021・わたしはある決意をする(エレアside)
―――ザック君が生まれた頃からの幼馴染、サキナさんとニーナさん。
この二人がまた凄くてさ。
容姿端麗で才女、更に可愛く、美人で、才色兼備という様々なる称号を
欲しいがままに手にした人物達で、学校でも陽キャラのカースト上位に
常に君臨していた。
そんな二人が四六時中、ザック君とイチャイチャしているんだぞ。
その間に割って入り、ザック君に告白をする勇気なんて、恋愛下手な
わたしにはあるはずも無かった。
あまりにも勝てない勝負過ぎる。
然れど、この気持ちを抑えるのは到底無理な話でもあり。
だったらどうしたらといいんだと、思考し、思案し、そして深虜した結果。
導び出された答えはひとつ。
―――それは『エクトス学園』に入学する事。
この冒険者を育てる機関、エクトス学園にザック君が行きたかった事を
ザック君を調べている時にわたしは知った。
でもあの幼馴染の二人は、高位ランクの騎士や高ランクの魔法使い等を
育てる機関『ランベール学園』に行きたいと言っていたので、ザック君は
恐らく…いや確実にエクトス学園ではなく、このランベール学園に入学を
するだろう。
ザック君と幼馴染の二人が、ランベール学園に入学する。
これを知った時、わたしの脳裏にある仮説と予感が過った。
その仮説と予感とは...
このランベール学園は、能力値の高い…所謂エリートと呼ばれる連中が
好んで入学を希望する学園だ。
そんなエリートの中に、超完璧人間の幼馴染達が入学するんだ。
他のエリート共がそれを黙って静観して放っておく訳がない。
前にも述べたが、幼馴染の二人はエリートで超完璧人間。
いくら頑張っても、努力しても、アクビを掻きながらそれをあっさりと
追い抜かしていくエリートの中のエリート。
そんな嘘みたいな存在がザック君の幼馴染の二人…サキナさんとニーナさんだ。
そんな雲の上の存在である幼馴染二人に、ランベール学園の生徒…
特に男子生徒達が放って置く訳がない。
実際、今の学校でも似たような感じで、幼馴染達に群がっている。
まぁ全く相手にもされず、門前払いを食らっているが。
残念ながら超完璧人間である、幼馴染達の趣旨とそぐわないのだろう。
しかしランベール学園はちがう。
自分達と同格レベルの連中が沢山いる。
もしそんな連中に出逢ったら、どうなる?
慣れとは怖いもので、例え自分が最高な環境にいたとしても、新たな環境を
発見し、それが今まで体験した事のない目新しい環境だった場合、それに
奪われるように心が騒ぎ出し、ドキドキで胸が踊る。
―――好奇心。
―――探求心。
―――恍惚心。
人というものは欲深き生き物。
最高を捨ててまでも新しきを追い求めてしまう、本当に愚かで滑稽で
お馬鹿な生き物。
だからきっとあの幼馴染の二人は今の環境……ぬるま湯のザック君より、
目新しいものを発見した途端、それに惹かれ、感化され、そして今までの
環境なんぞは忘れたといわんばかりに、別の新しい環境…お湯に
気持ちを移すだろう。
―――そう...ザック君に足りないものを求めて。
もしそうなった時、
ザック君がそれを知ってしまった時、
きっとザック君の心は絶望の淵に陥ってしまうだろう。
そしてドン底まで陥り消沈した心を取り戻すべく、ザック君はある行動に
打って出る。
そう、それは……
―――エクトス学園への転校!
元々ザック君は、幼馴染の二人に半ば無理矢理に誘われ、ランベール学園に
入学した。
だが、幼馴染の二人と縁が切れたとなれば話は別だ。
いつまでもランベール学園に拘る必要は全くない。
新たな一歩を踏み出す為、きっとザック君はランベール学園を去り、
そして憧れと羨望の詰まったエクトス学園への転校を決めるだろう。
それならば、わたしの取るべき行動は真っ先にエクトス学園へ入学し、
ザック君の為に下地を作っておく事。
そしてその後、エクトス学園に転校してきた幼馴染達の事で意気消沈を
しているザック君を、わたしが……このわたしが導いて癒して上げるのだ。




