054・意外な正論
「はぁぁあ!?なな、な、なんでえぇぇですかぁぁああ~~~~っ!?」
俺はそのアンネ先輩の行動にビックリしてしまい、どういう事ですかと
パニクっていると、
「......やれやれ。テスト中に異性の事を考えるなどとは、平凡三下の分際で
百年早いですわ!…っという訳で、わたくしも減点1とさせて頂きますわっ!」
「――――なああっ!?」
サーシュ先輩もアンネ先輩に続けと言わんばかりに、点数チェックシートを
ポーチから取り出すと、減点を示す横線をサッと一本引く。
更に、
「わたしも何か癪な感じがするので、同じく減点1しておきますね!」
「―――――えええっ!?!?」
何故か頬をプクッと膨らませたミカリ先輩が、アンネ先輩達同様、ポーチから
点数チェックシートを取り出して、そこに減点を示す横線をゆっくり引いた。
「ち、ちょっと!待って下さい、アンネ先輩、サーシュ先輩、ミカリ先輩っ!
あいつらの事をちょっと思い出していただけで、いきなり減点3は酷過ぎると
思うんですけどぉぉぉおおっ!?」
「「「んんん!?あいつらっ!?」」」
俺の猛烈なる抗議を聞いた瞬間、先輩達の眉が一斉にピクッと動き、表情が
ドンドン険しく変わっていく。
「うふふ、やはり私達の事ではなかったようだね?」
「ハッ!?し、しまったぁぁぁあっ!?」
「それで後輩くん。そのあいつらとは一体、誰の事なのかな?キミの言動や
態度を見るに、そのあいつらという人達とは随分気安い間柄のようだけど?」
「さあ!お答えなさいな、平凡三下!貴方にとって、その『あいつら』との
関係は、どういったご関係なのかしら?」
ミカリ先輩とサーシュ先輩が威圧感タップリの顔で、俺に答えを迫ってくる。
「お、俺とあいつらとの関係......ですか?え、えっとですね、俺とあいつらの
関係は...そ、その所謂『幼馴染』っていう間柄です!」
「ああ~!はいはい、確かミカリちゃんとの交渉の時に出てきたよね、
その幼馴染さん達の事。それで、その幼馴染さん達っていうのは男性さんなの?
それとも女性さんなの?さっき見せたザック君の態度やあの表情を見るに、
異性.....女性さんのようだけれども?」
「え?ああ...あいつらの性別ですか?あいつらは二人とも女性ですよ。
でもそれがどうしたっていうんですか、アンネ先輩?」
未だに続く意味の分からない質問に、ザックは動揺と戸惑いを見せる。
しかしそんなザックの動揺や戸惑いなど、全く関係ないとばかりに、
「......く、やはり女性でしたか!」
「それで後輩くん。その幼馴染のお二人って可愛いの?」
「それとも美人なのかしら?」
アンネ、ミカリ、そしてサーシュが次の質問をザックに問うてくる。
「こ、今度はあいつらの容姿ですか?う~んそうですねぇ……あいつら、
正直可愛いと思いますよ?あ、サキナの方は美人の類かな?」
そんなアンネ達の質問に対し、ザックは動揺しつつも、真面目に答えを
返していく。
その結果、
「ふむ、ふむ。まさかの両方でしたか!それじゃ……減点1だね!」
「私も減点ですかね♪」
「ふん、平凡三下の癖して生意気なっ!減点よ、げ・ん・て・ん・っ!!」
「えぇえぇぇえ!?また訳の分からない減点をされたあぁぁぁああっ!?」
全ての質問が終わった、ミカリ先輩、アンネ先輩、サーシュ先輩の3人が
テストチェックシートを取り出すと、また減点を各自つけていく。
「ちょ~~~っ!?ど、どういう事ですか、先輩の皆さん!?俺は先輩達から
質問をされたから、それに素直に答えただけなんですけど!?だというのに、
何でまた減点をくらっちゃうんでしょうかねぇぇぇえええぇっ!?」
俺が流石に納得がいかないと、激しい抗議を叫声する。
すると、
「私達が減点した理由はですね。それはパーティメンバーの私達を不愉快に
させたからに他ならないからですよ、ザック君!」
「――え!?ふ、不愉快……!?」
「そうですよ、後輩くん。パーティメンバーとは生死を共有しあう仲間。
そしてその生死を分けるのは、パーティーメンバーとの上手い連携と
意志疎通を通じ合えているか否か、そこに決まってきます。だというのに、
そんな仲間達の気持ちを不愉快にさせてちゃ駄目でしょうが!」
「れ、連携…意志疎通……」
「じゃあ、平凡三下。逆にあんたに聞くけど、疑心や不満、そして
今言った様な不快感を抱いたリーダーに対して命を預けられますか?
己の命を賭ける事が出来ますか?出来ませんよね?」
「う、うぐ……た、確かに……」
ロードは勿論のこと、
最早あいつら…幼馴染達とも、連携を上手く取れる自信が全く以てない。
「ま、参ったな......意外に正論な減点理由だったよ......」
俺はまだ少し納得がいっていないものの、先輩方の言っている事は確かに
筋は通っているなと思い、減点の理由を素直に認めた。




