82 西地区の門にて
「クレハ解放戦以来ですね、クロウ中佐」
「ああ、君たちも元気で何よりだ」
さらに2日経過したの朝、俺達は早速西地区の門に向かう。
そして、その西地区の門の前でクロウ中佐が待っていてくれていた。
「あれからクレハ共和国はどうなってます?」
「国民も正気に戻って、解放されたことを喜んでいたよ。 今は力を合わせて復興に全力を尽くしているところさ」
それを聞いて安心した。
昔のようにとは言わないが、国民がしっかり意識してクレハ共和国を復興させてほしい。
ゲスーのような国を売ってでも危険な思想を成そうとする輩だけは出てこないことを祈るばかりだ。
「そういえば、ゼイドラムはここから遠いと聞きましたが……」
「ああ、私は先に転移でここに来たが、もうすぐしたら乗り物が来るはずだ。 君たちはそれに乗ってもらうそうだ」
「確かに、私たちは一度もゼイドラムに行ってませんしね……」
由奈が納得した様子で言った。
「エミリーはどうなんだ?」
「ボクもゼイドラムがどんな国かを聞いたことがあるだけで行った事はないよ。 だから実際に行くのは楽しみなんだよ。 しかもあの馬車ではない乗り物で乗っていくんだから」
ああ、あの魔導馬車以外の乗り物か……。
この世界に来てからはガイアブルク城下町内の定期馬車、さっきの魔導馬車や召喚されたての時のアイリス所有の馬車しか乗ってなかったから楽しみでもあり不安もある。
機械技術国というくらいだから、俺達の世界で存在していた車とかあったりするのだろうか?
「どうやら来たようだ……む?」
「どうしました?」
「ああ、我が国の女王陛下が余計な仕込みをしてくれたみたいだ……。 はぁ……」
クロウ中佐がため息を吐く。
ゼイドラムの女王陛下が余計なことをやらかしたってことだろうが…どういう事だ?
「にぃ、何か見えた……」
胡桃が見えて来た影に指差しで示し、俺達はその影をじっくり見る。
そして、その影は次第に姿を露にする。
「ん……? あれはバスか……?」
最初に見えたのは中型バスのような形の車だった。
「あれはコミューターバスと言う本来は通勤用のバスを他国への観光用として改造された車種だ。 遠距離を走行するため、トイレも備わっている」
クロウ中佐が説明してくれたがまさかこの世界でバスを見ることになろうとは思わなかった。
この異世界においては、機械技術国ならではというべきなのか。
そしてその周囲の影もその姿を露呈する。
その姿に俺達は驚いてしまった……。
「え、な、何あれ……!?」
アイリスはその物体に対し、驚きと畏怖が混じったリアクションをした。
「な、何か穴が開いた長いパイプのようなものがこっちを見ているような……?」
クリスタが言う穴が開いた長いパイプみたいなものって……、砲身じゃないか!
まさか、あれは……!?
嫌な予感がし、その露になる物体を見続ける。
そして、完全に姿を見せたソレを見て、驚かずにはいられなかった。
何故ならアレは……。
「せ……」
「「「戦車だとぉっ!?」」」
戦車だった。
改造されたコミューターバスの周囲は何故か戦車があったのだ。
それによる驚きの余り、俺と由奈とひなたは見事にハモってしまった。
それを見たクロウ中佐が頭を抱える。
先ほどの言葉の意味はこの事を言っていたわけだ。
ああ、エミリーや胡桃も驚きのあまり固まってるよ……。
「はーっはははっ! クレハ解放戦の英雄パーティよ! 妾が迎えに来たぞー!!」
一台の戦車から現れたのは、小柄だが機能性を重視した赤いドレスを身にまとった女性だった。
髪は青のポニーテールで活発そうなイメージだが、喋り方が古風なのかハッキリしない感じだ。
クロウ中佐がそれを確認すると、即座に戦車に飛び乗り、その女性を片手で持ち上げ……投げ飛ばした!
「ふぎゃっ!?」
叩きつけられた女性は、涙目になって立ち上がる。
「な、何をするんじゃクロウよ!!」
「いい加減にしてくれ、姉よ! 客人が固まってるんだぞ!!」
「あ、姉って……?」
先に我に返った由奈がクロウ中佐に聞いた。
「ああ、済まない。 我が国の現女王陛下は……ご覧の通り私の姉なのだ……」
「「「ええっ!?」」」
またしても驚きの余り、ハモってしまった。
クロウ中佐の姉が女王だったとは思わなかったからな。
「妾は、シャルロット・ルキウス。 今は軍の中佐であるクロウは妾の弟で同じ王族なのだ」
「まぁ、そういう事だ。 だが、君たちはいつも通りに接して欲しい」
「は、はぁ……」
シャルロット女王は小柄な体でドヤ顔をしながらふんぞり返っている。
それを横目で呆れて見つつクロウ中佐はいつも通りで接して欲しいという。
クロウ中佐も同じ王族だとは思わなかったが、同じ姓を名乗ってるのならあり得た話だ。
「まぁ、とにかく君たちはバスに乗ってくれ。 後、酔いやすい者がいるなら薬も用意しているから言ってくれないか」
「あ、私です」
「あとはエミリーもか?」
「うん、重力魔法の掛かった魔導馬車ならいいんだけどね」
由奈が即座に名乗り出て、エミリーも俺の言葉で名乗り出た。
エミリーは重力魔法が掛かったあの魔導馬車なら大丈夫らしいが、バスだとどうしても不安が残る。
由奈も基本的に乗り物に弱い。
町巡りの時にも馬車では由奈を進行方向の席に座らせたほどだ。
とにかく、彼女達はクロウ中佐から差し出された酔い止め薬を飲んでいる。
酔い止め薬を飲み終え、俺達はバスに乗り込む。
クロウ中佐やシャルロット女王も一緒だ。
全員が乗ったのを確認してから、バスはゼイドラムに向けて出発した。
ちなみに女王が乗ってた戦車は別の人が乗って操縦している事が後に判明されたのは別の話……。
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