された。恥ずかしい。女子も男子も、オレにどう接すれば良いか分からずに目線をチラチラ向けてくるだけにとどめている。
うわ、無理だ。きっつ。
オレ、これからこの教室で過ごしていくのか? え? マジで?
つら……。
「おーす蓮! 本当に女子制服着てきてるんだな。スカート捲ってもいい?」
と、そんなオレの心情を知ってか知らずか、親友がオレの席までやってきて、気楽に話しかけてくる。以前と変わらない態度で、全くオレに気を遣う様子もなく。
「は!? ダメに決まってんだろ何言ってんだぶっ潰すぞ!!」
オレは咲の軽口に乗る。
そんな様子を見てか、一部の仲良くしていた男友達もまた、オレの周囲へとやってくる。
「お前、性転換病かかったってマジか! え、今女モンの下着つけてんの?」
「いやまだ買ってないわ」
「そういや昨日のアレ見た? 凄かったよなぁ……」
「あーアレな、見た見た」
「お前体育どうすんだよ」
「どうすんだろーな」
話していくうちに、いつのまにか普段全く接点のなかった男子までオレに話しかけてくるようになってきていた。アレ? もしかしてオレってば、超人気者? やだなぁ〜。オレってばこんなに男たぶらかしちゃって。こりゃ魔性の女だな。
オレは親友の咲の方を見る。咲は一瞬、オレと目があったが、何か逸らしてきた。いや何で?
普通にいつも通り接してくれてありがとうって、そう伝えようと思っただけなんだけど。まあいいや。
咲のおかげで、学校生活は問題なく送れそうだ。このまま1年間、何事もなく乗り切れればいいんだけどなぁ……。
♂♀♂♀♂♀♂♀
特に何の問題もなく学校は終わり、オレは咲と一緒に翔太と彩芽を待つことにした。
「あ、咲。今日はありがとな。お前のおかげで、学校何とかなりそうだわ」
「ん? まぁそりゃ、親友のお前のためだし。当たり前だろ」
「お礼にスカート捲らせてやろうか?」
「ブフォッ!! バカか!?」
「いや、お前が捲らせろって言ったんじゃん、ほら」
そう言ってオレは、スカートをたくし上げる。オレがスカートを持ち上げた途端、咲は自分の目を手で覆い隠し始める。
「そんなに見たくなかったのかよ。まあ、男のパンツなんて見たかねぇか」
親友を揶揄ってやろうと思ったのだが、それは無理な話だったらしい。
「ん、あぁ。そうだな。そういうの、あんまやめとけよ。お前、万が一それで男に襲われてみろ。もう二度と男に戻れなくなるぞ」
オレが男に襲われる?
あぁ、一応体は女だし、ありえないことじゃないのかもしれないが……。
「まあ基本大丈夫だろ。そんなに美少女ってわけでもねーし」
「おま……いや、それでも気をつけとけよ」
「ま、程々に気をつけることにするよ」
と、適当に話していると、どうやらオレらのもとに、彩芽と翔太がやってきたらしい。彩芽も翔太も2組だから、同時に終わったのだろう。だから一緒にいるのだろうけど。
こう見るとやっぱ2人って、お似合いって感じだよなぁ‥‥。いや、認めたくはないが、こうして見てみると、イケメンと美人(少なくともオレ目線はだが)が並んで立つと映えるものだ。
「お待たせ。ごめんね。彩芽のグループの女の子に、告られちゃってさ。断るので時間かかっちゃった」
「滅茶苦茶気まずかった。佳奈ってばいきなり翔太に告白し出すんだもん。びっくりよね」
「お前また告られてたのかよ。これで何回目だ」
「オレのカウントが間違ってなければ14回目だったはず……」
「いや、15回目だね」
マジかよ……。年間で7、8回は告られてるって計算だぞ……。マジでどうなってんだ。年中モテ期じゃねぇか。
「今日は蓮の下着を見に行こうって思ってたのに………」
彩芽はポツリと、心底残念そうにそう呟く。
ん? オレの下着?
「え、何でオレの下着を?」
「だって蓮、男物の下着しか持ってないでしょ。でも蓮って多分、下着選びとか下手くそそうだし。だから私が一緒に見に行ってあげようかなって」
まあ確かに。女になった以上、下着もそれに合わせる必要があるだろう。かといって、元々男だったオレが、自分の体に合う適切な下着を選べるとも限らない。だから、彩芽の提案はありがたいといえばありがたいのだが。
「いや、大丈夫。オレ自分で選べるから」
「本当に?」
「うん。マジ魔人よ。知り合いに伝手あるからさ」
彩芽は少し不服そうにしながらも、渋々納得してくれる。よかった。このままオレと彩芽が一緒に下着を買いに行っていれば、とうとう彩芽はオレのことを男として意識しなくなるだろう。それは避けたい。できればこの1年間、できるだけ彩芽には女の子らしい自分を見せたくはない。
「僕らはこの会話には混ざれないね」
「お前も性転換病になっちまえばいいんだ。お、そしたら俺ハーレムじゃん」
と、オレと彩芽の会話を気まずそうに聞いていた2人がここで漸く口を開く。まあ、下着の話なんてされても困るよなそりゃ。てか、咲はしれっととんでもないこと言ってんな。
「それでハーレムになるなら、蓮が女の子になる前の私は逆ハーレムだったって言えるわね」
「彩芽の逆ハーレムになるのは嫌だなぁ……。じゃあ翔太が女になっても俺のはハーレムじゃないってことにしよう」
「僕も逆ハーの一員は嫌だね」
2人は彩芽の逆ハーレム要員にはなりたくはないらしい。オレは別に、彩芽の逆ハーレムになってもいいんだけどな。それで彩芽が満足するなら。って、ダメだろ。他の男が彩芽に手出すんだぞ? やっぱ無理だ。
「蓮はどう?」
「オレも、逆ハーってのはちょっと……うん」
「ふーん。残念」
残念、残念かぁ。
何気なくサラッと言ってるけど、実際彩芽はオレのこと特に意識してもいないんだろうな…。
「っと、僕、塾があるからもう行くね。ごめんね、待たせたのにさ」
「おう、爆発しとけキザ男」
塾か。偉いな。オレも勉強しないとだな。はぁ…、女になっても勉強しないといけないのは変わらないなぁ………。
「じゃ、私達も帰りましょうか」
「そうだな。ってことはあれ? 今俺ハーレムじゃん」
「気色悪いこというなバカ」
「咲のハーレムとか、どの男のハーレムよりもつまらなさそうで無理ね、本当に」
「し、辛辣ぅ……」
誤字報告を頂きました ハーレム要因→ハーレム要員
ハーレム要因だとハーレムの原因になっちゃいますね。報告をくださった方、ありがとうございます。