057・ザックの攻撃スタイル
「おお!す、凄い!これならっ!」
ミカリ先輩の魔法に感動しつつ、大地を蹴り上げると、俺はブルーウルフたちの
いる場所へと一気にダッシュして行く。
「よし、そこっ!」
「―――ギャン!」
俺は三匹のうち、左側にいたブルーウルフを斬りつけ、怯んだブルーウルフに
とどめの踵落としを食らわせる。
「遅い!次っ!」
「―――ギャ!?」
そして撃破したブルーウルフの隣にいた二匹目のブルーウルフの頭に目掛けて、
懐から取り出したナイフをブスッと突き刺す。
「ぐるるる……ウギャァァアアッ!!」
残ったブルーウルフが仲間たちをやられた事で怒り狂い、俺を噛みつこうと
唸りを上げて襲い掛かってくる。
だが、
「大きく口を開けたのが間違いだったな、うりゃぁぁああっ!」
「―――アガ!?グッギャ――――ッ!!?」
俺はその大きく開けた口に目掛けて、ナイフを持ったままの拳で思いっきり
ストレートパンチを叩き込むと、ブルーウルフは断末魔を大きく上げながら
その場に絶命して崩れ去る。
「ふう、終わった......」
俺が戦闘が終わった事を確認すると、握っていた剣をさやにスッと収め、
一息つく。
「へぇ~やるじゃないの、ザック君。今のは中々の見事な攻撃だったよ♪
でも最後の攻撃でちょっと腕を切っちゃったみたいだね?ほら回復するから
こっちにいらっしゃい♪」
「あ、はい。ありがとうございます、アンネ先輩!」
俺は褒めてくれたアンネ先輩にニコッと笑顔をこぼすと、回復魔法を
受けるべくトコトコと歩いて行く。
「いや~ザック君の攻撃スタイルって、突撃タイプだったんだねぇ~!
お姉さん的には慎重タイプだと思っていたからさ、ちょっとばかしビックリ
しちゃったよ~!」
俺のケガを魔法で治しながら、アンネ先輩がそんな驚きを見せていたので、
「はは…俺がこの攻撃スタイルになったのは、あいつら...幼馴染達に追い
付こうと必死に頑張った、その結果の弊害かもしれませんね……」
「え?へ、弊害...ですか?」
「……はい。幼馴染達って、ホント信じられないくらいのチート能力の
持ち主でしてね。普通にやっていたら連携なんて出来やしないんですよ。
それを補うにはどうしたらいいのか?あいつらに追い付くにはどうしたら
いいのか?俺は無い頭を必死になって捻り、その解決案を模索しました。
......その結果、攻撃に不必要で邪魔な行程は全て捨て去り、そして尚且つ、
相手を速攻で叩きのめすという戦闘を心掛ける。ただそれだけを重点とした
攻撃パターンが生まれた、まぁそんな感じです......はは」
俺は何故こんな戦闘方をするのか、必死になって頑張っていたあの頃を思い
出しながら、アンネ先輩達にそれを長々と語っていく。
「ふん。なるほどねぇ。言わば、平凡三下の攻撃は諸刃の特攻ってやつですね?
ただ闇雲に突っ込んで行くだけの、美しさも華麗さの欠片もない攻撃ですわ。
...でもまぁ、貴方みたいな普通人には、お似合いの泥臭い攻撃方法ですねぇ。
おほほほ~♪」
長い俺の語りを聞き終わったサーシュ先輩は、悪びれのない口調でそう言い
放つと、俺の攻撃方法に対して小馬鹿にした様に鼻で笑う。
「ち、ちょっと、サーシュちゃん!それは流石に言い過ぎっ!」
そんな口の過ぎるサーシュに対し、アンネが怒り口調で注意する。
「.....はは。別に良いんですよ、アンネ先輩。本当にサーシュ先輩の言う
通りなんで。それでも…例え美しさも華麗さもない攻撃だと言われようとも、
俺はあいつらに追い付きたかった。だから……」
「ザック君……」
何を思うところがある様な表情を浮かべているザックに、アンネの喉から
何も言葉が出てこなかった。
そして、
「……サーシュちゃん!」
この状況を作り出した原因のサーシュを、アンネがジロッとした目で睨む。
「え、えっと...そ、そのですね。あ、貴女方は、な、何やら勘違いをなさって
いるようですので言っておきますが、わたくしは、べ、別にそれが嫌いだとは
ひと言も言っておりませんからねっ!ど、どちらかというと、寧ろ大好きな
部類ですからねっ!そ、そこんとこを履き違え、勘違いしないで下さいよねっ!」
アンネ達の目線に堪えきれなったサーシュが、目を泳がせながら懸命になって
言い訳を繕っていく。




