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42 メイジフォックスウルフとの遭遇

 エミリーからの伝言を聞いて、俺達は即座にギルドに向かう。

 そこにはサラトガさんが、待ってたかのような様子で俺達を迎えた。


「エミリーから伝言があったけど、Sランクの魔物が発見されたのは本当ですか?」


「はい。 帰って来た冒険者の話では、個体はメイジフォックスウルフだと判明したそうで」


「メイジフォックスウルフ?」


「はい、東地区の門より馬車で2時間程の場所にある【泉の森】の奥に6匹確認されました」


「アイリスは知ってるのか?」


 サラトガさんから聞いたメイジフォックスウルフ。

 未知の魔物なので、俺は一応、アイリスに聞いた。

 当のアイリスは、縦に首を振り、そのまま説明を始めた。


「メイジフォックスウルフと言えば、Sランクの魔物だけど【穏健型】の魔物だよ。 余程縄張りでひどい事しない限り人を襲うことはないタイプのやつだよ」


「どんな容姿なの?」


「尻尾がランドフォックスと同じくキツネのような尻尾が3本あって、顔とか身体は狼の体つきだね。 牙と爪が鋭いけど魔法も使えるといった万能タイプの魔物だよ」


 ひなたから聞かされた容姿もアイリスが答えてくれたが、『キツネ要素は尻尾だけじゃねぇか!』と突っ込みたかったが堪えた。

 それよりも、前回のバーサークバッファローといい今回といい、ガイアブルグ周辺にSランクの魔物が発見、出没しているのは何故だろうか。

 今回はおそらく……。


「アイリスちゃんが言うように今回の魔物は【穏健型】なので、改めて現場に赴いて遠くからその存在があるのかを確認してほしいのです」


「確認だけでいいのですか?」


「はい、刺激さえしなければ人を襲いませんので。 【鷹の目(ホークアイ)】というスキルなら可能です」


 【鷹の目(ホークアイ)】……、確か【シーフ】の素質を持つもののみが扱えるというスキルだったかな?

 あの時のリックさんも密かに使ってたことから、素質があればすぐに使えるみたいだ。

 とりあえず、試しに使うついでに引き受けたいところだが、リーダーはアイリスだ。

 彼女の判断に従おう。


「いいよ、お兄ちゃん。 この依頼受けちゃおうよ」


 アイリスは承認してくれたようだ。

 なので、サラトガさんに今回の依頼を受ける旨を伝えた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「しかし、この森そこそこ深いな……」


「でも、クラトス王国地方の【迷いの森】に比べたら、断然ここがマシだからね」


 東へ向けて馬車に揺られて2時間掛かって着いた【泉の森】の中を俺達3人は進んでいた。

 最深部にいるであろう6匹のメイジフォックスウルフの存在を確認するためだ。

 なお、【鷹の目(ホークアイ)】が使えるのは、3人の中では俺だけなので練習がてら遠方を見て対象の魔物がいないかを確認する。

 しかし、森の中じゃ使いづらいな。

 リックさんを尊敬したくなる。


「お、見えて来たぞ」


「え、どこどこ?」


「あっちだ」


 何とか【鷹の目(ホークアイ)】によって対象の姿が見えた。

 アイリスが見えた場所を聞いてきたので、俺は見えた方向を案内しながら進む。

 ひなたも黙ってついてくる。


 幸いひどい道じゃなかったので進みやすかった。

 しばらく歩いていると……。


「あ、あそこにいるのがそうなの?」


 ひなたが指を指して俺に尋ねて来た。

 どうやらひなたやアイリスの目でもメイジフォックスウルフが見える位置まで来たようだ。


「どうもそうだな」


「何か周囲を威嚇しているみたいだね。 何があったのかな?」


 メイジフォックスウルフは刺激さえ与えなければ襲ってこない魔物。

 その魔物が周囲を威嚇し続けている。

 大きな二匹のメイジフォックスウルフが小さな子供を守るようにしているようにも見える。

 気になった俺は、再度【鷹の目(ホークアイ)】で、その群れを見てみた。


(む、これは……? そういうことなのか?)


「どうしたの、お兄ちゃん?」


「アイリス、ひなた。 ここから少し離れよう」


「え、え?」


 ひなたが困惑し、アイリスも首をかしげるが俺の言うように距離を離れるために数十歩歩いた。

 そこにある物陰に隠れて俺が【鷹の目(ホークアイ)】で見たことを話した。


「あの群れの一番小さな子供が怪我をしているみたいだ」


「え、本当なの?」


 俺が言った内容にひなたが驚いていた。

 俺はさらに話を続ける。


「ああ、【鷹の目(ホークアイ)】で見たところ、前足と背中の怪我を確認した」


「酷いね……。 Sランクの魔物と言っても小さな子供はそこまで強くないから……やった相手はそこを狙ったんだろうね」


 小さい子供を狙うのはある意味イリーガルだがある意味理に適うやり方だ。

 とはいえ、やられた側としては怒りを隠せないのだろう。


「なんとかならないのかな、それ……」


「回復魔法を掛けてやりたいんだが、今の威嚇じゃ無理だろうな」


「うん、縄張りだから入った瞬間襲われるよ」


 なんとかしてあげたいと願ってるひなたに、俺は回復魔法を使えばと思ったが、アイリスの言うように今の状況じゃ縄張りに入った時点で襲われてしまう。

 子供を守るためなんだし、仕方がないだろう。

 そんな時、茂みが揺れて来た。


「え?」


 俺達が驚き後ずさってると、そこから現れたのはあの大きいメイジフォックスウルフの1体だった。

 何でこんな所に来たんだ!?

 そう思ってたら、向こうから話しかけてきた。


『すまないが、さっきの話聞かせてもらった。 君は回復魔法を使えるのか?』


「しゃ、喋った!?」


 メイジフォックスウルフが人語を理解し、喋ったことに驚くひなた。

 だが、彼の真剣な目に俺は正直に答えた。


「ええ、使えます。 この間【回復術師】を極めましたから…」


『そうか、ならば君……、いや、君たちパーティにお願いがある』


「お願い……とはやはり?」


『そうだ。 我が末娘の治療を……お願いしたい』


 彼の末娘……、あの小さい子供狼か。

 つまりはその子の治療をしてほしいと、向こうから俺達に頼んできたのだ。


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