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王都のチートな裏ギルド嬢  作者: 秋津冴
2.ダンジョンの爆破魔

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20.意外な結末

 

 レムとナターシャはこの場に残り、ここから先は監察局の人間達とエミリアだけになる。

 朱色の猫はあまり想像したくない現実が起こった時のため、六課に戻ると言ってナターシャを連れて姿を消した。

 想像したくない現実ってなんだろう?


 徹夜明けで血の巡りが良くない脳を使いながらエミリアは考えるも、それはよくわからない。

 想像がつくのは、シリルがキレて何もかもぶち壊し逃走するか。

 王族に恥をかかせたという行為を認めさせられて死刑を求刑されるか、それともその場で斬首なんてこともありえるわけで。


 死刑判決を受ける前の犯罪者になった気分を味わいながら、エミリアは自分の足で開かれたそのドアの向こうに姿を消したのだった。


 正直、そのから先のことをエミリアは、あまり詳しく覚えていない。


 入った室内ではすでにシリルが切れていて、暴走する彼女を抑えることなんてエミリアには敵うべくもなく、荒れ狂う魔法の嵐と壊れる壁に砕ける窓ガラスが周囲に散乱し、建材は金髪の魔女によって飴細工のように傾ぎ、監察局の建物、そのものが崩壊するかと思われた頃。


 のっそりとやってきた庶務六課課長の百腕巨人が泣きじゃくる幼子をあやすかのように、手刀一発でシリルを気絶させ、例の変身魔法で身をネズミに変えてどうにか死を招く魔法の乱打から身を守っていたエミリアをがれきの山から救い出したのだった。



 エミリアは爆破魔法を器用に操って、自分に向かってくる脅威だけを取り除いていた。


 建材に穴を開け、デスクを来た方向に跳ね返し、上から降ってきた上層階の捜査官たちを無意識のうちに地上へと転移させ……。


 舞台となった階は三階で上にはまだ六階層ほどあり、ほぼ真ん中から建物が倒壊したのに死傷者がほとんどでなかったことはエミリアの成果といえよう。


 あの特訓は無駄ではなかったのだ。


 そして、庶務六課の面々が退出したその後に残されたのは、崩壊した監査局とその被害を受けた職員たち。

 己の魔法の腕に溺れ、シリルを亡き者にせんと企んだ第二王子が得意の火炎系魔法を駆使し攻撃したらあまり成果は見えず。


 逆に魔法にはある程度の意志があるものだがら、彼女の金髪のはしっことちょっと焦がした炎の精霊たちが恐怖を感じて悲惨し、金色の暴力が第二王子と第六王子を完膚なきまでに叩きのめした後、とどめを刺そうとしたところで課長に救われる……こんなところまでがこの日のワンセットだった。


 ついでに監察局ビルが崩壊した、と報告書に記載した庶務六課課長は事態の一から十までを把握していた可能性がある。

 シリルが暴れ始めた頃にはさっさと監察局ビルから逃げ出していたアレンも同様に、彼らはなにかを画策している節があった。


 しかしまあ、一人の魔女の暴走というよりは微かな怒りにより、一つの国の機関がその存在ごと抹消されかかったという事実はあまりにも看過しがたいものがあったようだ。


 今回の件、王子二人が目論んできた以前からの画策が次々と明るみに出てきたことにより、シリルたちの。いや、シリルの蛮行を調査してあらたな怒りを買うより、王子二人を断罪したほうが賢いと国の上層部も判断したらしい。


 監察局ビルの倒壊は第二王子の魔法が暴走したせいという理由で、調査の方は早々に打ち切られてしまった。

 エミリアの実家は父親が軍務大臣ということもあって、娘が王族に反抗したくらいでは対して処罰を受けなかったらしい。


 むしろ、センディア公爵は娘に恥をかかせたとして、従兄弟にあたる国王に直談判を申し入れていたのだとか。

 罪に問われるどころか、下手をすれば国を二分しての争いに発生するかもしれなかったと後から聞かされて、エミリアは顔面蒼白になってしまう。


 とりあえず家族は無事だっただし、悪人どもは先輩が後始末をつけてくれたし。


 魔法学院の卒業証書の授与されて家族と再会することができたエミリアにとって、シリルはとんでもなく恐ろしい先輩でとんでもなく迷惑な先輩で、とてつもなく大事な先輩で。

 そしてどこか放っておけない、大切な先輩へとその立場を変えていたのだった。


 ナターシャと朱色の猫はなにか約束を交わしたらしく、庶務六課に戻り普段通りの業務をこなしていた先輩後輩コンビは、またしてもハサイヒメの脅威にさらされることになる。


 それは平穏無事な日常を取り戻したエミリアが、職場に復帰してからちょうど一週間目に起こったのだった。

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