45 騎士団からの報告と決意
メイジフォックスウルフの家族と契約して3日が経過した。
念入りにギルドや国王に報告したおかげで、受け入れもスムーズだった。
というよりおチビーズ達は多くの人からも人気が高かった。
国王からは改良された箱庭アイテムを貰った。
契約した魔物は、自宅内では箱庭から解放させて遊ばせている。
改良型の箱庭アイテムは、魔物用食料も保管できるため、安心して餌あげできる。
余談だが、ギルドに来た際にサラトガさんが目を丸くして驚いていた。
前もって報告はしたが、実際に見ると驚いてしまうのだろう。
その要因となったガルタイト国の魔王討伐部隊の事も報告したら理解してくれた。
その後の手続きもスムーズで、おかげで9匹の魔物が認定契約魔物となった。
さて、今日はメイジフォックスウルフの家族の能力チェックをするために、俺達は幾つかの討伐依頼をこなしていた。
アルトとサクラは、口からブレスを吐くことも可能だし、尻尾から魔法を繰り出す事も出来るみたいだ。
さらに爪と牙による攻撃も強いので、流石はSランクの魔物といった所か。
おチビーズは、親であるアルトやサクラ程でないにしろ、経験を積めばかなり強くなるから、ある意味楽しみでもあった。
さて、討伐依頼を完了しアイリスの自宅に戻ろうとしていた時だった。
「ん? みんな急に道を開け始めた?」
何が起こったのか、突然住民達がそれぞれ端に寄って道を開け始めた。
「お兄ちゃん、ひなたお姉ちゃん。 私達も端に寄って道を開けるよ」
「どういう事? アイリスちゃん」
俺と同様に何が起こったのか分からない様子のひなたがアイリスに理由を尋ねた。
「ガイアブルク騎士団が帰還したからだよ。 一度各地区に帰還の挨拶の代わりとして、見て回ってから王城に帰還する形式なんだよ」
「それでか……」
「うん。 だから私達も早く端に寄ろう」
「分かった」
アイリスに促されるままに、俺とひなたは端に寄って道を開ける。
しかし、騎士団か。
まともな人達であってほしいが……。
「あの鎧を着た人達かな?」
「うん、そうだよ。 あれは兄のルーク第一王子直属の騎士団だね」
「兄貴がいたのか」
「あ、そっか。 言ってなかったね。 ルーク第一王子は私の腹違いの兄で、継承権を持っているんだよ」
「第一王子って事は第二王子もいるのか?」
「うん。 私とは双子の兄だからね。 今は姉のエリス王女直属の諜報部隊で活躍してるよ」
「双子の片割れだったのか、アイリスは」
「あっ、近づいて来る」
アイリスの家族について、話していると騎士団が段々と近づいて来る。
アイリスと話していたから気付かなかったが、住民達は騎士団に歓声を送っていたみたいだ。
(ん?)
騎士団が俺達に近づいていくにつれ、歩行スピードはゆっくりになり、俺達の目前で止まった。
「アイリス王女様、我が騎士団は南から帰還しました」
「私に様呼びはいいから。 それでわざわざ私達の前に止まったのは?」
「アイリス王女様と一緒におられるお二方に関わる報告があるので」
「俺達にですか?」
「ええ、アキト様とひなた様で間違いありませんね?」
「はい、そうですが……」
どうも騎士団長が俺達に優先的に報告するらしい。
南から帰還した騎士団が仕入れた情報って何だろうか?
「実は帰還途中に魔族の諜報部隊と一時合流しまして、その者の話によれば、次なる追手の部隊が明日には南地区の入り口近くに来る可能性があるとの事です」
「「なっ!?」」
「思ったより早いね。 ひょっとしてその追手部隊は、お父さんが言ってたあの人もいるの?」
「はい。 ユナという少女もその追手部隊に組み込まれておりました」
(由奈ちゃん……!)
「まいったね。 まだ【時限爆弾】の対策はできていないのに……」
その話を聞いた俺とひなたは震えていた。
予め、アイリスから聞かされたが、それが改めて知らされると胸が苦しくなる。
何せまだ例の【時限爆弾】への対策ができていない。
「では、我々からの報告は以上です。 これで失礼いたします」
「うん、お父さんやルークお兄ちゃんによろしくね」
「はっ!」
報告を終え、アイリスに敬礼した騎士団は、再び進み始めた。
騎士団の背中を見送って、その姿が見えなくなった所で、カバン状の箱庭アイテムが揺れる。
多分、アルトとサクラだろうから、すぐに箱庭から出しておく。
『主よ。 先程の話を箱庭越しに聞かせてもらったが、【時限爆弾】の対策とは?』
「ああ、俺達が一人の少女を助けようと思っているけど、どのタイミングで発動してしまうのかが分からないからな。 正確には、使用者の意思に反するというのが、どの辺りで判定されるか……だけど」
『主様が助けようとしたタイミングかも知れないし、そうでもない可能性もあるから……ですか?』
「ああ、そうだ」
そう、【時限爆弾】の厄介な点はその発動条件の曖昧な判定にある。
ガルタイトがどんなタイミングで発動させるように仕込んでいるのかが分からない以上、対策ができないのが現状なのだ。
『なら、我かサクラが適任だろう。 我らメイジフォックスウルフは、大人になればあらゆる呪いを発動させないようにする事が可能だからな』
「本当なの!?」
『ええ、私達の魔力で周囲に振り撒く事でそれを可能にしています。 もちろん、私達の判断で切り替えが可能です』
メイジフォックスウルフって、相当すごい存在だったのか。
なら、春日部さんを救い出すのも可能かも知れないな。
俺はひなたに頼み、保管していた春日部さんの写真をアルト達に見せた。
「なら、この写真の少女を助けたいんだ。 追手に対応している間に、彼女の保護を頼めるか?」
『無論だ。 我々は主と主の仲間のために動くのだから。 必ずその願いを叶えてみせよう』
『ええ、私もせめて彼女は救ってあげたいと思ってますわ』
アルトもそうだが、サクラも同じ思いだった。
こう言ってくれた以上、彼らの力を借りたい。
「じゃあ、その時は力を貸してくれ」
『承知』
『了承しましたわ、主様』
『にーちゃんのためにも俺達頑張るぜ!』
おチビーズも意気揚々と決意していた。
心強い仲間がいるというのはありがたいなと、改めて思った。
よし、必ず手を差しのべるからな、春日部さん。
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