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88 閑話~第7防衛部隊と三人娘(前編)~

 それはクレハ解放戦の真っ最中に、第7防衛部隊が拠点としている町【エレフライン】にて起きた話である。


 第7防衛部隊の住処である豪邸、その4人部屋には三人の少女……新たに魔王討伐部隊として組み込まれ捕虜として連れて行かれた三人娘である。

 その少女達の目の前で、虎の獣人の男戦士が土下座をしており、彼女達は彼を宥めるのに必死だった。


 だが、これには理由があった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 時は遡り、討伐部隊の壊滅直後の話。

 三人の少女は、手錠を掛けられたままある場所を移動していた。


(結局、あの男に逆らえないまま…来宮さんを困らせた罰なのでしょうね)


 そんな事を心の中で嘆いていたのは、奥井(おくい) 瑠奈(るな)

 彼女は吾妻中学ではクラス委員長だった。

 しかし、それは表向きの話であり、実際は安川(やすかわ) (まがつ)がクラスを支配していた。

 無言かつ俯いたままの九条(くじょう) 柚子(ゆず)ともう一人の少女と共に、望まね形で安川のグループに組み込まれた。

 理由は、安川にとってはタイプの女だったから。

 それだけの理由で、彼女達は胡桃と七絵から無理やり引き剥がされた。

 逆らおうにも、安川が政治家の息子らしく、奴に逆らった者の末路を見てしまったが為に逆らえずに今に至ったのだ。


(ろくに訓練もしないまま、討伐部隊に派遣されるなんてね……。 安川を恨むわ……)


 瑠奈達が討伐部隊に組み込ませたのも、安川が宰相に進言した為だ。

 なまじ基本能力が高いから、すぐに戦力になるとまくし立てたのだ。

 訓練すらしないままでは魔族すら勝てないのに、能力が高いからいけると思っている安川はある意味お花畑思考なのだろう。


「ぐす……っ、ひっく……、うぅ……」


(春菜ちゃん……!?)


 突然、泣きじゃくる声がしたので、瑠奈は後ろを振り向くともう一人の少女、宿毛(すくも) 春菜(はるな)が涙を流して泣いていた。

 そして、よく見るとスカートの中から太腿を伝って液体が流れ落ちていた。

 捕虜にされた絶望感からのショックによる失禁だった。


「あ、あわわ……。 だ、大丈夫だから! 酷い事はしないから!」


 春菜の隣にいた魔族の少女が、慌てて彼女を宥める。


(……どういう事?)


 魔族の少女の発言に、瑠奈は疑問を抱いた。

 自分たちが捕虜として連れているにも関わらず、酷い事はしないからと言った。

 そうしているうちに、街の前にたどり着いた。


「副隊長、ひとまず【エレフライン】に着きました」


「では、まずガルタイトが彼女達に掛けた呪いを解呪してください」


(え……、呪い……!?)


 副隊長の少女からの号令で、三人の呪術師の少女達が瑠奈達の側につき、解呪のスキルを行使する。


(な、何あれ……!?)


 瑠奈が見たもの……それは彼女達の身体から出て来た赤いモヤモヤだった。

 その赤いモヤモヤは彼女達の身体から離れ切った直後に小さな爆発を起こした。


「う……っ!」


「あっ、ご、ごめんなさい……!」


 爆発音にびっくりするが、手錠が掛けられてるので耳を塞ぐことはできなかった。

 それに気づいた魔族の呪術師が彼女達に謝罪した。


「い、いえ……、耳は大丈夫です。 それより今のは…?」


「【時限(パイツァ)爆弾(ダスト)】の呪いです。 その呪いを安全に解呪できる場所に移動するにはその間だけ表向きに捕虜として連れて行くしかないんです」


「え、表向きに……捕虜……?」


「はい。 あ、解呪は終わってるので手錠を外しましょう。 着替えないといけないでしょうし詳しい話は街の中にある私たちの拠点でしましょう」


「あ、そ、そうですね……」


 手錠を外された瑠奈達三人は、副隊長と呼ばれた少女から着替えと言う単語を聞いた瞬間、顔を真っ赤にした。

 討伐部隊と防衛部隊が戦ってる真っ最中に、彼女達は恐怖で失禁したのだ。

 こうして街に着くまで、下着が濡れたままなのを気付かされて恥ずかしくなってしまったのだ。

 今は隊員が女性しかいないのが救いなのだろうけど……。

 副隊長の少女に先導されるように、足早に裏口のルートを使って拠点へと向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 魔族領内にある町の一つの【エレフライン】の町の一等地にある豪邸。

 ここが第7防衛部隊が拠点とする場所だ。

 副隊長の少女と共に、裏口から入った三人はまずお風呂に入り、その後新しい服に着替えた。

 前の服や下着は女性隊員が洗濯をしてくれるのだそうだ。

 その後に食事を摂り、話をするために大広間に移動する最中、疑問に思った春菜が副隊長の少女に話しかけた。


「あの……、ここって女性しかいないんですか?」


「いえ、男性もいますよ。 男性陣は真っ先にイリアゲート様に報告しに行っていますから、すぐ戻ってきますよ」


「イリアゲート様?」


「現在の魔王様の名前で、竜人族の方ですよ。 元々魔族といっても本来は私たち亜人の集まりですから」


「へぇ……」


「あ、ここが大広間です。 詳しい話などはここで、兄が帰ってきたら行いましょう」


「兄?」


「後に紹介しますが、兄は私と同じ虎の獣人で第7防衛部隊の隊長なんですよ。 さ、入りましょう」


 副隊長の少女に促されて、三人娘は大広間へと入っていった。


「ホントに広いですね……」


 瑠奈達が大広間に入った最初の感想がこの発言だった。


「ここは宴会とか行うために広めにとってあるんです。 と言ってもお茶会パーティなんですが……。 と、皆様はそこのソファーに座ってくださいね」


 そう言って、少女は三人娘に5人くらいが座れるソファーに座るようにお願いした。

 それに従うように三人娘は座っていく。

 その向かい側に少女が座る。

 丁度そのタイミングで……。


「おーい、帰ったぞー」


「あ、兄さんお帰りなさい」


「あの三人の少女は大丈夫か?」


「ええ、今は大丈夫ですよ」


 入ってきたのは、虎の獣人の青年。

 少女は彼に対して『兄さん』と言っていた。


(つまりこの人が隊長さんなんだろうな)


 瑠奈はそれを察し、襟を正した。


「あ、楽にしていいよ。 俺はザッケローニ・ギラン。 第7防衛部隊の隊長をしているんだ。ザックと気楽に呼んで欲しい」


「私はその妹のシンシア・ギランと申します。 第7防衛部隊の副隊長を務めております」


「私、奥井(おくい) 瑠奈(るな)と言います」


「えーっと……、九条(くじょう) 柚子(ゆず)です」


「あ、私は……、宿毛(すくも) 春菜(はるな)です」


「さて、君達に話す前に……」


 それぞれの自己紹介を終え、本題へと入っていこうとする前にザックは……。


「申し訳ない!! 君達に余計な恐怖を与えてしまった!!」


 突然、土下座をして謝罪し始めた。


「え、ええぇっ!?」


「ち、ちょ……、ザック隊長さん……!?」


「あ、あわわ……、か、顔を上げて……」


 瑠奈達三人娘は、突然の土下座に対し、慌ててしまっていた。

 何とか宥めようと必死になっている。

 そうして今に至るのであった……。


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