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37 その後の後始末

「ああ、こいつは確かにバーサークバッファローだ、間違いない。 だが、こいつはヘキサ公国領の最北端の場所に縄張りにしてるはずだが…」


「ですね。 でも、何故こんな所に……」


「アイリスちゃんの様子はどう?」


「何とか落ち着きを取り戻してます。 でも、あんな形での恐怖だから……」


「でも……、無事で……良かったよ」


 俺達は三度(みたび)、現場である『イエローガーデン』にサラトガさん他ギルドスタッフ、ならびにクリストフ国王と護衛の兵士、そして1週間掛けてヘキサ公国からガイアブルクに来たばかりのエミリーさんとクレアさんがバーサークバッファローの死体を確認していた。

 俺とひなたが、角を持ってギルドに報告する傍らで、落ち着きを取り戻したアイリスには国王に報告してほしいと頼んだ。

 ギルドに報告後、国王からも連絡が来て西地区の門前で合流し、現場へは国王が持ってる転移アイテムを使ってここに来た。

 報告当時のサラトガさんの驚き様はしばらく忘れられないような顔芸だったのは内緒だ。


「しかし、気になったのですが、バーサークバッファローのお尻に刺さってる金属は一体?」


「あー、それは……」


「私が後ろから折れた剣先を肛門目掛けて投げた後、柄でその剣先を押し込んだんです」


「あー、 Sランクの魔物でも尻の穴は弱いんじゃって発想だったんだ。 ボクでも思い付かない発想だねぇ……」


 そう、後でひなたに聞いたがとんでもない発想でこれを試みたんだそうだ。

 Sランクであろうとも、尻の穴は弱いんじゃないかという発想で、体当たりを受けた時に折れた剣を利用して実行した。

 もちろん【グレートブースター】という強化魔法を掛けてだが。

 今回は効果は抜群だったようで、結果、腹部ががら空きになり、俺の気功を込めた拳で内臓を破壊されて死んだのだ。

 これにはエミリーさんも苦笑する程の発想だった。


「しかし、【襲撃型】のSランクを君たちだけで倒すとか、本当にすごいね」


「運がよかっただけですよ。 【グレートブースター】を掛けたひなたが一時意識を失う程の強い攻撃を持った相手ですし、俺も強化魔法を掛けてかつ【格闘家】の素質を全開することでようやく押し込めたくらいですから」


「ランク以上の強さを持つ二人でさえそれですから、普通の人なら粉みじんですね。 【襲撃型】のSランクモンスター恐るべしですね」


 そう、俺でさえポーションを飲むまではアバラをやられた状態だったから、並みの人がそれを食らったらサラトガさんの言うように粉みじんレベルだろう。

 一応クリストフ国王は評価してくれてはいるが、正直この手の魔物はお目に掛かりたくないのが本音だ。

 そんな事を考えてたら、クリストフ国王が持ってる水晶玉が光りだした。


「私だ。 どうしたのだ、エリス?」


(エリスって、誰でしたっけ?)


(アイリスちゃんの姉で、第一王女です。 母親は違いますが、父親が同じなので)


 俺とサラトガさんがひそひそ話でエリスという人について聞いた。

 アイリスの姉で継承権持ちの第一王女らしい。

 イリアさんとの会談以降、一度も王城にいってないから、なかなか会う機会がないんだよな。


「ほぉ、ガルタイト国の勇者の一部が魔王討伐のために魔族領に向かって出国したと。 イリアゲート君には報告済みなのだな?」


 クリストフ国王の言葉からして、あいつらが魔族領に向かって行ったということか。

 ひなたも聞こえていたのか、顔を歪めていた。

 少しだけ事情を知るエミリーさんやクレアさんも無言ながらも表情は不快感に歪めていた。


「結局あいつらはガルタイトの駒になったわけだね」


「だが、あいつらは当初から乗り気だったろう。 言ったところで聞く耳なんて持ちやしないさ」


「それもそうだね」


 ひなたと俺が話していると、通信を終えたクリストフ国王が俺達に向き合って通信内容を話してくれた。


「君たちも聞こえていたと思うが、ガルタイトの勇者の一部が魔王討伐のために魔族領を目指して出国したそうだ」


「やはりそうですか……」


「君たちに差し向けた追手が壊滅したことで早急に事を進めるようにしたのだろう」


「イリアさん達の方は知ってるんですか?」


「ああ、私の娘でアイリスの腹違いの姉のエリスが、向こうの諜報部隊経由でそれを知り、即座にイリアゲート君に報告したからね。 きっと魔族の方も戦力を強化してるよ」


 クリストフ国王の答えから、イリアさんの対応の良さに安堵した。

 まぁ、あの時の追手にはイリアさんも関わってたからな。


「基本的に彼女は心優しいが、魔族の居場所を守るために非情な手段も講じることもある一面もあるからね。 勇者に対する策も講じてるだろうさ」


「とにかく今は安心してもいいと?」


「そういうことさ。 さて、専用の荷車が来たし、奴の遺体を持ち帰ろうか」


 国王の言葉に振り向くと、大型トラックサイズの大きな荷車が来ていた。

 これにあの遺体を入れるのだろうか?

 魔族出身の兵士たちが奴の遺体を運んでそのまま荷車に放り込まれていた。

 すげぇ力持ちだな。


「城内の地下室で奴の遺体を解体して色々調べてみるさ。 何かわかったら君たちにも報告する」


「それと、依頼遂行中にSランクの魔物と遭遇したというアクシデントに対してお詫びをしないといけませんしね」


 国王とサラトガさんがそれぞれ俺達に話してくる。

 国王からは、バーサークバッファローが何故ここに来たのかの解析を解体しながらやるという事。

 サラトガさんからは、アクシデントに対するお詫びをするとのことだった。

 お詫びに関しては俺達は受け入れ、他のSランクの魔物が発見された時には報告することも約束した。


 その後は家に帰り、存分にアイリスを可愛がった。

 あんな事やこんな事もしていたが、彼女から求められたのでそれに徹底的に応じてあげただけのこと。

 おかげで翌朝には、彼女が精神的な意味で完全に復活することになった。


 ちなみにエミリーさんとクレアさんは、暫く王都西地区の宿屋に泊まるのだそうだ。



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