44 メイジフォックスウルフとの契約
『なるほど、そんな事情があったのですね』
『しかし、ガルタイトが異世界の人間を勇者として召喚させるとか……、やはりあそこは正気ではなかったか』
メイジフォックスウルフの末っ子の治療を終えた後、俺達は彼らに自分の置かれている境遇を打ち明けた。
境遇を聞いた両親は、やはり怒りを隠せないでいた。
それだけガルタイト国は異常すぎるのだろう。
「そういえば、その子に呪いを掛けたのって誰なんだろうね」
アイリスが俺の膝上ですやすやと眠っている末っ子に目をやり、俺に尋ねた。
「誰かは分からないが……、この子がああなる前に戦った相手とかは覚えてます?」
『ああ、当初我々は魔族領の最南端に住んでいてな。 そこでゆっくり休んでいたが何人かの少年少女と王族らしき女に襲撃されてな。 その襲撃の際、王族の女が放った魔法と斬撃で末娘がやられたのだが……』
父親の言葉で、俺達はハッとなった。
そして、俺はひなたに目線を合わせる。
「なぁ、ひなた……。 もしかしてそいつは……」
「間違いない、アンと名乗った奴だよ。 当時、暁斗君に睡眠の呪いを掛けたあの女だよ」
やはりそうか。
あの王女がいるという事は……。
「じゃあ、何人かの少年少女というのは、私たちが討伐対象にしている勇者たちって事だね?」
アイリスも同じ考えだったのか、先にひなたに聞いてきた。
「ほぼそれで間違いないね。 ホントにやってくれたよ」
ひなたが悪態をつきながらアイリスの質問に肯定する。
魔族領に攻めていたのは聞いていたが、あいつらはその最中でこのメイジフォックスウルフの家族を襲撃していたのか。
その後で奴らが敗走したのが俺達にとっては幸いしたが。
「それで……、話は変わるけど、お兄ちゃんどうするの?」
「そうだなぁ。 この子が俺に懐いてるし、他の子もひなたやアイリスにも甘えてくるし」
そう、メイジフォックスウルフの末っ子はあの後俺に飛び込んできてすぐに顔を舐める程に懐かれた。
今は俺の膝上ですやすやと眠っている。
他の子供も、ひなたやアイリスに対しても慕っており同じく彼女たちの膝上で眠っている。
『先ほどの事情を聞いた後で少し鑑定させてもらったが、君は【テイマー】も極めてるね?』
「ええ、確かに極めてます」
『あの時のお礼の意味で、私たち家族とテイム契約しませんか?」
「え!?」
メイジフォックスウルフの両親からテイム契約が持ち上がったことに驚きを隠せなかった。
「あれ? テイマーのテイム契約って良くてAランクまでじゃ……?」
ひなたが疑問を口にした。
メイジフォックスウルフは【穏健型】であれどSランクの魔物だ。
基本Sランクの魔物は、プライドが高いのでテイムすることが不可能なはずだが……。
「お兄ちゃん、今の状態なら【特例契約】として可能になるよ」
「特例契約?」
「今回のように相手から契約を望んできた場合は、テイマーがそれを合意すれば、ランクに関係なくテイム契約が可能になるんだよ」
アイリスが言った事で、テイマーとしての特例ルールがあることを初めて知った。
今回、末っ子を治療したことでお礼という形で俺達と契約を望んでいるということだろう。
ならば【特例契約】が可能になる。
となれば、答えは決まっていた。
「わかりました。 契約しましょう。 この子も俺に懐いてるので無下にしたくはないですから」
すやすやと眠っている末っ子の身体を優しく撫でながらこう答えた。
『ありがとう。 では、始めようか』
そう言って、両親も俺の傍に寄ってくる。
それを確認した俺は、特例契約用のスキルを発動させる。
「【スペシャルコンタクト】」
すると淡い緑の光がメイジフォックスウルフの家族を包む。
そして、俺の頭上にメッセージが浮かび上がった。
【メイジフォックスウルフ6匹の特例契約が完了しました】
これで彼らとの契約が完了したわけだ。
『よし、これからは我々は主である君や仲間を守るために家族とともに尽力をつくそう。 よろしく頼む』
「こちらこそよろしくお願いします」
『あらあら、あなたは主様ですから、普通に話してくださって構いませんわ』
「っとそうか、じゃあよろしく頼むよ」
『ええ、こちらこそ』
契約の挨拶も済ませた俺は、アイリスに視線を向けてこう頼んだ。
「アイリス、一応ギルドと国王に報告してもらいたいんだが」
「うん、メイジフォックスウルフとの特例契約に成功したっていう報告だね。 了解したよー」
今日一番いい笑顔を浮かべながら、アイリスは水晶玉を出して報告を始めた。
「それじゃ、名前を決めないとね」
ひなたも寝ている二匹の子供を撫でながら俺に言った。
名前か……確かに必要だな。
決めた名前は、父親が「アルト」で母親は「サクラ」。
おチビーズは男の子二匹はそれぞれ「ハク」と「ダイ」。
女の子の方は「ナナ」で、末っ子は「リリ」に決まった。
さて、これからのやるべき事が増えたな。
そう考えながら、ガイアブルクへ向けて歩いて行った。
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