63 指名依頼と胡桃の扱いについて
「そうか、とうとう来ましたか……」
「ええ、国王様ならびにエリス王女様からあなた方に指名依頼がありました。 他の周辺国も準備はできているとの事です」
後輩たちの冒険者デビューから数日後、俺達はギルドに呼び出された。
そして、ギルドに着くや否やサラトガさんから指名依頼が来たと言われた。
しかもパーティではなく、俺とひなた、そして由奈と個人での指名依頼と来た。
由奈にしてもソロでのランクが丁度Cに上がったばかりだ。
それでもランクと能力が噛み合ってないのだが。
おそらく、冒険者になってからまだ数日の後輩たちのフォローにアイリスとクリスタを残したいのだろう。
幸い、メイジフォックスウルフの家族を連れだせるのは救いなのかもしれない。
フェアリーキャットのモチやスライムの『ラム』、タラウアバニーの『ラビ』は胡桃を守るために置いておく。
「集合場所と時間は?」
「今日の昼頃に北地区の門で待機して欲しいという事です。 エリス王女とルーク王子が先導するそうですから」
時間帯は昼、そして集合場所は北地区の門か。
それにルーク王子は初めて会うな……。
エリス王女は二度会ってるけど。
「俺達は問題ないけど……、胡桃だよな…。 目下の問題は……」
「うん……。 あの子、暁斗君に懐いてるから……離れると不安定になりそう……。 なんだか昔の私に似ているから特に……」
「そこなんだよね。 支えなきゃいけない時期なのにどうすべきか……」
俺達が胡桃の件で悩んでいると…。
「その子も後方支援で連れて行ったらどうだろうか?」
横から声が聞こえ、振り向くと金髪のイケメンがそこにいた。
「えっと……?」
「ああ、これは失礼。 僕はルーク・ガイアブルク第一王子。 暁斗君たちの事はアイリスやエリス、父上から聞いてるよ」
ここでまさかのルーク王子と対面。
しかし、俺達の事はルーク王子にも伝わってたのか。
「こちらこそよろしくお願いします。 それで、胡桃を連れて行くというのは……?」
「あの子は何があったかは知らないけど、君たちにかなり依存しているからね。 慣れるまでは一緒に連れて行った方がいいということさ。 それと、彼女の【サモナー】の能力は初期でも戦力になれるよ。 後方から放てばだけど」
「え……? 胡桃ちゃん……、サモナーで何か特殊なのを持ってるんですか?」
「そう、最初からバハムートというドラゴン種やダイダリアサンという海の猛者を召喚できるみたいなんだ」
「「「ええええっ!?」」」
胡桃の隠された能力が明かされた瞬間、驚きの余り俺達は同時に声を出してしまった。
まさか、いきなりバハムートとか強力な存在を召喚できるとは……。
「それにサモナーの経験は戦闘でないと発揮されないからね。 後方限定で連れて行ってあげれたらということさ」
ルーク王子のいう事は理解できる。
だが、胡桃は冒険者になってまだ数日。
ランクだってFランクのままだ。 経験の浅い彼女を連れて行くのは躊躇ってしまう。
だからと言って、アイリス達に任せて行こうものなら……心が不安定になって探しに行くかもしれない。
「暁斗君、この際だし胡桃ちゃんも連れて行こう」
「そうするしかないか……」
ひなたに言われるがままに今回は仕方なく胡桃を連れていく事にした。
サラトガさんも彼女の性格を知っているのか、了承してくれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「と言うわけで、胡桃も連れて行く事にしたよ」
「戦場となるクレハ共和国に近いあの場所にだね? ルークお兄ちゃんもそう言ってるのなら仕方ないかもね。 サモナーの力も強力なものがあるなら実戦で慣らすしかないだろうし」
「何より、胡桃さんは暁斗様に特に慕っておられますからね。 特にあの方に過去に何があったかは知りませんが、かなり依存されてますし」
指名依頼の件をアイリスとクリスタに話すと、二人とも一応理解を示してくれた。
やはり二人とも胡桃の状況を不安視しているみたいだった。
「それで、胡桃ちゃんは?」
「ひなたと由奈が一緒になって準備中。 トイレも済ませるように言っておいた」
「なら、後は出発するだけですね。 アルト様達も準備万端ですから。 ……と、暁斗様にこれを」
クリスタがそう言って俺にペンダントを渡してきた。
「これは?」
「それは、ホムンクルスである私の血を魔法に変えて組み込んだペンダントです。 これを使えば、私の血に反応したホムンクルスがペンダントの方に寄ってきます」
言ってしまえば、ホムンクルス限定の挑発用の魔道具みたいなものか。
確かにクリスタもガルタイト国王のヘイトの血を使って作られたホムンクルスだ。
魔力と一緒に混ぜ込んだ血が、相手の血と強制的に共鳴させることで、標的をこちらに向けさせる仕組みなのだろう。
「ありがとう。 遠慮なく使わせてもらうよ」
「ええ、必ず生きて帰ってくださいね」
「お兄ちゃんの後輩たちは私たちに任せてね!」
丁度、ひなたと由奈が、胡桃を連れて出て来た。
トイレも済ませたようだ。
『それでは、我らも行こうか、主よ』
「ああ。 じゃあ、行ってくる」
「後輩たちは任せたよ、アイリスちゃん」
「なるべく早く終わらせて帰ってくるよ」
「んっ!」
「お気をつけて、みなさん」
「みんな、気を付けてねー」
アイリスとクリスタ、そして他のテイム魔物に見送られる形で、俺達は待ち合わせ場所の北地区の門へと向かって行った。
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