影の薄い俺の周りがヤバい 短編
思いついて書きました。
俺は滑瓢和平。どこにでもいる高校1年生だ。俺たちはバスに乗り、林間学校の目的地、新潟に向かっていた。
「加茂君、これ食べる?」
「加茂君、わたしのも食べていいよ」
「ありがとう」
こいつは三善寛史。スポーツ万能のイケメンだ。なぜか俺に積極的に話しかけてくれて友達と俺は思っている。
隣に座る寛史は前の席の佐々木さんと清水さんからお菓子のおそそわけをもらっていた。イケメンは優遇されて羨ましいなっと思っていると
「滑瓢君もいる?」
「え?」
佐々木から話しかけられて目を見開いた。まさか話しかけられるとは思わなかった。
「どうしたの?もしかしてこのお菓子嫌い?」
彼女が首をかしげていた。
「いや、見たことないので驚いただけだよ。もらうよ」
彼女から一つもらった。
「滑瓢君、このお菓子知らないの?今人気なのに?」
清水さんに聞かれた。彼女とは初会話だ。
「流行に疎くて。ははっ」
「じゃあ、ジレーネも知らないの?」
ジレーネ?これもお菓子か?
「ジレーネは今人気絶頂の歌手だよ」
お菓子じゃなかった。
「名前からすると外国人?」
「うん、ドイツ人らしいよ」
「でも今ジレーネって休業中でしょ?」
「そうなんだよね~」
「病気か何かなの?」
歌手ってかなりハードな生活で体を壊す人も少なくないらしいからな。
「公表されていないから、わかんない」
「だから、いろんな噂があるよね。妊娠したとか。麻薬で捕まったとか」
「香菜変なこと言わないで」
「ごめん、許して瞳」
佐々木さんは清水さんに謝っていた。
「佐々木さんは今誰が一番好きなの?」
話を変えるように寛史が佐々木さんに聞いた。
「私はやっぱりYAOさんかな~」
ヤオ?中国人か?
「YAOさんはSNSで人気のボカロだよ」
「ああ、そうなのね」
「滑瓢君は何も知らないね?」
「はは、面目ない」
俺は頭をかいて誤魔化した。
「もしかしてまだウチたちがタピオカ飲んでると思っている?」
「えっ?違うの?」
2人は笑い出し
「もう、今はね―――」
いつもなら無視されるのになんで今日は話すのと聞けずに会話していた。そうしたらあっという間についてしまった。
「加茂君、滑瓢君、楽しかったよ」
「滑瓢君は今日みたいにしていればいいのに」
佐々木さんと清水さんはそう言ってバスを降りた。
「俺たちも降りようか」
「ああ、そうだな」
荷物を持ち俺たちもバスから降りた。
「「「きゃーーー」」」
寛史のスノボ姿を見た女性陣は歓声を上げていた。寛史の滑りはかなりうまく彼女たちがはしゃぐのも頷けた。
「うまいな寛史」
「和平も中々だったよ」
「お世辞ありがとな」
「そんなことはないよ。ほら聞いてみなよ」
女性たちのところを耳を澄ませると
「加茂君はすごいね」
「加茂君の隣の人もすごかったよ」
「誰?」
「ほら、モブ男だよ」
「えっ?彼、運動神経よかったの?」
「体育祭の時に幻の2人抜きしたのは彼って話だよ」
「あれって加茂君が一周したんじゃなかったの?」
「いや、1人につき半周だからねリレーは」
「モブ男はすごかったんだ」
わいわい言っていた。ちなみにモブ男とは俺のあだ名だ。
「なっ」
寛史は肩に腕を組んできた。
「あれは褒めているのか?」
「褒めているに決まっているよ」
真っ直ぐにこっちを見てくる寛史に悪気はなくて逆にどう反応すればいいかわからなくなった。
「今度は上級コース行ってみないか?」
「いや、あんな見てるだけでもヤバいと思えるあそこに?無理無理」
俺は上級コースを見ながら、拒否をした。が
「うぅぅぅ高いな。ここは」
寛史に強烈に誘われ結局上級コースに来てしまった。中級コースとは比べられないほど急だった。それにさっきまで青空が見えていたのに、曇って来てしまった。
「すごいな」
「わくわくするね」
ゴーグルで顔はよくわからないが、寛史は喜んでいるようだ。
「さぁ行くよ」
「お、おう」
俺は少しビビりながら、滑り始めた。
「うぉ、これはきついな」
急な坂のためスピード調整のために足腰に力を入れてた。少し滑っていると段々慣れてきた。これならいけると思っていると
「うぁぁぁぁぁ」
上から叫び声が聞こえた。
「危ない」
「くっ」
そこの叫び声を上げていた人物とぶつかり、コースから外れてしまった。道なき道を進んでいしまい窪みのようなところで止まり、元のコースには戻れなくなってしまった。
「大丈夫か」
上から寛史が声をかけてきた。
「ああ、怪我もないし、板も折れていない」
俺は自分の状況寛史に伝えた。
「すまない。オレのせいで」
ぶつかってきた人が謝ってきた。
「気にするな。それより助けを呼んできてくれないか。自力でそっちに戻っていけそうにないんで」
「わかった。そこで待ってて」
「すまない。必ず助けをよこすから」
2人は助けを呼びに行ってしまった。俺は下手に動くと危険だと感じじっとしていた。
「え?雪?」
雪が降ってきた。
「さっきまで青空だったのに・・・」
でもここは山だから仕方ないと思っていたが雪はやむどころか、勢いをまして風を吹いてきた。すると電話がかかってきた。
「はい。もしもし?」
『寛史だ。すまない今暴風雪警報が出て救助に行けないらしい』
えっ?まじか?
『それで西に50メートル歩くとコテージがあるらしいからそこに非難してほしいって言っているんだが・・・』
助けが来れないならそこに行くしかないな。
「わかった。行ってみる」
『大丈夫か?』
「方位磁石のアプリがあるし大丈夫だろう」
『わかった。何かあったら連絡してくれ』
「ああ」
俺は電話を切り、アプリで方角を調べた。
「西はあっちか・・・」
西は比較的平坦で歩けそうだ。俺はスキー板を担ぎ移動した。30分ほどかけて歩き続けて、コテージを見つけた。また歩いてコテージの前に着き、中に入ろうとしたが、鍵がかかっていた。なので電話をした。
『どうした?』
「コテージに鍵がかかって入れないんだが・・・」
『お電話変わりました』
女性の人が出てきた。
『コテージの裏に鉢植えが重なって置いてあると思います。その中に緑色の鉢植えあると思います。そこに鍵があるはずです』
言われた通り裏に回り、鉢植えを見つけ緑色を持ち上げると鍵があった。
「ありました」
『よかったです。中には暖炉があります。マッチが戸棚の真ん中に、薪は入って右の部屋にありますので使ってください』
「わかりました。寛史に代わってもらえますか」
『わかりました』
ごそごそして
『変わったよ』
「俺にぶつかったきたやつに言っといてくれ、明日の昼飯奢ってくれってな」
『わかった伝えておくよ』
「頼んだぞ」
『うん、和平、気を付けて』
「まかせろ」
電話を切った。そして鍵を使って中に入った。中はとても暖かった。吹雪の中歩てきたからそう感じるのかと思ったが、暖炉に火が点いていた。
「誰かいる?」
俺は左の部屋のドアを開けると
「はっ?」
バスタオルで髪を拭いている全裸の女性がいた。薄く水色の入った銀髪に茶色い瞳、ふくよかな胸に引き締まったお腹とお尻に見入ってしまった。
「見たわね?」
彼女は俺に怒りの目で睨みつけ、俺に息を吹きかけてきた。すると俺の体が冷たくなってきた。
「な、なんだこれは・・・」
体が動かなくなってきた。まさかこの女・・・雪女?
「まずいわね。どうしましょう・・・」
意識が遠のいて・・・
「ちょっとしっかりしなさい。ちょっと」
イケメンなら生き残れたけど、俺は違うから死ぬのか・・・イケメンに生まれたかった人生だった。
「っは!」
俺は目を覚ました。
あれ?俺生きている?
周りを見渡すとさっきの女の子が俺に抱き着いていた。さっきとは違い下着は着けていたけど。
「う、う~ん」
女の子は目を覚ましたようだ。
「生き返ったようね」
彼女はホッとしたように息を吐いた。
「あんた見たでしょう」
こっちを睨みつけるようにこちらを見ていた。
「見たって・・・」
裸体か?それとも・・・
「見たんでしょ?」
「ああ、素晴らしいプロポーションだったよ」
これで怒ってきて誤魔化すっと俺は思っていたが
「そっちじゃなくて」
彼女の目の瞳孔は大きく開いていた。
やばい、覚えていないふりをしなければ
「他?他って何のことかわからないな?」
「ふ~ん」
彼女はこちらに顔を近づけてきた。俺はまた凍らせると思い距離をとった。
「やっぱり覚えているようね」
しまった。
「俺をどうするつもりだ?」
「殺すって言ったら?」
彼女は笑って言った。
「それはないな」
「どうしてそう思うの?」
「殺すつもりなら、さっき意識がない時に外に放り出せばよかった。でもそれをしなかったっていうことは殺す気がないってことだろ?」
彼女は目を見開いて驚いた。
「どうやら馬鹿じゃないみたいね?」
「これでも学年3位だからな」
「へぇ~」
彼女は水の入ったコップを持って、俺の周りを回り始めた。
「あなたは私の『怪異』を見てしまった」
「怪異ってあの凍らせる力か?」
「そう、一般人には見られてはいけない能力。それが怪異よ」
彼女はコップに息を吹きかけてた。すると中の水は氷になった。俺はそれを見て唾をのんだ。
「あなたに出来る選択は2つ。ここで死ぬか」
「そいつはごめんだな」
そんな熱くないはずなのに、汗が垂れてきた。
「もう一つは・・・」
彼女は動くのを止めて、こちらに近づき
「私の配偶者になることよ」
「え?」
その言葉に思考停止してしまった。
「どういう意味だ?」
「配偶者って知らないの?夫って意味よ」
俺を馬鹿にするように言ってきた。
「違う、あんたの真意を聞いているんだ」
「へぇ~。学年3位は嘘じゃないみたいね?」
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
結婚を申し込んでいるのに、彼女には嬉しそうでも嫌そうでもなかった。だから、何かたくらみがあると思った。
「私にお見合いする予定なの」
なるほど、俺を口実に断るつもりか。
「俺は明々後日までしかここにいないんだが?」
「大丈夫。お見合いは明後日ってだから」
これは彼女に付き合うしかないか・・・。
「わかった。引受けよう」
「ほんと!」
彼女は嬉しそうに笑った。
「ああ」
「じゃあ、よろしくね。私、氷柱音奈よ」
「お手柔らかに。俺は滑瓢和平だ」
俺と氷柱は握手した。
これからどうなるかはわからないが全力で彼女に応えようと思ったのであった。
好評なら連載します。