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14 暗躍


上手いこといった、かな。

咲の元を離れ、蓮と別れた後、僕は再び真風目 日向先輩と合流して、密会を行っていた。


「先輩、ありがとうございます。協力してくれて」


「いえいえそれほどでも〜! 私だって蓮君には()()()()()()幸せになって欲しいからね」


僕は、蓮を僕の物にするために、外堀を埋めるための計画を進めていた。

まだ、準備段階だったのだ。僕が完全に蓮を囲い込むまでには、もっと時間がかかるはずだった。……本来なら、ね。


まさか、蓮の方から擬似恋人の提案をされるとは思ってもいなかった。

まあ、そのおかげで、僕と蓮の恋人関係を周知することができたし、これで他の男へ牽制をかけることもできただろう。

咲に本当のことを伝えなかったのも、咲を牽制するためだしね。僕が蓮に魅了されてしまったのだから、咲だってそうならないとは限らないわけだし。


メリットばかりではないけどね。僕が牽制できてしまうということは、蓮に手出しする男が僕以外にいなくなってしまう。

つまり、蓮を女の子のままにできるのは、僕だけになってしまう。


別に、今恋人になれなくたっていいんだ。僕は。

ただ、リミットがあるから焦っているだけであって、例えば今蓮が他の男と付き合っていても、別に僕は構わない。勿論嫉妬はするけど、僕は最終的に蓮を隣に置くことができればそれで良いのだから。


「僕も蓮を幸せにしてあげたいと思ってます。けど、今の蓮は控えめに言っても美少女ですから。変な男に引っ掛けられても困りますし、本当に助かりました」


ちなみに、真風目 日向先輩には、僕と蓮の擬似恋人関係について話してある。

別に話しても問題ない人物だったからね。何せ、彼女は僕の協力者だし。


「うんうん。そうだよね〜。蓮君可愛いからね〜。変な男に引っ掛かっちゃったら可哀想だし、翔太君みたいなちゃんとした人が蓮君のこと好きでよかったよ〜」


それに、彼女は蓮が男に戻る手伝いをすることは絶対にない。

なんせ彼女は、”性転換病によって男から女になった者は、皆男の子と恋愛するべきだ“という価値観を持っているのだから。

男と恋愛することが1番の幸せだと信じて疑わない、究極の恋愛脳なのだ。


「カッコいい男の子が擬似とはいえ彼氏になってくれるなんて、蓮君は幸せものだな〜」


「カッコいいだなんて、照れますね。でも、残念ながら、蓮はまだ僕のこと、男として……彼氏として見てくれないみたいですけど……」


「まあまあ、そんなに落ち込まなくてもいいんじゃない? もしあれだったら、私から蓮君にお願いしてあげるから。なんたって私、蓮君になんでも言うことを聞かせる権利3回分持ってるからね〜」


「何ですかそれ?」


「蓮君と約束してたんだ。もし蓮君が男の子に惚れちゃったら、私の言うこと何でも3回聞くってね」


別に蓮は男の子に惚れてなどいないが……。

まあ、そうか。確かに、蓮は真風目 日向先輩が僕との恋人関係の真実を知っていることを知らない。

蓮から見た先輩は、僕と蓮が付き合っていると信じ込んでいる人に見えているのだろう。僕が牽制している関係上、蓮は先輩に本当のことを言うことができない。つまり、先輩の言う『男の子に惚れたら先輩の言うことを何でも3回聞く』という約束を果たす義務が生じてしまうわけか。


まあ、僕ならそんな約束、すぐにでも破ってしまうだろうけど。蓮は僕みたいな薄情な奴ではないからね。情のある奴なんだ。こんな腹黒な僕を、見捨てずに、それどころか全力で手を差し伸べてくれるような奴だから。本当に愛おしい。


「そうですね、それじゃ、どうしても蓮に言うことを聞いて欲しい時は、日向先輩を頼ることにします」


「おー、どんと頼ってよ。蓮君がはやく翔太君の魅力に気づいてくれるといいね。それじゃ、私、これから彼氏とデートだから。本当はもっと相談に乗ってあげたかったんだけど、私にとっては、彼が最優先だからさ」


「はい。デート、楽しんできてください。もし僕が蓮と本当の恋人になれた時は、ダブルデートでも」


「うん。それじゃ、その時を楽しみにしてるね〜!」


日向先輩は手を振りながら、僕の元から去っていく。


今のところは順調だ。順調に蓮を囲い込めている。

あとはじっくり蓮を落としていくだけだ。


『彩芽には、絶対に本当のことを言ってくれよな。お前のためでもあるんだから』


あの時、蓮はそう言っていたね。

けど、僕が彩芽に本当のことを言うと思う?


……言うわけないでしょ。

だって、蓮を落とす上で一番の障害は、彩芽なのだ。蓮は彩芽に惚れている。僕は蓮が他のやつに取られること自体には、そこまで危機感を覚えていない。けど、彩芽は女の子だ。蓮と彩芽が恋人になったところで、蓮は女の子という性で固定されることはない。


1番牽制すべき人物なんだ。本当のことを話すなんて、絶対にするもんか。

何としてでも、僕は蓮を手に入れる。


僕にはもう、蓮以外に何も見えない。





♂♀♂♀♂♀♂♀





きもいきもいきもい!!!!


何なんだあいつ!? 何が『もし僕が蓮と本当の恋人になれた時は、ダブルデートでも』だ!


いや、そりゃ恋人にでもなってみれば?って軽い気持ちで言った私の責任ではあるよ? あるけど、流石に言わせてほしい。

あれは気持ち悪い。

なんでもう我が物顔なの? 蓮は人間であって、入手することを目標とされるトロフィーなんかではないのに。


「にしても、私のせいでとんでもないことになってるなー」


私のクラスでは、あの御黒翔太に恋人ができたらしい、程度の噂しか広まっていないが、仮にも恋人関係なのだ。そのお相手が、加羽留 蓮という人物であると周知されるのに、そう時間はかからないだろう。

蓮は彩芽ちゃんとやらのことが好きらしい。けど、もしあの変態と交際しているという噂が広まってしまったら?


……間違いなく、彩芽ちゃんとやらは蓮に恋をすることはなくなるだろう。

仮に好きだったとしても、きっと遠慮してしまうし、そうなれば、恋心も冷めてしまうかもしれない。


蓮にとって悪いようにしか働いていない。

本当に私は大馬鹿者だ。


私のせいで、蓮にとって悪い方向に物事が働いてしまっているのならば、その責任は、私が取るべきだろう。


……それに、蓮は知ってくれていた。

私が元クラスメイトだということ。私が、性転換病であったということ。


私が、桃里アオイであるということ。


クラスの誰もが、私の外面しか見ていなかった。私の内面なんて、興味なかった。

だから、私が女に戻った時、誰1人として私と”あの“桃里アオイが同一人物だなんて思われなかったのだから。

勿論、私が男の時の私と結びつかないように全力で隠蔽工作をしたというのも影響しているだろうけど。


それでも、彼は、蓮は、”私“を見てくれたのだ。

私が桃里アオイであるということを、覚えてくれていた。


そんなに深い仲ではない。まだ、関わり始めて日も浅い。


けれど、蓮は、彼は、私にとっては立派な友達なのだ。


だから私は動く。友達のために。

友達に降り注ぐ悪意を、歪んだ好意を、振り払う。


でも、そのためには、私1人の力じゃ足りない。

相手はただの変態じゃない。計画性があるし、協力者もいる。


相手が2人ならいい。けど、あの変態のことだ。他に協力者を取り付けていてもおかしくはない。なら、こちらも協力者が必要だ。

蓮が不幸にならないために、蓮のために動ける人物が。


そんな人物がいるとすれば。


「彩芽ちゃんか咲君、か」


2人しかいない。


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