011・寮母さん
「あはは、エレアって、ホント元気っ子だよねぇ♪」
でもしばらくの間、学園生活をボッチで過ごすんだろうなぁと思って
いたのに、まさか初日前から友達が出来るとはな。
「しっかし、あんな可愛い子が俺のいた町に住んでいたとは......」
馬車の移動中に聞いたんだが、エレアは俺や幼馴染達の通っていた
共通学校に通っていたらしい。
同じ学年だというのに、しかもあんな可愛い子だというのに、意外に
気づかないものなんだな。
あ!もしかして、その頃とは違って垢抜けたのかな?
「さて...日が暮れてしまう前に、俺も男子学生寮に行くとするか......」
俺は疲れた身体をグッと大きく伸ばすと、男子学生寮のあるという場所に
向かってスタスタと歩いて行く。
―――数分後。
「あ!あの看板。どうやらあれが男子学生寮みたいだな?」
俺は学生寮の並ぶエリア内をトコトコとしばらく歩いていると、少し前の
寮の出入り口横に『男子学生寮』と書かれた木の看板を見つけた。
「えっと。後は確か、学生寮の管理人......ここでは寮母だっけ?その人に
こいつを渡せばいいんだよな?でも寮母ってどこにいるんだろう?おっ!
丁度良い所に人がいた!」
俺は近くで草刈りをしている人を発見すると、
「すいませぇえ~~~んっ!ちょっと良いですかぁ~~っ?」
その人に声を掛け、寮母さんはどこにいるのか質問をすると、寮母さんは
男子学生寮の一階入り口近くにある管理室にいるという情報を得る。
俺は草刈りをしていた人にお礼を言うと、寮母さんがいるという管理人室へと
歩いて行く。
「お!あったあった♪これが管理室みたいだな?」
俺は『管理室』と書かれたプレートの設置されてあるドアの前に辿り着くと、
そのドアを数回コンコンと叩く。
そしてドアに向かって、
「あの~すいませ~ん、寮母さんはいらっしゃいますでしょうか~?俺は明日から
エクトス学園に通う事となりました、ザックというものなんですが~~!」
少し大きめの声で、中にいるでだろう寮母に話しかける。
すると、
「おお、やっと来ましたかぁ~ザック君♪はいはい~ただいま開けますから、
ちょっと待ってて下さいねぇ~~♪」
ドアの奥から女性らしき声が聞こえてくると、目の前のドアがガチャッと
開いていく。
「ほうほう。キミが明日エクトス学園に転入してくるザック君だねぇ!
良く来た、良く来た~ようこそだよ♪」
開いたドアの奥には二十代前半くらいと見られる綺麗な女性がニコニコと
した笑顔でそう言うと、俺の肩をポンポンとリズム良く叩いてきた。
「は、はい!ランベール学園からエクトス学園に転校してきたザックと
申します!不束者ではございますが、どうか宜しくお願いしますっ!」
「いやはや、いやはや。礼儀正しい挨拶をどもども♪私は男子学生寮の
管理と寮母をやらせてもらっているソーニャという者よ。もし何か分からない事が
あったら、遠慮なく何でも聞いてねぇ~!」
ソーニャさんはそう言うと、ニカッと笑顔でブイサインを突き出す。
「は、はい!あ、そうだ、これを貴女に渡すよう、前の学園の担任から
言われました!」
俺は転入と転校手続きの書かれている書類をカバンから取り出すと、
それをソーニャさんへ手渡した。
「お、手続きの書類だね。どれどれ......」
俺から受け取った書類を、ソーニャさんがパラパラと捲っていき
チェックをしていく。
そして、
「ふむふむ。確かにキミの転入と転校手続きが書かれている書類で間違いは
ないし、不備もないみたいだね♪ではでは、この書類は判を押した後、
エクトス学園に提出しておくからねぇ♪」
ソーニャさんは俺から受け取った書類を、管理人室の奥にある金庫らしき
物の中に閉まった。
それから俺は、ソーニャさんの案内でこれから生活する事となる部屋へと
案内されていく。
「到着~っと!ここが今日からザック君が学園を卒業までお世話になる
お部屋ですよ~♪」
こ、これは!?
「あ、あの......もしかして、ここってひとり部屋ですか?」
「うん。そうだよ~♪」
「マ、マジですか!?」
ソーニャさんから案内された部屋を見た俺は、どう見ても相部屋ではなく、
ひとり部屋なことにビックリしてしまう。
「因みにひとり部屋なのはね、学生達には快適な暮らしを過ごしてほしいと
数年前に就任した理事長が言い出しましてねぇ。それから全部の学生寮が
大幅な改造と拡張をされ、今に至るってわけだよ~♪」
「ぜ、全部の学生寮を...ですか?そ、それは粋な理事長さんですね!」
だからあんなに広かったんだ、学生寮エリアって。
俺はこの男子学生寮に辿り着くまで、結構時間が掛かったのを
ふと思い出す。
「明日からキミが使用する事になる生徒手帳と学園の制服。そして授業で
使う各教科書は、あそこの机の上に全て置いてあるから確認してねぇ♪
それとエクトス学園の校内を記した地図やスケジュールが簡素に書いてある
パンフも一緒にあそこに置いてあるから、それも後で確認してねぇ♪」
ソーニャは一息つくと、更に話を続ける。
「あ、それから。晩御飯が食べたいのなら、学生食堂がまだ開いているはずだから
食べに行くと良いよ♪場所はそのパンフに載ってあるから、それを頼りにして
行くといい♪あ、もしそれでも場所が分からなかったら、私は管理室にいるから、
場所を聞きに帰っていらっしゃいな♪ではサラバじゃ~っ!」
そしてソーニャはあら方の説明をし終えると、管理室へと帰っていった。




