87 来栖孝之&如月光輝との対峙
爆発事件の現場である【ゼイドニウム採掘場】の複数ある入り口の中で煙が出続けている入り口から奥へ進んだ結果、あの二人……、来栖 貴之と如月 光輝に出会った。
どうも、あの報告にあった二人の影の正体はこいつらだったようだ。
「な、何でお前らが……ここに……!?」
「ここは機械技術国ゼイドラムが管理する採掘場なんだよ。 そこで爆発が起きたって報告が入って、さらに人影が二人と言う情報が入ってきて嫌な予感がしたから、同行を許可してもらったんだよ」
「どういう事だよ! ただここを住処にしようと…」
「聞いてなかったのかぇ? もう一度言うが、ここは我がゼイドラムの国家が管理しておる採掘場じゃ。 お主らの行動は『不法侵入』と『器物破損』じゃぞ?」
「そんなの関係ねぇよ!!」
シャルロット女王の話を如月が遮る。
あー、結局あいつらも都合が悪い部分は聞かないようにしてるわけか。
ガルタイト国しか見ていなかったツケがここで出てくるとはなぁ。
「いい加減にしなよ……」
「か、葛野……さん……?」
それを聞いてひなたが怒りのオーラを放出したまま仁王立ちで来栖と如月を睨みつける。
胡桃までそのオーラの怖さで震えているので抱きしめて落ち着かかせてやる。
「お前らにとっての都合の悪い部分を聞かなかった事にするのは今でも変わってなかったんだねぇ」
「う、うぐぐ……」
「ひえぇ……、ひなたちゃん……、すごいキレてる……」
「うん、二人称が『お前』と言ったのは二回目の追手の時以来だね……。 あの時のひなたお姉ちゃんもすごかったけど今回はそれの比じゃないね」
「ありゃあ完全に敵対の意思を持ったな。 まぁ、俺も同じ感情だが」
「我々からしたら、彼女のもう一つの顔を見てしまった感じがするのだが?」
「その通りだと思っていいです、クロウ中佐……」
「あはは……」
そう、久々にひなたの口から『お前』を聞くことになった俺達。
二回目の追手の時もそうだったが、これはひなたが相手に敵対の意思を示す形でそうしているのだ。
由奈が慌てふためき、アイリスは過去の追手の件を思い出している。
クロウ中佐とシャルロット女王は、ひなたのオーラに気圧されそうになっており、エミリーからは乾いた笑いが止まらないでいる。
そのひなたの威圧に、あの二人も屈しかけてるが……、それでも引き下がる相手じゃないだろう。
「こ、こうなったらお前らをここで消さないといけないな!」
「俺達も引き下がれない! 死んでもらうよ!!」
「結局、こうなるんだね」
「ああ、油断するなよ、エミリー」
結局、戦闘に入ることになった。
俺はエミリーに油断はしないように告げてから、戦闘に臨む。
開始と同時に来栖が火の魔法を放とうとしたが……。
「させねぇよ!!」
「ぐべぇっ!?」
そこに俺がジャンプしながらの回し蹴りで来栖の顔面を捉えた。
蹴られた来栖はその反動で吹き飛んでいき、壁に叩きつけられる。
「貴之……!? 佐々木……、お前は……っ!!」
「悪いけど、お前の相手は私だよ!」
「な、葛野……!? ぐあ……っ!!」
来栖が俺に蹴られて吹き飛んだのを見て如月が俺を睨むが、すでに接近してきたひなたに対処できずに腹を斬られる。
「妾もやろうぞ。 言葉で分からぬのなら、妾の裁きでその身をもって分からせてやろう」
シャルロット女王も雷の魔法【エレクトリッガー】を魔法の名前を言わぬまま放つ。
魔法精度が高いのか、二人を追尾し追い打ちをかけるように電撃を浴びせてくる。
「「ぐああぁぁぁぁっ!!」」
同時に浴びた二人が、電撃の痛みか悲鳴をあげる。
焦げた臭いを漂わせ横たわるが、力を振り絞って立ち上がる。
「くっ、こ、こんなに強いなんて……聞いてねぇ……」
「特に……佐々木が……、あの陰キャで無能がなんでここまで……」
「暁斗君は勇者の素質がない代わりに、この世界の全てのジョブの素質を持ってるんだよ。 大半のジョブを極めているからね。彼、強いよ」
「う、うそだ……、あの佐々木が……、あの陰キャが……そんなわけ……」
事実を受け入れられないという如月の顎に向け、俺は無言でアッパーを食らわせた。
クリーンヒットし、悲鳴を上げる暇もなく上方へ吹き飛ばされる如月。
その後、背中を打ち付けて気を失う。
「こ、光輝……!!」
如月に駆け寄る来栖。
その隙を逃さないとしてひなたが魔法を使った。
「【エアカッター】!!」
複数の風の刃が来栖を襲う。
「くっ、まだ死ねない……!!」
「あっ、それは……【テレポートストーン】!!」
風の刃がヒットする直前に来栖が如月の傍でアイリスが言っていた転移アイテム【テレポートストーン】を取り出し、それを上に掲げた。
すると光が発生し、二人の姿は消えた。
「逃げられたか……!」
クロウ中佐は、舌打ちをしながらこう言った。
「仕方がないじゃろう。 だが、妾はあの二人の顔を覚えた。 他国にも指名手配として掲示するように通信で伝えておくとしよう」
「すみません、お願いします」
シャルロット女王は二人の容姿を記憶していたようで魔法の力で写真化し指名手配のポスターをその場で作成した。
これを他国にも貼ってもらうようにするつもりのようだ。
これ以上、奴らを生かせておくと危険性が増してくる。
事実を認められない二人が、何をしでかしてくるかは分からないからだ。
「とにかく、煙もなくなった。 どうやらあの二人が原因だったようだ。 これで安心して採掘を再開できる。 君達には感謝している」
「いえ、逃げられたのは悔しいですが、そこはシャルロット女王の裁量に任せます」
「任せてくれ。 このポスターを量産し、他国に貼ってもらうように仕向けようぞ」
「はい、改めてお願いいたします」
「さて、戻ろうか。 作業員にもこの事を伝えないといけなし、君達の射撃練習もあるからな」
消化不良な結果になったが、女王の裁量に託した俺達はゼイドラムの首都【ゼットリム】へと戻る事にした。
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