055・鈍感という名のトラウマ
まぁ取り敢えず、先輩達の言う事には納得いった。
「......けど、どうしてもひとつだけ気になる事があるんで
それを聞いても良いですか?先輩達は、一体俺の何に不愉快感や
不満を持ったんでしょうか?」
「―――はぐ!?」
「―――うぐ!?」
「―――ひゃい!?」
「ねぇ、先輩方?何にですか?教えて下さいよ!お願いしますからっ!」
俺は真剣な表情で先輩達の事を上目遣いでジッと見つめ、その理由と
訳を聞く。
が、
「ハァ…ホント鈍感ですね、ザック君は......」
「――――なう!?ど、鈍感っ!?」
「後輩くん、マジで鈍感野郎過ぎ......」
「――――はう!?ど、鈍感野郎っ!?」
「呆れ返るくらいの愚鈍感さですわね、平凡三下は......」
「――――ぐは!?ぐ、愚鈍感っ!?」
先輩達から返ってきた答えは、全て『鈍感』を含む言葉だった。
そんな先輩達に、
「お、お、俺のどこが鈍感なんですかぁあっ!お、俺はいつだって
気を......使う...性...格...............ああぁっ!?」
俺は必死な口調で鈍感を否定しようとしたその時、俺の頭の中に
あのトラウマ...幼馴染達に振られた映像が浮かんできた。
あぎゃあぁぁあぁぁあ―――――――っ!
そ、そうだった!
俺、思いっきり『鈍感』だったぁぁぁああっ!?
「......あは、あははは............グハッ!」
それに気付いた俺は、心の中でパニった叫声を大きく荒らげると、
その場に倒れ込む様にガクッと項垂れてしまった。
「―――ちょっ!ザ、ザック君っ!?」
「―――えええぇぇ!こ、後輩くんっ!?」
「―――な!へ、平凡三下っ!?」
そんな俺の悄然振りを見た先輩達が、目を大きく見開きビックリしてしまう。
「.......はぁぁぁあ~~もういいですよぉ。もうどうせ俺なんてさぁ......
ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ......」
「ち、ちょっとっ!?ど、ど、どうしたというんですか、平凡三下っ!?
た、確かに言い過ぎた感はありますが、何もそこまでショックを受け
なくても、宜しいのではないかと思うんですけどっ!?」
「ゴ、ゴメンね、後輩くん!わ、わたし達、少し言い過ぎたみたいだねっ!」
頭をガクリと垂れながら深い嘆息を吐いているザックの姿に、サーシュと
ミカリがあたふたと慌てた表情で動揺を思いっきり隠せないでいた。
「よ、よし!取り敢えず慰めてあげるからこっちに来なさいな、ザック君!」
アンネもまた、申し訳ないという表情をしながら、ザックを手を優しく
ソッと掴み、自分の下に引き寄せる。
そして、
「安心してね、ザック君。キミの気持ちが安定するまで私がハグしてて
あげるからっ!」
アンネは自分の胸にギュッと俺を押し付ける様にザックを包容してくる。
「――――なあぅぅう!!?」
こ、これはぁぁぁああっ!?!?
はわわわ~~はあああぁぁあ~~~~。
「し~あ~~わ~~~せ~~~~♪」
アンネ先輩からの熱い包容を受けた俺は、顔と身体中に次々と伝わって
くるこの世のものとは思えない至福なる感触に、トラウマで暗く淀んだ
心が少しずつ、少しずつと解けては消えていく。
「ちょっ!お、おお、お、お待ちなさいな、アンネッ!?そ、それは
いくらなんでも、や、やり過ぎではないかと思うのですけれどもっ!?」
「もう、何を言っているのよ、サーシュちゃん。落ち込んでいる殿方を
安堵させるには、これが一番なんだよ♪母性愛を与える包容力が....ねぇ♪」
「―――うひゃ!?」
アンネ先輩がそう言うと同時に、更に両腕の力を強くし、母性愛タップリの
胸に俺の顔を埋めていく。
「ほら、そういう訳だからさ、サーシュちゃん。ザック君の回復の…為にも
あなたもその...母性...愛の......ああ......え、えっと...そ、その......ゴ、ゴメンね、
サーシュちゃん、サーシュちゃんの……それ……じゃ、無理だった......よね。
ホントゴメン……っ!!」
アンネがサーシュも一緒に包容をしようと手招きしてこちらに呼ぼうとした瞬間、
ふと何かに気付いた様な顔へと変わり、そしてその後、アンネは申し訳なさそうな
表情をしてサーシュ頭をペコリと下げる。
「――――なぁっ!?」
アンナの目線の先を見て、何に謝ってきたのか、それに堪気付いたサーシュが
慌てて自分の胸を両腕でバッと覆い隠すと、能面の様な表情で静かに点数シートを
手に取った後、減点を付けるべくペンをソッと動かしていく。




