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30 新たな追手その3~勇者殲滅編~

「よくも濁川(にじかわ)をぉぉぉっ!!」


 戦闘開始と共に、鞍馬が俺に斬りかかって来る。

 余りにもお粗末なモーションなので、回避するまでもない。

 奴の攻撃を剣で受け流す。


「くそっ!!」


 一旦距離を置く鞍馬。

 その顔からは怒りが露になっていた。

 どうやら奴は俺が相手した方がいいな。


「この男は俺がやります。 みんなは二人の女勇者を」


「わかったよ、お兄ちゃん」


「油断しないでよ、片付いたら手伝うから」


 アイリスとひなたが、意図を察してくれたのか、俺の要望を受け入れた。


「おい、大丈夫なのか? あのあんちゃん一人にして」


「大丈夫さ。 彼が本気出したらあっさり終わるくらいだからね。 現に一人はすでに彼によって斬首されてるからね」


「国王様がそうおっしゃるなら、そうでしょうね。 ならあたいらは、あの女勇者を殺りましょう」


 一部、冒険者から不安の声が上がったが、クリストフ国王のお墨付きということで納得してもらった。

 さて、俺も始めるか。


「くそっ、佐々木……お前……!」


「無駄口を叩いてる場合じゃないぜ」


「くぅっ!」


 間髪入れずに、剣による連撃を放つ。

 防戦一方になった鞍馬は俺の剣さばきをなんとか捌いてるみたいだが、余裕はなさそうだ。

 しかし、力をセーブした状態の攻撃で、この焦りようは勇者という素質と能力に頼って、今まで甘い訓練しかしてなかったのか。

 よくそんなので魔王を倒すと言えたもんだ。


「な、舐めるなぁっ!! Vスラッシャー!!」


 ついに痺れを切らした鞍馬が技を放つ。

 ひなたが言うには、これは【勇者】の素質を得た者全てに与えられる技らしい。

 斬り下ろしから斬り上げへとVの字を描くように繋げるとのこと。

 だが、力が込もっている分、モーションが大きく、隙も生まれやすい。

 普通なら避けられるが、あえて剣が弾き飛ばされるように仕向けた。

 ガキィンという金属音と共に、目論見通りに剣が弾き飛ばされた。


「やった! 所詮お前はその程度…」


「だと思ったか?」


 斬り上げた時の無防備の瞬間。


「せいっ!!」


 俺はそこを狙って、正拳突きを鞍馬の腹部に叩き込む。


「ぐぼぉぉぇっ!!!?」


 腹に思い切り殴られた鞍馬は、腹を押さえ胃液を吐きながら踞る。

 息も多少詰まってるようだ。

 力を入れすぎたか。

 踞る鞍馬をよそに、俺は剣を拾い、奴に近づいた。

 早いとこ終わらせよう。


「最期に言い残すことはあるか?」


 激痛の為か、言葉を発することができないでいる。

 しかし、怒りの表情で俺を睨む。

 俺も睨み返し、鞍馬にこう言ってやった。


「俺は、あの時の蔑んだ目で見ていたお前を忘れられなかったさ。 だが、それも終わらせてもらう」


 そう言いながら俺は、鞍馬の首をめがけて剣を振り下ろした。

 抵抗する事も、何かを言う事も叶わす、鞍馬は首を刎ねられた。

 大量に流れる血と共に転がる鞍馬の首を見た後、火の魔法で奴を火葬した。

 俺自身、狂ってるのは理解している。

 しかし、今後も追手の勇者が来る事を考えたら割り切るべきなのだろう。


「鞍馬くん!?」


 斬首を見てしまった高田が叫ぶが、複数相手じゃなすすべもない。

 というか男冒険者さん、どさくさ紛れで高田のスカート捲ってる場合ですか……。

 白いのがこっちにも見えましたよ。

 高田が慌ててスカートを押さえるが、そこを他の冒険者に狙われていた。


 一方の日下部は、ひなたとイリアさんの波状攻撃に防戦一方だった。

 双方とも大丈夫だろうとは思うが、一応声を掛けるか。


「こっちは終わったぞ。 手伝うか?」


「気遣いありがとう、暁斗君。 でも、こっちももうすぐ終わるから」


「だからお兄ちゃんはゆっくり見届けてね」


 そう応えるひなたとアイリス。

 その瞬間、ひなたが一閃の剣技【虚空】を放った。

 疲弊と失禁の羞恥でなすすべもなく、日下部の身体は二つに分かれた。

 一方のアイリスも、【テンペストエッジ】という風の上級魔法で高田の身体を深く切り刻んだ。

 全身から血を吹き出し、高田はうつぶせに倒れ、そのまま息絶えた。

 これにより、新たな追手との戦いを終え、俺たちはひとまずの安心感を得た。

 傍らで冒険者たちが勝鬨をあげていた。


「お疲れ様でした、暁斗君」


「イリアさんも、お疲れ様でした」


「こっちは複数だったから、手加減したけどあまり強くなかったね」


「多分、また勇者の中でも能力の低い人物を派遣したんじゃない? 相変わらずアキトお兄ちゃんとひなたお姉ちゃんの力を舐めてたんだと思うよ」


 俺の元に来たアイリス、イリアさん、ひなたが労いつつ今回の感想を口にした。

 アイリスの話からして、今後の追手はより強い勇者も派遣されるだろう。

 その時、ふと上空を見上げると鳥みたいな物が旋回しそのまま去って行った。


「あれはガルタイトの使い魔ですね。 泳がせておきましょう」


 そんな事をイリアさんは言った。

 まあ、どのみち追手が来るんだし、放っておいても構わないか。


「ともかくみんなお疲れ様だ。 イリアくんも暁斗くんもひなたくんもアイリスも。 今日はゆっくり休んで明日に備えなさい。 冒険者のみんなにはギルドで報酬を受け取るのを忘れないように」


 今回の戦いをクリストフ国王の言葉で締めくくった。

 いつか来ると分かってはいたが、追手との戦いは流石に疲れた。

 国王の言う通り、早く帰って休んでおこう。

 イリアさんは、国王と共に事後処理を行うようで、西地区の入り口で別れて、俺達は自宅であるアイリスの別荘へと向かい、帰宅後はそのまま眠りについた。



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