052・ザック、ダンジョンにもぐる
「おお!いよいよ俺達のパーティメンバーの出番ですよ、先輩達っ!」
「う、うぐ、あ、暑苦しいですわね......ちょっとばかしテンションが
高過ぎではありませんこと、平凡三下?」
「何を言うんですか、サーシュ先輩!そんなの当たり前じゃないですかっ!
だってここ…エクトス学園に来てから初めての野外授業で、そして初めての
実践テストですよっ!冒険者を心指している者としては、テンションも
上がりまくるのはしょうがありませんってぇっ!」
呆れるサーシュに、ザックがテンションの高い理由を興奮口調で説明する。
「うふふ。良く分かるよ~ザック君のその気持ち♪私もさ、このテストを
受けた時は興奮で心臓がドッキドキだったもん♪」
「おお!アンネ先輩もそうだったんですねぇ~っ!」
「......まぁわたしも後輩くんのテンションが爆上がりなのは理解出来るよ。
けど、なるべく抑え欲しい。わたしあんまり悪目立ちしたくないんで……」
「オッスッ!そこは任せて下さいなミカリ先輩ぃぃいっ!全身全霊を以て、
善処を致しますんでぇぇええっ!!」
「いや...それ全然善処している態度じゃないぞ、後輩くん…......」
そんな談笑なる会話を先輩達とした後、俺達は教師の待っているダンジョン前に
移動して行く。
「お、来たな。ふむふむ、キミは..….一年のザック君で間違いないかな?」
「はい!間違いありません!」
テストを担当する教師が、手に持っている生徒の確認表を見て、俺の名を
呼び、本人かどうかをチェックしてくる。
「では次に、キミ達パーティの戦闘スタイルだが.........」
「俺達パーティの戦闘スタイルですか?まず俺の戦闘スタイルはですね......」
俺は、自分の戦い方、先輩達の戦い方など、それらを担当教師に告げていく。
「......なるほど、こんな感じのパーティ構成なんだね?しかし本当に
大丈夫なのかいそのパーティ構成で?キミのパーティメンバーを見るに、
キミだけしか前衛がいないようだけど?」
俺の選んだ先輩達の戦闘スタイルを聞いた担当教師が、少し不安気な
表情に変わる
そう…
俺が選んだ先輩達の戦闘スタイルは、
まず、サーシュ先輩は魔法使い。
次に、アンネ先輩が回復専門。
そして最後のミカリ先輩は、バフ&デバフ専門の魔法使い。
つまり、剣と格闘のスキルを持つ俺だけが、唯一の前衛なのだ。
「はは。大丈夫ですよ、先生。強敵と戦うとかでしたらいざ知らず、
今回は一階層だけでの戦いです。なので、このメンバーで十分いけると
思いますよっ!」
「うむ、キミの言うことも一理あるか。3人の援護を駆使して無理を
しなければ、恐らくは大丈夫かな?あ、でもキミがもしピンチに陥りそうに
なったら、迷いなくテレポートストーンを使うんだぞ!いいね、ザック君!」
「はい!分かりました、先生!」
俺はテストの担当教師にそう返事を返すと、先輩達と一緒にダンジョンの
一階層の出入り口に移動して行く。
そして高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、ダンジョン中へと足を動かした。
―――エクトス学園、第一ダンジョン1階層。
今回は違うパーティメンバーで......か。
エレア達と潜ってダンジョンには結構慣れたつもりでいたんだけど、
別のパーティメンバーでってなると、やっぱちょっと緊張しちゃうな。
初めて組むパーティメンバー、更にテストという事もあり、緊張で胸を
ドキドキさせていると、
「さて…後輩くん。まず最初に聞くけどさ、キミはこれからどういう風に
このダンジョンテストを攻略していくつもりなのかな?」
ミカリ先輩がこれから俺がどう動くのか、それを聞いてくる。
「......どういう風に攻略をですか?う~ん、そうですねぇ?取り敢えず、
最初は場に手慣れている先輩方の意見をお聞きし、それらの中で参考に
する点を纏めた後、行動を開始する......って感じでしょうかね?」
俺は首を傾げて少し思考した後、こう答えると、
「......うん、正解だ!」
ミカリ先輩が満足そうに頷くと、ニコニコした表情で俺に向かって
サムズアップしてくる。




