053・減点1......っと♪
「因みに今の質問は、キミがこのパーティメンバーでどう行動を
するのかっていうテストで、もしキミが好き勝手な意見や、無茶な
行動をとる様な意見をほざいていたら、即減点だった!」
「へ?げ、減点!?」
「当たり前でしょ。良くお聞きなさい、平凡三下。ダンジョンと
いうものはね、常に死と隣合わせの存在なの。それを忘れて
油断したり、舐めた行動を取って行動していると、一発で
あの世行きになっちゃうんだから!」
「し、死と隣合わせ......!?」
「こらこら二人とも、そんなにプレッシャーをザック君に与えないの!
緊張で本当の力が発揮出来なくなるでしょうが!大丈夫だからね、
ザック君。私達がサポートをしっかりしてあげるから、そんなに
焦らなくてもいいからね!」
サーシュ先輩、ミカリ先輩、そしてアンネ先輩が、俺にそれぞれ俺に
発破を掛けてくる。
「あ、ありがとうございます、アンネ先輩!それにサーシュ先輩と
ミカリ先輩も!先輩の忠告と助言、しっかり胸に刻んで行動しますねっ!」
そんな先輩達に、俺は元気を込めた感謝の返事を返す。
そうだった、そうだった!
テストとはいえ、これは実戦だったよ。
先輩達の言う様に、ちょっとした油断が命取りになるよね。
......でもダンジョンを使ったテストか。
ランベール学園では実力不足という事もあって、ダンジョンに入れる事が
結局出来なかったんだよなぁ。
まぁ、サキナ達は俺と違って実力があったから、テストや授業で
ダンジョンに潜っていたみたいだけど。
仮にダンジョンに潜れていたとしても、サキナ達との差を見せつけられて
過ぎて、俺の自尊心が完璧に砂と化していただろうけどな。
......あはは。
俺がそんなもしもを考え、口から苦笑をこぼしていると、
「こら、平凡三下!何をボケッとしているのっ!」
「うひゃ!?」
目の吊り上ったサーシュ先輩から、威圧の込ったお叱りを受ける。
「す、すいません、サーシュ先輩!少し考えごとをしていました!」
「ハァ、考えごとですって!わたくし先程言いましたわよねぇっ?
ダンジョンは常に死と隣合わせだから油断をす―――」
注意散漫な俺に、サーシュ先輩が怒りの説教モードへ入ろうと
したその時、
「――ザック君のその表情......もしかしてその考えごとっていう
のは、異性の事なんじゃないのかな?」
サーシュ先輩の横にいたアンネ先輩が会話に割って入り、俺の顔を
ジト目で見ながら図星を突いてきた。
「――な!?い、いいえ!ち、違いますよ、アンネ先輩!い、異性の
事なんて、ちっとも考えていませんから、俺っ!」
アンネ先輩から図星を突かれてしまった俺は、その異性というのが
幼馴染だっていう事はあまり口にはしたくなかったので、全力で
アンネ先輩の言葉を否定する。
「ああ~その露骨に焦った表情、やっぱりそうみたいだね?」
だがそんなバレバレな言い訳などで誤魔化せる訳もなく、結局あっさり
見破られてしまう。
「それでザック君?その異性って、一体誰の事を考えていたのかな?
あ!ひょっとして私達の事かしら♪」
アンネ先輩が好奇心旺盛な顔をして、そんな質問をしてくるので、
「あ!そう!そうです!今、アンネ先輩達の事を考えていましたっ!」
俺は幼馴染達の事をごまかすチャンスとばかり、首を左右に大きく
縦に振って、アンネ先輩の質問に思いっきり乗っかった。
「ふ~ん、そっか♪私達の事をねぇ~♪そっか、そっか~♪」
俺の言葉にアンネ先輩がニコニコした表情を見せた後、腰に下げていた
ポーチから何やら一枚の紙らしき物をソッと取り出してそれを手に持った。
「そ、その紙!もしかしてその紙って、テストの点数チェックシートでは!?」
アンネ先輩がポーチから取り出された紙らしき物が、テスト点数の
チェックシートだと気付いた俺は「何故それを取り出したんだ!?」と
動揺していると、
「今のザック君の言動、何~か知らないけど、とっても癪に障ったから、
取り敢えず減点1......っと♪」
「――へ!?」
アンネ先輩が手に持った点数チェックシートにペン先を乗せ、減点1を示す
横線をピッと静かに一本引いた。




