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032・スズの一目惚れ(スズside)


わたしの名はスズ。


エクトス学園の二年生だ。


そして自分で言うのもなんだが、


わたしは皆の尊敬と羨望を受けている事に覚えと自覚がある。



だから今日もまた、


「キャー!今日も素敵過ぎです、スズ様~~♪」


「おお、なんて神々しお姿なんだ!スズさんは!」


「またダンジョン攻略の上位だったそうですね!流石です、スズさん!」


「スズ先輩の爪の垢でも煎じて飲ませて欲しいです!」


「アホか!お前程度がスズ先輩の爪の垢なんて、百年早いわ!」


わたしは皆から尊敬と羨望の眼差しを次々と送られる。


然れば、わたしもそんな皆に失望を与えないよう、


「はは、皆よ。世辞の言葉をありがとう。本当に嬉しく思うぞ!」


凛とした態度と笑顔にて、皆に手を軽く振りつつ返事を返していく。


「キャァァアア――ッ!スズ様が、わ、わたしにお手をお振りになって!」


「違う、違う!あれはあたしにだよ、あたしにっ!」


「はぁ~なんて、素敵な笑顔なんだ、スズ先輩~~!」


「今日はもうこれで帰っても良いって感じだぜっ!」


「では皆のもの。わたしは次の授業があるゆえ、この辺で失礼させてもらう!」


そして皆の声に感謝を告げた後、わたしは皆に軽い会釈をし、長い黒髪を

フワッと靡かせて踵を返すと、次の授業を受けるべく廊下を静かに

歩いて行く。



キ~ンコ~ン、カ~ンコ~ン~♪



「よ~し、取り敢えず、今日の授業はこれまでにしておこうか。では

今日教えた事は今度のテストで実践予定だから、忘れない様にしっかり

覚えておくんだぞ!」


授業を終えた先生が黒板に書いた文字を黒板消しで消し終えると、使って

いた教本を手に持ち、廊下へと出て行った。


「ふう...中々に覚えがいのある授業だったな!」


さて、小腹も少々空いてきたし、リダさんの所に出向き、

食でも取るとしようか。


わたしは机に入れておいた教科書をカバンに放り込むと、腹を満たす為に

学生寮の食堂へと移動する。



―――学生寮の食堂。



「うむ!やはりリダさんの作る料理は至高で絶品だっ!」


学生寮の食堂にてわたしは、リダさんの作るBランチに満足といった

喜色満面な笑みをこぼしていた。


するとその時、



―――あいつが…ザックがわたしの前に現れた。



そしてザックを見た瞬間、


「な、なんだ!?あやつのあの目は......っ!?」


わたしは目を剥く様な衝撃と戦慄を受ける。


あやつめ、何という悲しき瞳をしているのだ!?


そして絶望と孤独感に堕ちた瞳......。


あやつは普通に......そして平然な態度を保って見せてはいるが、

わたしには分かる。


そう...わたしも御家事情のせいで、幼少の頃からいつも姉や兄と比べられ、

悲惨で残酷な絶望の中、ずっと孤独な人生を歩んで来たからな。


あやつは、そんなわたしと一緒の瞳をして......い、いや、違う!?



―――深い!?



あやつ......わたしが味わった絶望よりも、更に根が深い!?


そうだ!わたしはあの表情を前にも見た事がある!


あれは......そう、姉様の性格が変わってしまったあの時の表情に

似ているっ!?


心を許した相手から突如食らう、強烈なる裏切り。


それを受けた時に見せた姉様の表情に、あやつの表情は瓜二つなんだ。


だ、だとすれば、あやつはわたしがあの家で受けた絶望と孤独感。


そして姉様が裏切られた時に受けた、あの言葉では言い表せない、

思考と心が闇の沼底に沈んで堕ちていくようなショック。


その二つに満ち溢れているというのかっ!?


スズはザックの絶望と孤独感の深さに、ただただ驚愕してしまう。



だがそれと同時に、



「――――あやつの絶望と孤独。わたしが全て取り払ってやりたいっ!」



わたしは思考を走らせる間もなく、気付いた時には口がそう呟いていた。


ああ。あやつを取り巻く全ての絶望と孤独を、わたしの全身全霊を以て

なぎ払ってやりたい。


そしていつの日にか、あやつの屈託のない笑顔を...心から出る純な笑顔を

この目で是が非でも見てみたいっ!



―――っ!?



な、なんだ、これは!?


これは何なのだっ!?


胸の奥辺りから沸き出てくるこのポカポカしてくる感情はっ!?


そ、それに鼓動が早くなっていく!?


ドキドキが止まらない?


それと同時にわたしの思考を支配していく、この今まで一度足りとも

感じた事がない気持ちと感覚は一体何なのだ!?



――――あっ!



そ、そう言えば、同性達から聞いた事があるぞ。


確か、異性に好意をもった時、何とも分からない、心の底から沸き

上がってくるという不思議な...自分ではどうにも出来ないという感情が

あるという事を!?


そ、それじゃ、これがそう......なのか?


―――この感情が、


―――この高鳴る高揚が、


―――この熱く震える気持ちが、



これこそが...この身体中で感じているものこそが、


異性への好意に支配された時に表れるという、あの感情なのか?



――そうか。



つまりわたしは、あの男子に『一目惚れ』をしてしまったのという事なのだな。



「ならば、わたしの取る行動は............ひとつ!」



わたしはそう呟いた後、あやつの......ザックの下に馳せ参じる!



「おい!そこの男子後輩よ!今日のオススメはこのBランチだぞっ!」



わたしは高揚と恍惚で胸いっぱいな気持ちと感情を懸命に押さえつけながら、

ザックに声を掛けるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 思考が誘導されている?
[一言] まってたー 更新ありがとー
[一言] 更新ありがとうございます!(^^) 待っておりました
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