70 解放戦終了後の話
『そっか、もうクレハ共和国は解放されたんだね』
「ああ、思った以上に早く終わったんだ。 エリス王女から褒賞は貰ったし後はそっちに帰るだけだ」
『あれ? 勝利の宴……って胡桃ちゃんがまだ大人数が集まる場所は苦手なんだっけ』
「そうだ。 エリス王女もゼイドラムのクロウ中佐も理解してくれたから先だって帰還することが出来た。 転移アイテムを貰ったから準備が終わり次第帰ってくるよ」
本日、改めてエリス王女がいるギルドハウスで褒賞など幾らかの報酬をもらった。
その後の宴は、胡桃の抱える事情の為、参加は見合わせた。
エリス王女もクロウ中佐もその辺りを理解してくれたのが救いか。
そして今、帰還のための準備の最中に俺はアイリスに連絡を取っていた。
「それでそっちはどうだ?」
『昨日の依頼遂行中に追手が来たけど、全滅させたよ。 どうもお兄ちゃんがガイアブルクにいない所を狙ってきたみたいだよ』
「追手の構成は?」
『お兄ちゃんのクラスメイト二人と後輩くん達のクラスメイト二人を加えた計100人だね。 後輩くん達も強くなってたからさほど苦戦しなかったみたい』
早速後輩のクラスメイトをよこして来たか。
俺がいない時期をどうやって知ったかは分からないが、あっさり全滅したのは相変わらずというわけか。
「なら追手が来たこと以外は平穏だったわけだな」
『そうだね……。 あ、一応イリアお姉ちゃんが再び来て後輩くん達と会談したよ。 その後クレハ共和国へ向かおうとしたみたいだけど……』
「もしかして、魔王討伐部隊が動いたのか?」
『うん。 今度は北部から攻めて来たらしいよ。 でも返り討ちにしたみたいだよ。 なんでも後輩くん達のクラスメイトの数人をそこに補充して挑んだけどだめだったという話だよ』
なんとまぁ……。
本当に学習しないな、ガルタイトは。
甘い訓練を受けただけで部隊に組み込んで進軍するなど……。
「それにしても何で進軍ルートを変えたんだ?」
『イリアお姉ちゃんの諜報部隊からの報告によると、どうも途中で勇者二人が脱退して行方をくらませたみたい。 それで予定外の編成と進軍ルート変更を強いられたみたい』
あいつらの中から二人が脱退して行方をくらませたか。
俺にとっては関係ない話だが、何らかの形で絡んでくることは間違いないだろう。
出来るだけ関わりあいたくはないんだけどな。
「じゃあそろそろひなた達も準備が終わるころだから、後は転移して家で合流してからにするよ」
『うん。 みやげ話待ってるねー』
そう言って、アイリスからの通信を終えた。
その直後にひなた達が荷物をまとめて持って出て来た。
「アイリスちゃんと連絡してたのかな?」
「ああ、色々と情報交換してな」
「どんな内容なの?」
「それは一度転移で家の前でアイリス達と合流してから話すよ。 その方がいいだろうし」
アイリスから貰った報告に関しては一旦、報酬として貰った転移アイテムで戻ってから話すつもりだったが。ひなたと由奈が何故かいい笑顔を俺に向けてこう言ってきた。
「先に簡単にその情報を教えて欲しいかな? その後でなら私達が確認の為にアイリスちゃんと情報交換できるし」
「構わないが……、どうしたんだ?」
「さっきまでエミリーさんとお話してたの。 で、暁斗くんに話があるみたいだから」
「エミリーが?」
「うん。 だから簡単でいいから先にアイリスちゃんから聞いた話を教えてくれる?」
「仕方がないな……」
どうもエミリーが俺に話をしたいことがあるみたいだ。
だから、ひなたと由奈、胡桃は転移で先に帰ろうとしたようだ。
その前にアイリスから聞いた情報を教えて欲しいらしいので、一応教える事にした。
「なるほどね。 早速後輩達を使ってきたわけかぁ」
「そして、勇者二人が脱走ね……。 嫌な予感がするね」
「ああ、だから早く帰って情報交換しかたったんだが……」
「分かったよ。 後は私達でやるから、暁斗くんはエミリーさんの話を聞いてあげてね」
「ああ」
「にぃ、あのおねぇちゃんの想い、うけとってあげてね」
「胡桃……? ああ、分かったよ」
「じゃあ、先に転移で帰ってるね」
「後輩達にもよろしく伝えてくれ。 あと、アイリスにも許可を取ってくれよ」
「うん」
由奈が頷いた瞬間にひなたが転移アイテムを使ってガイアブルクへ帰っていった。
「さて、エミリーは……と」
残った俺はエミリーが待ってる場所に向かう事にした。
多分、トイレ辺りだろうけど……。
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