002・幼馴染達の告白 その2
「ロ、ロード君!?つ、付き合う!?!?」
突如サキナから告げられるその衝撃発言に、俺が唖然とした表情で
戸惑っていると、
「ほら、放課後のグラウンドでさ、各々が剣や魔法の自主練をやっている
じゃない?そこでね、ロード君に出逢っちゃったんだけどさぁ。その瞬間、
私の心にこう、何かがビビッと走るもんがきちゃってさ!これはもう何て
言うのか......そう言い表せないくらいに心がざわめいてドッキドキの
ワックワクだったんだよ♪だからその後も毎日、毎日、ロード君の訓練
風景を見ていたんだけど、その心のざわめき...ドッキドキのワックワクが
少しずつ、少しずつと大きくなってきてさ。そしてとうとう居ても立っても
いられず、遂に今日!その胸の内を...思いの丈の全てをロード君に告白し
ちゃったんだぁ~!えへへ~♪」
サキナはその時の出来事を恍惚なる微笑みで思い出し、ニヤニヤとにやけ
ながら、矢継ぎ早の勢いで自分の思いの内を口にしていく。
その見たことない幸せそうな表情で、ロードとやらの事を話す幼馴染を
見た瞬間、
俺の心は重力魔法を食らったんじゃといわんばかりにギュッと締め付けられ、
そして頭は何も考えたくないと思考を止めていく。
だがそんな俺の心中なんぞ、まるで知らないこの幼馴染は、更なる追い討ちを
かけてきた。
それは本当に...無慈悲な衝撃な発言だった。
「でね、でね。ロード君の相棒を務めている親友っていうのがさ、これまた
凄くてさ。しかも!その子、ニーナの事を大好きだったらしく、だから今度の
日曜日。ロード君と私、そしてそのロード君の親友とニーナとでダブルデートを
する事になったんだ♪」
それを聞いていた俺の隣にいたもうひとりの幼馴染、ニーナが頬を紅に染め、
小さく首を縦に振って頷く。
―――そんな二人を見た瞬間、
―――嬉しそうな表情でロードとその親友の事を語る度、恍惚な照れを
見せるサキナとニーナをその目に映したその瞬間、
遥か昔に諦め、心の奥底へと封じ込めていた幼馴染達への淡い恋心と
想いがバンッとその封印を突き破り、表にさらけ出てしまった。
......ああ、やっぱりそうなんだ。
今まで色んな言い訳と屁理屈を捏ねて逃げてきたけど、やっぱり俺、
こいつらの事を大好きだったんだな。
さらけ出て来てしまった俺の幼馴染達への恋心と想い。
それに気づいてしまった俺は、もう素直にサキナとニーナの話を
マトモに聞いていられる程、穏やかではいられなかった。
くぅうう......痛い。
む、胸が......心が締め付けらけて痛い。
―――けれど、
―――それでも俺はもう一度聞く。
「そ、そっか。そのロード君とやらと、付き合う事に...なったんだ?」
―――聞きたくなんてない。
―――然れど、
「そ、そして、ニーナも...そ、そのロード君とかいう友達の事を......」
―――聞きておかなきゃいけない。
―――だから俺は、この質問をサキナとニーナに問う。
―――その結果。
「うん♪」
「.........テレ」
二人は頬を軽く紅に染めあげ、俺にそう答えを返す。
ああ...何て屈託のない照れた笑顔を見せるんだよ。
幼馴染達との長い付き合いの中でも、こんな表情は只の一度も見た事がない。
俺の投げた問いに返事を返してくるサキナとニーナのその表情は、もはや完璧に
恋する乙女の表情だった。
そんな乙女の表情を食らった俺のライフは、完全にゼロとなってしまい、
俺の心に残っていた幼馴染達への淡い恋心と想いは、ガシャンと音を立てて
粉々に砕け散った。
「まぁ~そういう訳だから、ザック。今後の日曜日はザックと一緒に遊べなく
なっちゃったんだ、ホントゴメンね!でもでも、私達を応援すると思ってここは
グッと我慢してよ♪朝はこうしてちゃんと一緒に学校に登校してあげるからさぁ♪」
「......うん。朝はザックと登校したい」
悪びれもない顔をして、そう言ってくる二人に対し、俺は...
「あはは...あ、ありがとう......」
心にも思ってもいない感謝の言葉を呟くように吐いた。
言葉通り、吐いてしまいそうだった。
こうして十六年もの間に培った、俺と幼馴染達との信頼関係と好意は、
たかが数日程度の出会いの男達によって完膚なきにまで叩き潰されてしまい、
――――完全敗北してしまうのであった。