016・黒髪さん、再び!
「え、えっと……キミは?」
「あ、ゴメンゴメン、名前を名乗るのがまだだったね!僕はキミと同じクラスの
クウヤっていうんだ!これからよろしくね、転校生くん!おっと、ザックくんって
呼ばないと失礼だよねぇ~♪じゃ、改めてよろしくね、ザックくん♪」
「お、おう…こちらこそ、よろしくね……クウヤ君」
俺が陽キャラの登場に困惑していると、目の前の陽キャラはそれに気付かず、
キラキラした笑顔で自己紹介をしてくるので、俺もそれに対して取り敢えず
返事を返しておく。
「それでこっちの授業はどうだったかい、ザックくん?ランベール学園と比べて
簡単だったかい?それとも難しかったかな?」
「授業内容かぁ。う~ん、そうだな……ランベール学園はエリート学園と言われる
だけあって、中々難しい授業が多かったけど、こっちのエクトス学園の授業も
冒険者を育てる機関だからか、別の意味で難しかったかな?」
正直、話し掛けてきたこいつが、チャラチャラした陽キャラだったら、適当に
あしらって追い払おうと思っていたのだが、何か普通に良い奴っぽかったので、
こいつの質問を無視する事なく素直に答えた。
「ほうほう♪そっかそっか~♪別の意味で難しいかぁ~~♪」
う~ん、何が嬉しいのかさっぱり分からんが、爽やかに笑う奴だなぁ、こいつ。
…っていうか、
陽キャラの爽やかな笑顔を見ていると、ロードの野郎を思い出して
なんかめっちゃイライラしてくるな。
俺はサキナの彼氏である、ロードの爽やか笑顔が脳裏に浮かんできてしまい、
思わずその場で思いっきり吐きそうになってしまう。
ぐっ……
と、とにかく、こいつは関係ないじゃんと言われようとも、逆恨みと言われ
ようとも、大人気がないと罵られようとも、出来るだけ陽キャラ(こいつ)達とは
関わりたくない。
そういう訳で、
「おっと、ゴメンね、クウヤ君。そろそろ昼御飯を食べに食堂へ行きたいから、
この辺で失礼させてもらうよ!」
俺はそう思ったが吉日とばかりに、陽キャラの名前を聞かずに
軽く会釈すると、その場から逃げるべく席を立ち、一目散で教室から出て行く。
――――エクトス学園食堂。
「おお!ここがエクトス学園の食堂かぁ~♪」
教室を急ぎ出て、エクトス学園の食堂に辿り着いた俺は、食堂の豪華さに
瞳を輝かせ感動をしていた。
いや~学生寮の食堂も良い感じだったけどさ、エクトス学園の食堂も
これまた立派で良い感じの食堂だなぁ。
「お!ここは食券とは別に、パンを買うコーナーもあるんだ?」
俺は食堂の中をキョロキョロと見渡していると、パンを買う為に集まっている
生徒集団を見つける。
しかし凄いな。生徒同士が我先にとパンを奪い合っているぞ。
あれだけの生徒達が奪い合う様に買っているって事は、あのパン屋で
売っているパンって、めっちゃ旨いんだろうなぁ。
「でもあれに混ざってまで買いたいとは思わないかな?」
それに食うんだったら、俺はご飯をガッツリ食いたい!
「そういう事で、俺はこのご飯たっぷり親子丼を頂きま―――」
「しばし待つのだ、男子後輩よ!キミが選ぶのはそいつではないぞっ!」
「はう!?そ、その声は!?」
俺は喫驚した表情で、聞き覚えのある声のする背後に顔を振り返ると、
「や、やっぱりスズ先輩っ!?」
そこには艶ある長い黒髪を靡かせ、肩で息をしながらスズ先輩が立っており、
振り向いたと同時に俺の手をガシッと掴むと、押そうとしていた親子丼の
食券ボタンから離される。
そして、
「ふふ。昨日ぶりだな、男子後輩っ!」
顔を合わせた俺に、スズ先輩がにこやかな笑顔を見せながら挨拶をしてくる。




