029・ザック、揶揄われる
そう…俺はスズ先輩とルル先輩から告白を受けた時、
ふと、俺は幼馴染の事を……告白をした後、即座に付き合いを始め、
恋人同士になったというサキナとロードの事を思い出してしまったのだ。
そのせいだろうか、スズ先輩とルル先輩、そのどちらかをその場で選んで
恋人にするという選択肢を俺は取れなかった。
「チャラ野郎じゃない?ああ、分かった!もしかしてそのチャラ野郎って、
あなたの幼馴染とお付き合いを始めたっていう、ロードとかいう奴の事かな?」
「......うぐ!」
エレアの口からロードと言う言葉が出た瞬間、俺の表情が露骨なまでにも
嫌悪感全開へと変っていく。
「なるほど、なるほどねぇ~。その表情を見るに正解か!だよねぇ~ザックから
可愛い~可愛い幼馴染達を取り上げやがった、そのロードとかいうチャラ野郎と
一緒にされたくないよねぇ~♪分かるよ~うん分かっちゃう♪」
「はうっ!?ち、違うし!ロード何て、ちっとも関係ないしぃぃっ!」
「え!何々?ロ、ロード君??それに幼馴染達をその子に取られたって!?
それってどういう意味なのかな?ねえ、ねぇ、教えてよザック~~っ!」
「う、うぐぅぅう!?そ、それは!?」
「ふう、やれやれ。フローラさんや、人にはねぇ聞いちゃいけない事が
あるんだよ?それを察しなさいな......ホント、やれやれだぞ!」
「えぇぇ~っ!?察しろって、言い出しっぺはエレアじゃないのさぁ~っ!」
自分を見てくるエレアの憐れむ目線に、フローラが納得いかないと猛烈なる
抗議の声を上げる。
「――それより話を戻すけどさ、本当にその先輩達とお付き合いするつもりは
ないの、ザック?」
「あ!話を強引に戻された!?」
フローラの抗議の声など全く気にもしないエレアは、さっきの会話...
スズ先輩やルル先輩からの告白事件の続きに戻す。
「う~んそうだね......。今の所は取り敢えず誰とも付き合うつもりは
ないかな?あいつらの事、サキナとニーナの事をある程度は忘れないと、
例え先輩のどちらかと付き合ったとしても、その事で迷惑を掛けちゃうと
思うんだ...だからさ」
「なるほど......迷惑......か」
これは思ったよりも、幼馴染達の呪縛の強さが相当の様だね。
クソ!ホント、あいつら悪害そのものだなっ!
マジでボコボコにしてやりたいぜぃっ!
でもまぁ、あいつらのおかげでその先輩達と付き合うという選択肢を
ザックが取らなかった訳だし、今回は特別に許してあげる。
......今回はねぇっ!
エレアは取り敢えず、ザックの幼馴染達に感謝の意をしておいた。
「でもホント安心したよ~ザックがその先輩達と付き合わなくてさぁ♪
どうなるものやと、不安でやきもきしちゃったんだからねぇっ!」
「え?そ、それって、どういう意味?」
ま、まさか、俺の事が好きだから、スズ先輩達とお付き合いしてなくて
良かったって事かな!?
「いやだってさぁ~。もしザックに恋人なんて出来ちゃったら、ザックと
遊ぶ時間がめっちゃ減っちゃうじゃん♪せっかく縁で友達になったんだから、
色々と遊び倒したいじゃん!でもザックに恋人なんか出来た日には、そっちを
優先されるのは目に見えるもん!」
もしかしてという高揚した表情でエレアを見るザックだったが、しかし
エレアの口からは違う理由が淡々と語られていく。
「そ、そっか、なるほど。そういう理由でか......あは、あはは......」
ザックは勘違いしてしまった事を恥ずかしいとばかりに、ニガ笑いをこぼす。
「あれれ~?何々、そのガッカリした表情?ああ、もしかしてザックさん。
わたしがザックさんに好意を持っているとか思ちゃったのかな?うふふ♪
いや~ザックさんってば、意外と自惚れ屋さんなんだねぇ♪」
「うぐ!揶揄うなって!し、しょうがないんだよ、平凡男子の思春期はね、
大体みんなこんなもんなんだよ!とっても自惚れ屋さんなの!ちょっと
した事でもその気になっちゃう悲しい生き物なのっ!」
エレアの揶揄いに対し、ザックは膨れっ面で不愉快そうにプンプン怒る。




