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18 魔王イリアゲートとの会話(中編)

「歪んだ世界情勢?」


 イリアゲートさんの発言内容に、俺は首を傾げた。

 召喚された時の混乱のせいで、世界情勢は掴めていないからだ。

 しかし、ひなたは何の事かを察したようだ……。


「あの時、ガルタイト国王が言ってた魔王討伐の為に私達を召喚したのと関係が?」


「はい。 その流れを産み出した原因は、先代魔王……、つまり私の母の時に起こりました。 そう、今から40年前ですね……」


 ひなたの疑問にイリアゲートさんは肯定の答えを返し、さらに話を続けた。


「母も、歴代魔王の想いを継いで人族との和平を維持してきました。 交流も今以上に盛んでした。 しかし、私達の中でそれを許さない種族がいました。 悪魔族と言う今ではほとんどいない種族です」


「悪魔族? 魔族にも種類があるのですか?」


 種族の名称が出され、気になったのか、ひなたが再び質問した。


「種類がある……というより、魔族と言うのは亜人という人の形をした別の姿の集まりなんです。 人族より強大な魔力を有し、種族によっては寿命が長いこともあって、人族からは『魔族』と呼ばれてますが」


「本来は亜人の国って事か。 それで悪魔族が何をやったんですか?」


 魔族の実態を理解したところで、俺は悪魔族が何をやったのかを聞いた。


「有り体に言えば、テロですね……」


「テロ!?」


「ええ、当時の悪魔族は亜人の中でも過激派思想を持っておりました。故に悪魔族からは魔王を選定された事は一度もありませんでした」


 悪魔族が過激派思想持ち……、という事はテロを起こした理由は?


「悪魔族の思想は、力による世界制圧です。 しかし、歴代魔王はそれを否定し続けました。 母の代もそうだった為、ついに悪魔族は実力行使に出ました」


「まさか……」


「はい、悪魔族は人族の町を襲撃し、警護にあたっていた亜人と、その町にいた人族の大半を殺害し、力による世界制圧を開始すると宣言しました」


 開いた口が塞がらなかった。

 人族と他の亜人を殺してまで、自分達だけの為の世界を作りたかったのか。

 何だか怒りが込み上がってきたな。

 その感情を抑えて、話の続きを聞く事にした。


「その町には、当時のガルタイト国や他国の貴族達が旅行などで滞在していました。 悪魔族はその情報を掴み、手始めという形で実行しました」


「その後は?」


「すぐさま、母が転移で駆けつけ、そのまま悪魔族を粛清しました。 しかし、その時には既に50人の人族が死亡していました」


「アイリスは知ってたのか?」


「うん、お父さんから聞いたの。 あれでお婆ちゃん……、先代王妃が死んじゃったと教えてくれたから」


「その時は、他国との会談の為にあの町に行っていたらしい。 悪魔族のテロで母が死んだ事は、イリアゲート君の母親が来て知らせてくれた上に、精一杯の謝罪をしてきたよ」


 アイリスに続き、クリストフ国王も答えてくれた。

 ガイアブルクからも犠牲者がいたのか。

 しかも、アイリスの家族とか……。


「その犠牲者の中に、ガルタイト国の王族が数人いました」


「え……?」


 当時のガルタイト国の王族のほとんどが犠牲になった……。

 これに関しても驚きを隠せないでいた。


「私の母は、それを知り、各国に謝罪に回りました。 その時は私も同行していました。 何せ、各国の首脳やらがあのテロで亡くなられたから」


「それで、許して貰えたのですか?」


 謝罪に回ったはいいが、許して貰えたのか?

 ひなたは気になっていた。


「ええ、母が悪魔族を断罪した事で、今回は母が望んでなかった事がわかったから、何とか許して下さいました」


「クリストフ国王も?」


「ああ、憎しみは新たな憎しみを生む。 母も憎む事を望んではいないしね。 あくまで悪魔族が独断でやったことだから、私も父も割り切ることができた。他国もそうだった」


 なるほど、ガイアブルクも他国も思うところはあれどイリアゲートさんの母親が精一杯の謝罪をした事で割り切ることができたのか。


「しかし、ガルタイト国だけは違いました。 母の謝罪にも一切聞く耳もたず、門前払いされました。 その時の今の国王、当時は王子でしたが、瞳に憎しみが宿っていました」


 そこまで聞いて、ひなたは察した。

 そして確認の為に、聞いてみたようだ。


「じゃあ、あの国王が魔族殲滅主義を掲げ続けているのは」


「あの時のテロで、現国王以外の家族や許嫁が悪魔族に殺されたか事が原因です。 当時の彼は病で留守番していた為、無事でしたから」


 そういう事だったのか。

 現国王であるヘイトは、悪魔族が家族全てを殺したのは魔族の総意だと捉え、憎しみを募らせたわけか。

 これくらいなら同情はできるが……。


「そこから、ガルタイト国は変わりました。 国王と宰相は魔族殲滅主義に方針転換し、事ある毎にそれを推し進めました」


「我々や他国は、あのテロが魔王の総意ではない事を知っているからね。 ガルタイト国の主張を一貫してはね除けた。 しかし、意思を曲げるどころかエスカレートしてきたから、国際連合から排除されたのさ」


 イリアゲートさんとクリストフ国王の話でなんとなくだが理解した。

 あのテロで被害を受けたのは、ガルタイト国だけじゃないからな。

 他国から見れば過去に囚われすぎだということだろう。

 イリアゲートさんはさらに話を続けた。


「それがきっかけとなって、ガルタイト国王は力による世界制圧を行う事になりました。 その為に禁術にも手を出しました」


 禁術?

 また、気になる内容が出てきたなぁ。


「その禁術というのは?」


 俺は気になって聞いてみた。

 イリアゲートさんも、顔を歪めつつも答えてくれた。


「ひとつは、ホムンクルス。 人工生命体の製造魔法です」


 その答えは、別の意味でとんでもない内容のものだった。



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