006・転校手続き完了
エクトス学園への転校を決めてからというもの、俺は迅速に事を済ませ、
転入手続きする為の準備や審査を次々とクリアしていく。
そしてそれから数日後。
遂にエクトス学園への転校手続きが無事に全て完了した。
それから更に数日が経った今日の日。
「......ふう、な、何とか月の頭前に間に合った~~っ!!」
しかしその間、クラスや他の生徒達からの針のムシロ攻撃を受け続け、
サキナ達のイチャイチャを見せつけられて、ホント...心も感情も死んで
しまうかと思ったぜ。
いや、実際死んでたと思う。
「この後の学園生活も、そのイチャイチャをずっと見せつけられるかと
考えると、マジでエクトス学園への転校手続きを実行しておいてホント
良かったよっ!」
俺はあいつらのイチャイチャを、無念な表情で毎日毎日と眺めている自分を
想像してしまい、思わずゾッとなってしまう。
ブルブルブルブル......!
「こ、こんな気の滅入る話は全部ゴミ箱に纏めてポイッと捨て置くとして、
今はエクトス学園のある王都に出発する準備をしなきゃなっ!」
俺は頭の中にドンドン浮かんでくる、ロクでもない考えを振り払う様、
顔を左右に激しく何度かブルブル振ると、取り敢えずエクトス学園に
出発する為の準備に急いで取りかかった。
「......これで最後の点検終わりっと!」
王都への旅支度を済ませた俺は、家の閉じまりをするべく、家中の窓に
鍵を掛け、そして火の元になる物を全て安全な場所へと隔離する。
「後はこの家の管理は親戚のユキコおばちゃ...ゲフン、ユキコお姉さまに
頼んでおいたし......よし、これで取り敢えず家を離れても大丈夫だろう!」
後は、義妹への手紙は......ここに入れてあるな。
俺はカバンに入れている義妹への手紙を確認する。
俺の転校を知らせておかないと、妹の奴がこの家に帰って来た際、
家に俺が居ない事にビックリしてしまう可能性があるからな。
俺には血の繋がらない妹がいて、あいつは今『聖教会学院』という
回復魔法を専門とした学園に通っている。
この家から聖教会学院に通うにはかなり遠くの場所にある為、義妹は
聖教会学院にある女子寮から学園に通っているのだ。
そんな訳で、あいつにこの手紙を送って、俺がエクトス学園に転校した事を
伝えておけば、取り敢えず問題はないだろう。
「後は、この二つの手紙を...」
俺は家に鍵をかけて外に出ると、左と右の家...幼馴染達の家々に、
エクトス学園に通う事や、もう会うこともないだろうという別れを
書き留めた手紙をカバンから取り出して、それをそれぞれのポストに
投入した。
「......おっと!そろそろ王都に向かう馬車が来る時間だな。これに遅れて
しまうと、予定が大幅に狂っちゃうぞ!」
......少し駆け足で行くか!
俺は右腕に嵌めている腕時計を見て、馬車のくる時間が迫っている事を
確認すると、地面に置いたカバンを慌てて手に取った。
「じゃあな、サキナ、ニーナ。キミ達に大いなる幸が有らん事を願っているよ!」
俺は静かに後ろに振り返り、未だに眠りに着いているだろう、二人の幼馴染の
いる部屋の窓に向かってニコッと微笑むと、馬車の待つ場所に急ぎ駆けて行く。