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77 閑話~その頃のガルタイト国内⑥~

 その頃のガルタイト国……。

 事あるごとに怒りや驚きを隠せない雰囲気だったが、今回はこれまでとは違い、かなり荒れた雰囲気を醸し出していた。


「何だと!? ゲスーが……死んだだと!?」


「はい。 我々がかつて無能と罵った男にゲスー殿は敗れ、戦死しました。 これにより、クレハ共和国はガイアブルクを中心とした連合軍側に戻されたそうです」」


「く、くそっ! あの男め……! どこまで我の邪魔をしてくるんだ!!」


 宰相からの報告を聞き、玉座の手すりを叩きつけるガルタイト国王のヘイト。

 その表情は今まで以上に憎しみに彩られていた。

 それを見た宰相も顔をしかめる。

 こんな状態の国王に報告をし続けたら彼の心が持たないだろう。

 だが、さらに厳しい情報が立て続けに入って来ているため、宰相の責務として報告をせざる負えないのだ。


「その男がクレハ共和国に攻め入っている隙に第三陣の追手部隊をガイアブルクに派遣しましたが、ものの見事に全滅したそうです」


「な、なんだとぉぉぉぉっ!!?」


「裏切った者たちや無能と罵った別の者たちの力がこちらの思った以上に強くなっておりました。 あの男と同じように」


「ぬ、ぬぐぐぐ……っ!!」


 怒りがさらに露になり、歯ぎしりをする。

 今のヘイトは、最早感情がコントロールできない状態になりつつある。

 大量のホムンクルスの兵士も数を減らしてしまい、今は暁斗やひなたが召喚された時期と比べたら20%くらいにまで減ってきている。


(まだ最悪な報告があるのだが……。 今の国王にするべきか……)


 宰相はさらなる最悪な報告をもう一つ持っている。

 だが、今のヘイトの感情を見て報告するのを躊躇ってしまった。

 この報告は、下手すれば感情の暴走によって自分自身も殺されかねないからだ。

 ヘイトは魔族殲滅主義を掲げている。

 それは、家族を殺された魔族への憎しみが突出していたからに他ならない。

 先代魔王からの謝罪も門前払いするほどに憎悪を募らせ続け、力をつけて来たはずの戦力が瞬く間に減っていたとあればもう感情は制御できないだろう。

 そんな国王にずっとついてきた宰相もここ最近、疲労感が拭えないのも理解はできる。


(だが、報告せねばなるまい……)


 やはり責務には逆らえないのか、覚悟を決めて報告をすることにした。


「それと、もう一つ報告をせねばならない事項がございます」


「……なんだ?」


「戦力を補充し、北部へと進路を変えて進軍した討伐部隊ですが、全滅しました」


「な、なんだと……!?」


「北部も魔族側の防衛部隊が待ち構えており、その者たちに返り討ちにされ勇者三人は捕虜にされました。 事実、捕虜にされた三人以外は全員死亡しました」


「お、おのれ……!!」


「さらに、今回の戦いでアン王女様も戦死されました」


「な、何……、アンが……、馬鹿な……っ!!」


 討伐部隊の全滅とアンの戦死。

 この報告を聞いたヘイトの顔が青ざめる。


「防衛部隊の隊長が剣をアン王女様の胸に突き刺したそうです。 それが心臓に届いておりました」


「う、あ……、あ、アンが……あ、あ……」


「国王様!?」


「うがああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 ヘイトの怒りが爆発し、膨大な魔力が放出された。

 その魔力放出による風圧に宰相や近くにいた兵士たちは吹き飛んだ。


「こ、国王様……、お気を確かに……!!」


 一人の兵士が止めようとするが、暴走した魔力のせいで近づくことができない。


「こ、こうなれば……、私が直々にあの無能共と魔族を滅ぼしてくれるわぁぁぁぁ!!」


「くっ、【スリープ】!!」


 宰相が睡眠魔法を掛けて、むりやり国王を眠らせた。

 糸が切れたように倒れる国王に兵士が駆け寄る。


「国王を部屋まで運んでおいてくれ……」


「は、はは……っ!!」


 眠るヘイト国王を兵士数人で運んでいく。

 王の間は荒れ、柱の所々にヒビが入った。

 それを見た宰相は、ため息交じりにこう独り言ちた。


「もう、この国も長くないのかも知れないな……」


 今の言葉が、宰相の本音であることは誰も知らないでいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「まさか……アンが……!」


 ガルタイト国の個室にて、ザナ王女がアン王女の戦死を聞き、ショックを受けていた。

 つい先ほど、第三陣の追手部隊が全滅したという報告を聞いたばかりなのだ。

 メイドを下がらせ、彼女は一人頭を抱えて嘆いていた。


「追手部隊に組み込める勇者たちも数が少ない……。 兵士も少なくなってる……。 どうすればいいの……!?」


 アンの戦死にショックを受けたザナ王女に今後の予定を組める精神的余裕はなくなっていた。

 いわば彼女自身も、色々と追い詰められていたのだ。


「アン……、あなたがいなくなって……私は……私は……」


 もうこの世にいないアン王女を想うあまり、彼女の涙は止まらなかった。

 一人になった個室で、彼女は声を殺して泣いていた。


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